Matthew Keegan
2024年9月04日

リリースから1年、Threadsの立ち位置

驚異的なスピードでユーザーを獲得したスレッズ(Threads)は、ユーザーにどのような利点をもたらし、広告主にとっての課題は何なのか。リリース以来の推移を追う。

リリースから1年、Threadsの立ち位置

* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

特にソーシャルメディアの世界では、時が経つのは早いものだ。X(旧Twitter)に代わるテキストベースのプラットフォームとして、メタ(Meta)がスレッズ(Threads)をリリースして1年以上が経つ。当初は関心が急上昇し、リリースからわずか7時間で1000万人ものユーザーを獲得するという記録を打ち立てた。

スレッズは、思考を刺激する会話のための場がオンライン上に復活したと称賛され、月間アクティブユーザーは最初の12カ月で1億7500万人を超えた。だが関心は徐々に減速し、現在はアクティブユーザーが毎月500万人ほど増えてはいるものの、1日あたりのアクティブユーザー数ではライバルのXに後れをとっている。

スレッズが登場した当初は、インスタグラムのユーザーアカウントとの連携によって「割安なアテンション(注目)」と呼ばれるユニークな機会がもたらされた、とヴェイナーメディア(VaynerMedia)でアジア太平洋地域(APAC)担当プラットフォーム&カルチャー・ディレクターを務めるミキ・シム氏は説く。

「消費者が新しいアプリを詳しく探ろうと集まったこの瞬間は、マーケターにとって注目を集める絶好のタイミングでした」とシム氏。「豪州のクライアント数社はこの期間に割安なアテンションの機会をとらえ、スレッズでの存在感を確立した世界初のブランドとなり、良好な成長とエンゲージメントを遂げました」。

記録破りだったリリース時の勢いからすると、スレッズの成長は鈍化している。だがイーロン・マスク氏の率いるXが論争を繰り広げ、ユーザーと広告主が驚くほどの勢いで流出しているため、これをスレッズが引き継いでXの真のライバルへと飛躍する絶好の機会になり得ると専門家は述べる。

「Xがブランドやクリエイターの繁栄にあまり適さない場になりつつある今こそ、スレッズにとって逃してはならない好機」とキャンバス8(Canvas8)の行動アナリスト、エリー・ラウ氏は語る。

「例えば、Xが長らく圧倒的なシェアを占めてきた日本市場では、イーロン・マスク氏の方針に不満を持つユーザーが代替手段としてスレッズに移行しています。2024年のユーザー数の伸びは鈍化していますが、ブランドはこの移行を活用しており、ユニクロ(Uniqlo)やスターバックス(Starbucks)などの企業がアプリ上でローカル市場での存在感を高めています」。

エンゲージメントの向上

ウィーアーソーシャル(We Are Social)とメルトウォーター(Meltwater)のデータによると、アクティブユーザーの1カ月の平均利用時間はスレッズが20分で、TikTokは31時間、ユーチューブは28時間だった。スレッズが軌道に乗ってユーザーベースを拡大し続けている間、エンゲージメントは低いかもしれない。だが、商業的な影響が比較的少ない「安全なデジタル空間」であるため、コミュニティー管理の観点からは理想的なプラットフォームといえる。

 

オーディエンスとのパーソナルな会話は、スレッズで実現できると思います」と語るのは、OMG APACでコンテンツ担当CEOを務めるジーナ・マッキノン氏だ。「スレッズには、巧妙かつ独創的なオーガニックコンテンツを発信する機会があります。コミュニティー管理の観点から優れた成功事例を目にしてきました」。

これを念頭に置くと、スレッズのアンケート機能やGIFアニメ投稿機能、音声投稿機能などを利用し、オーディエンスとリアルタイムでの会話を促進する余地は十分にある。特にインスタグラムやTikTokよりもオーガニックに感じられる方法で、共創できる可能性は大いにある。

「スレッズに注力しているブランドの一つがディズニーDisneyです。同社はQ&A形式の投稿を通じてファンと直接会話するツールとして使っています」とラウ氏。「これは、ブランドからの直接的なコンテンツの更新に重点を置いたXのページとは異なります」。

 

特にAPACでは日本が、スレッズにとって傑出した市場だ。全体的な普及率はまだ5%に過ぎず、Xの44%をはるかに下回っているものの、この1年で着実に増加しており、国内のユーザー数は1100万人近くに達している。ニールセン(Nielsen)のデータによると、日本のスレッズユーザーのうち41%がY世代とZ世代で占められており、若い女性(26%)が特に多いという。

スレッズの利用に関してはインドもまた新興市場だ。現地のユーザーは、ファンが表現をする手段としてスレッズに注目している。インドのユーザーは、クリケットからセレブリティー、OTTコンテンツ(インターネットで配信されたコンテンツ)に至るまで、ポップカルチャーのトピックを中心に5,000万超のタグを作成しており、このプラットフォームがファンのコミュニティーを結びつけるポテンシャルを示している。マルチメディアを駆使した投稿にも意欲的で、メタの報告によるとインドのユーザーは世界平均と比べて、他のユーザーを指定して投稿するメンションや、動画を添付した投稿を行う傾向がある。

APACの他の地域では、イーロン・マスク氏がXのために構想したものの実現できなかった「タウンスクエア(町の広場)」モデルに似た形でスレッズが利用されている。例えば、Z世代の蔡俊彥選手(フェンシング)の潔いまでに率直な投稿内容が話題になり、香港の若者たちがパリオリンピックに関するフィルタリングされていないコメントを求めてスレッズに集まった。

