Ryoko Tasaki
2024年11月29日

世界マーケティング短信:ジャガーのブランド刷新、波紋を呼ぶ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

大胆なリブランディングが物議を醸したジャガーの新キャンペーン
大胆なリブランディングが物議を醸したジャガーの新キャンペーン

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

ブランド大幅刷新のジャガー、SNSには多くの否定的な意見

英自動車ブランドのジャガー(Jaguar)がブランドアイデンティティーを大胆に変更し、物議を醸している。「Copy nothing(何も模倣しない)」と題された短編動画には「live vivid(いきいきと暮らそう)」、「break mould(型を破ろう)」、「ありきたりをやめよう(delete ordinary)」といったスローガンと、カラフルな衣装をまとった複数人のモデルが登場するが、自動車は出てこない。

ジャガーのマネージングディレクター、ロードン・グローワー氏によると、このリブランディングはジャガーが「独創性を取り戻す」のと同時に、「新しい世代にインスピレーションを与える」ことも目指している。また最高クリエイティブ責任者のジェリー・マクガバン氏は「これはジャガーの本質をとらえ直し、かつて愛された価値観に立ち返りながら現代のオーディエンスとの関連性を持たせようという再構築です」と述べた。同社は電気自動車ブランドへの転換を目指しており、12月2日のマイアミ・アートウィークでは新しいコンセプトカーを発表予定だ。

だが動画公開後のソーシャルメディアでは、否定的な見方が多かった。イーロン・マスク氏はX上で「車を売っているのか?」と揶揄し、公式アカウントが「はい。ぜひお見せしたいです。マイアミで12月2日にお茶でもいかがでしょうか?」と返答。他には「衣服のブランドのようだ」、「かつてのロゴは素晴らしかったのに」といったコメントも。ダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包摂性)を強く意識したビジュアルに対する反感や、不買運動につながったバドライト(Bud Light)の件から「何も学ばなかったのか?」という批判も多数投稿された。

モンクスが人員削減を発表

S4キャピタル(S4 Capital)傘下のモンクス(Monks)が、人員削減を実施すると発表した。同社は今年7月、メディアモンクス(MediaMonks)からブランド名を変更し、マーケティングサービスとテクノロジーサービスを提供している。具体的な削減人数については明かされていない。同社には現在、全世界で約7,500人の従業員がいる。

モンクスの広報担当者はCampaignに対し、「当社の売上高人件費率は75%で、業界平均の60~65%と比べて非常に高いため、調整を行わなくてはならなくなりました」とコメント。「当社は2018~2022年にかけてコロナ禍で大きく成長しました。またテクノロジー企業として2023~2024年の運営費を削減し、AIへの設備投資に切り替えたため、収益成長率は影響を受けました。その結果として困難に直面し、次なる変革に向けてチームの規模を適正にする難しい判断を下さなくてはなりませんでした」。

S4キャピタルの上半期の業績は、純収益が前年同期比で13.5%減少した。世界経済の不確実性、高い金利、テクノロジー分野のクライアントが支出に慎重なことを、原因として挙げている。テクノロジー関連の支出は安定化の兆しがあり、2024年後半に獲得した新規ビジネスが2025年に効果を発揮し始めると同社はみている。

アップル、ニュースアプリの広告を直接販売

アップル(Apple)が自社アプリ「News」の広告在庫を内製化するとアクシオス(Axios)が報じた。これまでNewsの広告販売は外部に委託してきたが、その契約は年内で終了する。今後はインフィード広告、バナー、カルーセル広告、スポンサードコンテンツ、記事内広告などを、マーケターに直接販売する。メットガラや全米オープンなどのイベントに関連したコンテンツの、プレミアムスポンサーシップも提供予定だ。

Newsは世界で広く使われており、広告主はエンゲージメントの高いオーディエンスにアクセスできる。最もユーザーが多いのは無料版だが、テクスチャー(Texture)を買収し2019年からはサブスクリプションサービス「News+」を提供している。

直接販売への移行を見据え、アップルは昨年からストリーミング広告のベテランであるローレン・フライ氏、元NBCユニバーサルのジョセフ・ケイディー氏、出版界での経験が豊富なレネー・アペル氏を登用。採用ページでも広告職を募集している。

過酷な現状を訴える、野生のトラの独白

野生のトラの絶滅保護に取り組む英国の動物保護団体「セーブ・ワイルド・タイガース(Save Wild Tigers)」が、残酷な現実をトラ(の敷物)が独白する6分超の動画を公開した。トラの声を演じたのは、俳優のレイ・ウィンストン。

トラはジョークをはさみながら、人間によって母親を目の前で殺されたこと、自身も悲惨な最期を遂げており、肉は売られ歯はアクセサリーに加工され、皮は敷物になったことなどを語る。そして野生のトラの数は97%も減少し、現在は約4,000頭しか生き残っておらず、「生きているよりも死んだ方が価値がある」と吐露。「野生のトラのいない、敷物でしか残されていない世界で子どもたちが育つことがないように」、今からでもアクションを起こすよう呼び掛ける。

【お知らせ】

Campaign Asia-Pacific主催「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー2024 日本/韓国」の受賞者/受賞企業が発表されました。詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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