ワンダーマントンプソンは、消費者が広告にどのような感情的反応を見せ、動画のどの要素が彼らの注意を引いたのかを分析するテクノロジーを開発した。これによって、クライアントは消費者から望ましい反応が引き出せるようキャンペーンを微調整することができる。
この「リヴィール(Reveal)」と呼ばれるソリューションは、伝統的なクリエイティブテストの技術と、彼らの独自技術及び特許技術を組み合わせたものだ。
クライアントは、プロバイダーから提示されたパネルの中から、ターゲットオーディエンスに合致する消費者グループを選択する。このパネルは、クライアントの動画広告を視聴する際に、自分の顔が「数分間」録画されることに同意している。これは、測定プロバイダーがオーディエンスのアテンションレベルを計測する方法と類似している。
次にワンダーマントンプソンの機械学習モデルが、録画映像を、怒り、嫌悪、恐れ、幸福/嬉しさ、中立、悲しみ、驚きの7つの微細な表情に分けて分析する。また同社は、動画内の特定のオブジェクトを見たときの、消費者の目の動きを追跡する(アイトラッキング)テクノロジーについてもライセンスを取得している。
このトラッキングデータを、消費者アンケートからのフィードバックと組み合わせることもできる。ワンダーマントンプソンによれば、そのプロセスには1週間ほどかかるという。分析が完了すると、その録画はすべて削除される。
ワンダーマントンプソンデータ社のアナリティクスとデータサイエンス責任者を務めるルシール・リパ氏は、「我々の約束は、自動化機能の存在によって、他のクリエイティブテストよりも早く結果が出せるということだ。」と語った。「そのため、何ヶ月もかけてKPIだらけの大げさなレポートを作成することはない。我々はより機敏でダイナミックだ。クライアントのクリエイティブを最終段階だけでなく、制作過程の複数の時点でテストできるようにしたい」
同社は、これによって、より効果的な広告を制作し、より良い消費者体験が実現できると信じている。
「基本的には、広告を見た消費者からポジティブな感情をより多く引き出せるよう、まずはポジティブな感情を測定しようとしている」と、ワンダーマントンプソンのEMEA担当のデータ管理ディレクターであるデビッド・ロイド氏は述べた。
このツールの開発には約8ヶ月間かかった。ワンダーマントンプソンは、グーグルのCloud Vision APIなど既存モデルが大まかな表情分析に限られていたため、独自の感情検出モデルを開発することを決めたと述べている。
リパ氏は次のように語る。「この(グーグルの)モデルでは、19%が中立的な表情と判定されてしまった。このモデルが人々の際だった笑顔や著しく悲しい顔に基づいて分析しているためだ。広告を観て笑うこともあるが、普通は非常に小さな表情の動きしかしないため、このモデルが我々の目的には適していないことが分かった」
同社はまた、男性と女性では感情を表す方法が異なるということを認識するように、モデルを訓練する必要があったとも述べている。
ワンダーマントンプソンは、旅行とレジャー業界を含む数社の「主要」クライアントと、数週間から数ヶ月間の予定で、ソリューションのトライアルを実施中だと説明している。
ロイド氏は、エージェンシーがプロダクトの自社開発を選択するのはとても悩ましいと語る。「テクノロジー専業の巨大企業が存在していることを知っているからだ」と説明した。
彼は、「私たちは、データサイエンスやテクノロジーへの大規模投資で、グーグルやマイクロソフトと勝負できないことは分かっている。だから、我々は何をして、何をしないかということに集中している」と付け加えた。
他のテックベンダーと比べた際の、ワンダーマントンプソンの優位性は、テクノロジーの開発者であると同時に、ユーザーでもあるということだと、彼は考えている。
「我々はクライアントと仕事をしながら、そこでさまざまなギャップを体験している。だから、ニーズや機会が生まれたときにそれを察知することができるのだ」とロイド氏は語った。