開催が延期された2020年東京五輪・パラリンピック大会から3年、日本スポーツ界の未来はかつてないほど明るく映る。日本が過去の困難を克服したことを証明しただけでなく、チャンスに満ちたエキサイティングな世界的スポーツ大国としての地位を確立しつつあるからだ。
東京2020 大会は、154億ドルに上る予算超過やコロナ禍による世論の大きな反発など、前例のない課題に直面した。だが、日本のスポーツ界はこれらのハードルを乗り越えて進化を遂げた。今日、日本のスポーツ・エコシステムは回復力と将来への大きな可能性を示しつつ、繁栄を謳歌する。
今夏、日本には多くの欧州の有名サッカークラブがプレシーズンマッチにやって来る。これも日本が世界のスポーツ市場でビッグプレーヤーになったことの証だ。成長を続ける放映権市場、安定した経済、そして世界で活躍する日本のアスリートの数々……今夏以降も、世界からの熱視線が日本に注がれることだろう。
日本のスポーツの進化
東京2020大会の困難を克服した日本は、様々なスポーツ分野で大きな成果を上げ、成長を遂げている。日本が大きな進歩を遂げている主な分野を見てみよう。
1.代表チームの台頭
- 「なでしこジャパン」として知られるサッカー女子日本代表は、FIFA女子ワールドカップやその他の主要大会で常に好成績を収め、国際舞台では侮れない存在として認知される。
- 男子サッカー代表チームの「サムライブルー」もまた、様々な面で影響力を発揮。国際試合における彼らの秀でたパフォーマンスは、才能と戦略性の深化を象徴する。
2. 国際的に活躍する日本人選手たち
- 野球: ロサンゼルス・ドジャースで投打の二刀流で活躍する大谷翔平選手は世界的スターに昇りつめ、メジャーリーグにおける日本の評価をさらに高めている。
- サッカー: 欧州のトップリーグで活躍する日本人選手の存在は、彼らの技術と献身性の証だ。イングランド・プレミアリーグの2023-2024シーズンでは、4人の日本人選手が大活躍した。
- バスケットボール: NBAでは渡邊雄太や八村塁といった選手が日本の秀逸さを示し、プロバスケットボール界における日本の影響力を強めている。
国際的スポーツ投資の「磁石」
スポーツ界で存在感を増す日本。日本は国際的なスポーツ投資の「磁石」となって、主要なチームやイベントを呼び寄せる。なぜ日本は世界のスポーツ事業体にとって魅力があり、エキサイティングな市場として注目されるのか。
1.強固で安定した基盤
日本のスポーツへのアプローチは、安定性と持続可能性が特徴だ。他のアジア市場でしばしば見られる不安定な投資環境とは異なり、日本のスポーツ産業はバランスの取れた長期的展望の下に発展している。この安定性は、2019年のラグビー・ワールドカップから五輪に至るまで、直面する課題を克服し、大規模なスポーツイベントを成功させてきた日本の歴史が物語る。
2. 堅調なスポーツビジネス
日本のスポーツ市場はビジネス面で活気に満ち、高額なテレビ契約と高い視聴者エンゲージメントに支えられている。2023年だけでも日本のスポーツ放送の収益は50億ドルを超える。楽天や横浜ゴムといった著名なスポンサーは多額の投資だけでなく、スポーツ分野におけるビジネスの可能性も拡大させている。こうした健全な財政事情は、スポーツ界の長期的成長と成功を育む上で極めて重要だ。
3. 情熱的で熱心な国民
スポーツは日本の文化に深く浸透している。一般市民のスポーツへの参加率は高く、国民の可処分所得も比較的高いため、スポーツイベントやグッズ、関連活動への人々の支出意欲は旺盛だ。さらに日本の高度なデジタルインフラは、スポーツコンテンツへの広範なアクセスを可能にし、テクノロジーに精通した熱狂的な視聴者にも対応できる。
4. 世界的隆盛への流れ
最新のトレンドは、日本市場への参入を目指す国際的なスポーツ事業体が大幅に増加していることを示している。マンチェスター・シティーやバイエルン・ミュンヘン、パリ・サンジェルマンといったサッカーの強豪チームが最近次々と来日したことは、ツアー先やパートナーシップの対象として日本の魅力が高まっていることを表し、世界のスポーツ舞台の最前線に日本が位置付けられていることを示す。
近年の困難を乗り越えてきた日本の歩みは、その回復力を示すだけでなく、スポーツへの投資と関与で「最高の目的地」としての可能性を明確に示した。強固な安定基盤、豊かなビジネスの可能性、熱心なスポーツ愛好者を持つ日本は、拡大と繁栄を目指すスポーツ事業体にとって絶好のチャンスの場だ。日本がイノベーションと成長を続ける中、そのスポーツの未来は前例のない成功と卓越性を示唆する。
日本にはまた、過去の教訓から学ぶという利点もある。さらにメディアの権利や草の根レベルの成長といった、中国など近隣諸国が抱える課題からも学ぶことができる。今夏、欧州のサッカークラブがスポンサーやパートナーとともに訪日する際には、スタジアムが満員となり、地域住民やグローバルパートナーの満足気な表情が見られるだろう。そして、「日本に来て一緒にウィン・ウィンの関係を築きましょう」というメッセージが世界のスポーツ界に向けて発信されるに違いない。
トム・エルスデン氏は、ニューヨークに本拠を置くマーケティングエージェンシー「160over90」の副社長を務める。