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リテールメディアが急速に拡大中だ。航空会社から決済プラットフォームまで多様な企業が新規参入し、資産であるファーストパーティデータを活用した市場シェアの獲得に熱心に取り組んでいる。
2024年4月にJPモルガン・チェース銀行(JPMorgan Chase Bank)はチェース・メディア・ソリューション(Chase Media Solutions)を立ち上げた。これは、ブランドが消費者の興味や購買傾向に基づいてエンゲージメントを構築できるメディア事業で、チェースの顧客はなじみのあるブランドや見知らぬブランドから、パーソナライズされた割引やキャッシュバックを受け取れるというものだ。ブランドはチェースのトランザクションデータを利用し、新規顧客や既存顧客、ロイヤル顧客などに対して、購入履歴に基づいたターゲティングを行うことができる。また、顧客のデータを利用して、実店舗とオンラインの両方での購入について、支出の増分を把握することもできる。
今年のカンヌライオンズではユナイテッド航空(United Airlines)が、同社の広範なビデオネットワークを活用して旅行中の消費者へのターゲティングができる機内広告プラットフォーム「キネクティブ・メディア(Kinective Media)」をローンチした 。ファーストパーティデータを活用し、同社のモバイルアプリや機内エンターテインメントの画面、その他のタッチポイントから匿名化された視聴者セグメントを作成するもので、ノルウェージャンクルーズライン(Norwegian Cruise Line)、メイシーズ(Macy’s)、チェースが発行するユナイテッド航空のクレジットカード、テレビサ・ユニヴィジョン(TelevisaUnivision)、IHGホテルズ&リゾーツ(IHG Hotels & Resorts)、電通といったブランドや広告会社が提携している。
ユナイテッド航空、ペイパル(PayPal)、エクスペディア(Expedia)もまた、独自のリテールメディアネットワーク(RMN)を展開している。RMNに新規参入した企業には他にも、ターゲット(Target)のラウンデル(Roundel)やウォルマート(Walmart)のウォルマート・コネクト(Walmart Connect)、アジア太平洋地域ではデリバルー(Deliveroo)、グラブ(Grab)、フェアプライス(FairPrice)、カルーセル(Carousell)などがある。
市場が飽和するリスクはあるのか、現在のRMNにとっての差し迫った懸念は何なのか、Campaignが探った。
アジア太平洋地域におけるRMNの成長
リテールメディアの分野に参入する企業が急増しているが、特にアジア太平洋地域ではまだ初期の段階にあるため、RMNが市場の飽和状態に達するには程遠いと専門家はみている。
ジッチャ(Zitcha)CEOのトロイ・タウンゼント氏は、日用消費財ブランドには成長とイノベーションの余地が十分にあると考えている。アジアのリテールメディアの状況はまだ基礎段階にあり、制約よりもチャンスの方が多いと指摘する。
小売業者が増えると、ブランドがさまざまなRMNへの支出を戦略的に配分するには多様なリテールメディアが必要であることが強調されるという。
「ファーストパーティデータを戦略的に活用して広告フォーマットを刷新し、強力なパートナーシップを構築し、顧客体験に焦点を当て、パフォーマンスを継続的に最適化するブランドは、急速に発展するこの分野で際立った存在となって成功を収めるでしょう」とタウンゼント氏は説明する。
「これは小売業者やブランドにとって、収益の増加をもたらす大きなチャンスです」。
マルチローカル社(Multilocal)で最高マーケティング責任者(CMO)を務めるレイチェル・パウニー氏もタウンゼント氏と同じ意見だ。そして競争が激化することで、ブランドが消費者とのつながりを深め、消費者体験を全体的に向上させる機会が生まれると付け加える。