一方でベトナムのZ世代にとってスレッズは、求人情報をソーシャルメディアで集め、ストレスのない状況で雇用主候補とつながることができる、新たなリンクトイン(LinkedIn)のようになっている。また、マイクロブログ(短文投稿)形式であるスレッズは、経済格差の拡大と厳しい雇用市場の中で不安を抱えるベトナムの若者たちが悩みを打ち明ける場にもなっている。Z世代はスレッズで日々の生活での苦労話やアドバイスを投稿しており、インスタグラムで完璧な編集や加工が行われるようになる以前の、昔ながらのソーシャルメディア体験を思い起こさせる。

Xの有力なライバル

スレッズは、インスタグラムやフェイスブックといったメタの強力なソーシャルプラットフォームとの統合によってクロスプラットフォームの優位性が発揮され、長期的にはXの真のライバルになる可能性がある。また、クロスプラットフォームの機能も強化されており、インスタグラムのリール(短尺動画)や投稿をスレッズにシームレスに直接共有できる。スレッズの投稿がインスタグラムのフィードに表示されるといった相互接続したエコシステムは、次の世界的な成長に向けた準備が整うまで維持されるだろう。

「スレッズは、特にクロスプラットフォームが強みで、長期的にはXの真のライバルになり得ます」とBBDOバンコクのブランド&デジタルプランニング責任者であるプラシット・クナヌファンチャイ氏は語る。「しかし現時点では、ユーザーにXからの乗り換えを促す独自の機能や、説得力のある理由を見つける必要があります。強力なコミュニティーを構築するには時間がかかりますが、この取り組みには不可欠です」。

メディアモンクス(Media.Monks)のAPACソーシャル責任者でシニアバイスプレジデントのワーナー・イウクシュ氏は、X対スレッズという構造の話はやや誤解を招くものだと言う。どちらにとっても重要なのはプラットフォームが消費者にもたらす価値であり、ソーシャルメディアがブランドにとって果たす役割や、どのプラットフォームが戦略に最も適しているかに焦点を当てた議論をすべきだと同氏は考えている。

「スレッズは現在Xよりも規模が小さいものの、それは必ずしも問題ではありません。ゲームや仮想通貨の分野に熱心なユーザーベースとコミュニティーによって成長中のディスコード(Discord)で成功するクライアントもいます。またレディット(Reddit)もコミュニティーとして大きな価値があります」とイウクシュ氏。「LINEも規模は大きくありませんが、日本や台湾などの市場で確固たる地位を築いています。スレッズに関してマーケターが直面する課題は、インスタグラムとのクロスプラットフォームがもたらす相乗効果など、他のプラットフォームには無いユニークな機会が何なのかということです」。

6月にスレッズはようやくAPIを公開し、開発者が独自のアプリを作成できるようになった。またここ数週間で収益化を強化し、予約投稿やパフォーマンス分析といったクリエイターを支援するツールを発表している。

「問題は、スレッズに継続的に投稿しているブランドやクリエイターが現時点ではごく少数であるため、TikTokやインスタグラムと比べて、ユーザーをこのプラットフォームに引き留める魅力的なコンテンツが量的に少ないことです」とラウ氏。「クリエイターの間で、持続的な収益化がこれまで以上に難しくなっているという疲労感や幻滅感が蔓延しています。スレッズは新たな魅力を活用し、クリエイターをどのようにサポートできるか、特にインフルエンサーが非常に飽和した中で注目を集めるのに苦労している小規模クリエイターをどう支えるか、姿勢を示す必要があります」。

スレッズには、他とは一線を画す明確なUSP(独自の強み)や差別化のポイントが欠けているようだ。

「スレッズがより多くの消費者やブランドにとって、価値ある存在になることを楽しみにしています。しかしそのためには、他のプラットフォームと何が違うのか、もっと明確なスポットライトを当てる必要があります」とイウクシュ氏。「それは、ソーシャルメディアミックスにおいてスレッズが果たす役割を、マーケターがイメージする上で大いに役立つでしょう」。

スレッズはまだ広告機能を公開しておらず、限定的な試験運用の一環としてキャンペーンを実施しているに過ぎない。だがスレッズのユーザー数が10億人に達する明確な見通しが立てば有料広告と収益化を検討するとマーク・ザッカーバーグ氏が述べていることから、広告は今年中に導入されるという予想だ。

 
 

スレッズは開始から日が浅く、競争の激しいソーシャルプラットフォームの分野で長期的にどのような成長軌道を辿るか予測するのは難しい。しかしその最大の強みは、インスタグラムのエコシステムとの密接な連携にある。

「将来を見据えると、スレッズの長期的な方向性は、今日の典型的な閉じられたエコシステムとは対照的な概念『フェディバース(fediverse、ソーシャル連合体)』に沿ったものになります」とシム氏。「フェディバースは相互接続性を重視し、さまざまなソーシャルプラットフォーム間でのクロスポストやコンテンツ共有を可能にします。スレッズは3月に米国と日本で、Xと競合するマストドン(Mastodon)などとフェディバースの連携を開始し、この広い構想の第一歩を踏み出しました。フェディバースが大きな勢いを持つようになるかはまだ分かりませんが、ソーシャルメディアの状況における興味深い変化です」。

現在のところスレッズの最大の課題は、ユーザーにこのプラットフォームに留まってもらうための、説得力のある理由を見つけることのようだ。

「スレッズには、Xで見られるようなブランドセーフティーの問題は無く、これは素晴らしいこと。ですが、安全性はスレッズが直面している課題の核心ではありません」とイウクシュ氏。「より多くの消費者を引き付け、1分20秒という平均セッション時間よりも長く滞在してもらう動機付けになるような価値提案を期待しています。継続的なイノベーションと、ユニークなユーザー体験に焦点を当てることでスレッズは成長し、広告主が拡大するオーディエンスとつながるための斬新で刺激的な方法を切り開く準備が整うでしょう」。

 

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