
日本の消費者は今のデジタル広告をどう捉えているのか −− この調査は18歳以上の消費者1,000人を対象に、昨年10月末に行われた。その結果わかったのは、消費者個々のデータを尊重する広告が信頼度を増していることだ。
日本の消費者が今最も懸念するのは、「個人データの保護」。回答者の8割以上(81%)が、広告配信の際に個人データを保護することが「非常に重要」(56.8%)、あるいは「ある程度重要」(24.4%)と答えた。
プライバシーに立ち入り過ぎている、あるいは押し付けがましい印象を与える広告に対する不安が大きいこともわかった。自己の私生活に「詳しすぎる」と思わせる広告が配信された場合、「自分のデータをより厳重に保護する」と答えた人は3割以上(31.9%)。また、「なぜ自分の情報をこれだけ持っているのか、ブランドに疑念を抱く」と答えた人は17.9%だった。
特に日常の人間関係や健康といったデリケートなテーマを扱った広告は問題視されており、38.9%は「押し付けがましい」、あるいは「迷惑」と回答。またこうした広告を受け取った場合、「そのブランドのサービスの利用をやめる可能性が高くなる」と答えた人は35.4%、「非常に高くなる」は23%で、合わせて6割近くに上った。
さらに、従来のクッキーベースの広告に対する不満が高まっていることもわかった。クッキーに対して「不快感を覚える」と答えた人は24.1%、「消費者を尊重していない」と考える人は12.5%で、4割近くがクッキーに否定的な態度を示した。
加えて、消費者がオンライントラッキングに詳しくなり、様々な手法で広告やトラッキングを避けている実態も明らかに。「クッキーを拒否、あるいはブロックしている」人は30.7%、「広告ブロッカーを利用している」人は22.7%、「シークレットモードで閲覧している」人は10.2%で、合わせて63.6%に上った。
こうした傾向の中、関心を高めているのは文脈性の高い広告(コンテキスト広告)だ。回答者の4割近く(37%)は「文脈性の高い広告により注意を払う」と答え、「個人データベースの広告よりも信頼できる」と答えた人は3倍以上に上った。
GumGumジャパンのマネージングディレクター、セルビー健三氏は、「調査結果が示すのは日本の消費者がプライバシーを尊重し、文脈性の高いコンテンツを提供するブランドを好むようになってきたこと」と話す。「逆にクッキーなどによるトラッキングは、消費者が現在進行形で楽しんでいるコンテンツと一致せず、消費者にフラストレーションを与えてしまう。オーディエンスとのエンゲージメントを高めるには、コンテキスト広告の活用が賢明と言えます」
また、同社JPACのゼネラルマネージャー、ナイル・ホーガン氏は、「調査結果は広告主に対する警鐘」と話す。「消費者はプライバシーを侵害しない広告を望んでいる。こうした消費者の思いに寄り添えないブランドは、オーディエンスを遠ざけてしまう危険性があります」
(文:水野龍哉)