膨大な量のデータにアクセスできれば、ブランドはより関連性の高いパーソナライズされた広告メッセージをオーディエンスに届けることができる。
「例えばユナイテッド航空のような企業は、ファーストパーティデータを活用し、自宅から空港、機内、目的地到着まで、旅のあらゆる段階で消費者にリアルタイムでオファーを提供することで、非常に収益性の高いモデルを構築することができます」とパウニー氏。
「ペイパルも同様にファーストパーティデータを活用し、購買行動と意図に基づいてターゲティングした広告メッセージを送ることで、ブランドに大きなチャンスをもたらすことができます。正しく使用すれば、消費者は広告メッセージに好意的に反応し、関連性と価値を見出す可能性が高くなります」。
特にアジア太平洋地域では、リテールメディア市場はまだ断片化が問題となる段階には至っていない。小売企業がプライバシー保護やコンプライアンス、ウォールドガーデン(閉鎖的なエコシステム)の構築を重視して、自社ネットワークの構築と改良に注力しているためだ。また、ターゲットを絞った広告ソリューションを提供しながら消費者データを保護し、安全でコンプライアンスに準拠したエコシステムを作ることに重点を置くRMNの構築に、着手していない企業もある。
グラブのリージョナル・マネージングディレクターで、広告事業「GrabAds」とブランドインサイトの責任者でもあるケン・マンデル氏は、今日のブランドとエージェンシーには多くの選択肢と広告チャネルがあると語る。そしてRMNの特徴となる3つの重要な要素として、頻繁に訪れてくれる大規模なオーディエンス、ファーストパーティデータ、そしてクローズドループ測定を挙げる。あらゆるRMNが同じように作られているわけではないからだ。
マンデル氏によると、RMNによってカスタマージャーニーの異なる購買段階に作用し、マーケティングファネル全体にわたって多様なタッチポイントを提供する。例えば GrabAdsがカンター(Kantar)と実施した最近の調査では、ソーシャルメディア、eコマース、大手小売業者、スーパーアプリという4つの主要なカテゴリーが明らかになった。
「『小売』という言葉はやや混乱を招くかもしれません。実際にはRMNを作る上で、プラットフォームは必ずしも小売業者によるものである必要はないのです」とマンデル氏。
「ブランドは、プラットフォーム間の合理化や統合を考えるよりも、RMNを試してみて、さまざまなRMNプラットフォームの独自機能を活用し、フルファネル型ビジネスの目標を達成する方法を検討すべきです」。
プライバシーと規制の遵守
現在、小売業者にとって市場飽和よりも差し迫った問題は、有意義で記憶に残る管理しやすい体験を創造することと、プライバシーに配慮したソリューションとのバランスをとることだ。サードパーティCookieや識別子が段階的に廃止されていく中で、RMNはプライバシー中心のアプローチへの投資を優先している。
消費者のプライバシーに対する懸念が高まる中、ブランドは透明性を確保し、消費者を保護するための規制を遵守する必要がある。
消費者は長い契約書や法律用語を扱うことを望まないため、オプトアウトとオプトインの手順を分かりやすくて扱いやすく、シンプルなものにすることは極めて重要だ。リテールメディアでの成功は、データ使用に関する誠実な説明と、消費者にオプトアウトの選択肢を提供することにかかっている。
データと引き換えに、価値を提供することは不可欠だ。メリットが感じられれば、より多くの人々がオプトインし、そのままオプトインしたままでいる可能性が高いため、確固としたインセンティブ戦略が重要なのだ。
あらゆるRMNがコンプライアンス、プライバシー、顧客体験を考慮しているとタウンゼント氏はみている。小売業者がこれらを非常に真剣にとらえていることと、顧客の小売業者に関する知識はビジネスの成功において最も重要であるためだ。
「最高のRMNは、顧客満足とプライバシーを中核として構築されています。末端の顧客が素晴らしい体験をすれば、小売業者、ブランド、そして最も重要である顧客の全員にメリットがもたらされます」とタウンゼント氏。「小売企業がこれらの側面を優先することで、メディアが真に持続可能な成長をしていく舞台が整うのです」。
リテールメディアが360度キャンペーンに
RMNが包括的な360度キャンペーンに変わることで、ブランドのマーケティング戦略の立て方も変化している。ブランドはこうした動きを、いくつかの方法で活用している。
RMNがブランドの商品カタログ全体に関するインサイトを提供し、より多くのマーケティング戦略を可能にするため、マーケターは特定のSKUをターゲットにできるようになった。このアプローチによって、SKUごとにカスタマイズされたメッセージングとクリエイティブアセットが展開可能になり、興味関心と消費者エンゲージメントが向上する。
RMNフィード内での商品のプレゼンテーションも進化している。以前は商品の背景には白い無地を表示していたが、現在ではSKUごとにクリエイティブなビジュアルを使用している。すると商品リストの魅力が高まり、ブランドの全体的なクリエイティブ戦略に沿ったものとなって顧客体験が向上する。
RMNによって、小売業者はオムニチャネルも活用できるようになる。ブランドは、メタ(Meta)やグーグル(Google)のようなオフサイトのチャネルと、店舗での体験をまたいで、マーケティング活動を統合することができる。すると、オンラインでの商品発見から店舗での購入まで一貫性のある顧客体験が実現し、ブランドと消費者の双方にメリットがもたらされる。
顧客の好みや行動に関する洞察が深まると、ブランドはオンライン広告から店内ディスプレイまであらゆるタッチポイントを網羅する、高度にパーソナライズされたキャンペーンを作成して、一貫したブランド体験を提供できる。
リアルタイムのデータと分析によって、ブランドはキャンペーンを継続的に最適化することが可能になる。成功した要素や改善すべき部分を素早く特定することで、効果とROIを最大化するよう戦略を調整できる。
例えば、グラブのデータによると、消費者の66%が特定の店舗を念頭に置かずにアプリを利用しており、91%が新しいレストランや店舗をアプリを通じて発見している。これは、認知や興味関心を持ってもらうアッパーファネル(ファネルの上部)の段階でのブランド構築や、オンラインとオフラインの両方で発見から購入、ロイヤルティ醸成に至るまでフルファネルでのエンゲージメント構築の可能性を示すものだ。
もう一つの例はプーマ(Puma)だ。同社はシンガポールでGrabAdsを使ってオンラインからオフラインに誘導するO2O(Online to Offline)キャンペーンを実施。実店舗で利用できるプーマの無料ギフトバッグを、広告バナーでユーザーに知らせた。このアプローチによって平均クリック率は1.84%を達成し、20,000人以上の顧客が店頭でギフトバッグを受け取った。
ザ・トレードデスク(The Trade Desk)でアジア太平洋地域のクライアントサービス担当シニアバイスプレジデントを務めるミッチ・ウォーターズ氏によると、データの最も心が躍る側面の一つは、リテールメディアの枠を超える可能性があることだという。
同氏によると、ブランドは現在オープンインターネットでのオフサイト環境にて、小売データを活用し始めている。アジア太平洋地域の消費者は、オンラインで過ごす時間の6割近くをOTTコンテンツのストリーミング、ニュースやブログの閲覧、ポッドキャストの視聴、オンラインゲームに費やしている。
しかしこのような環境へのシフトは、小売データがファネルの下部でのコンバージョンだけでなく、上部でのブランド認知も促進することを意味するという。ブランドはこの情報を活用して広範なマーケティング戦略を策定し、トレードマーケティング(小売業や購買者を対象としたマーケティング)や全体的なマーケティングの予算を統合している。
「例えばマーケターは小売データによって、マーケターは顧客のショッピングジャーニーのかなり早い段階でリーチすることができます。顧客が店舗を訪れたり小売業者のウェブサイトにアクセスするのを待つ代わりに、最新のストリーミングシリーズも視聴している顧客を小売データで特定し、そこにターゲットを絞ることができます」とウォーターズ氏。
「このように小売データは、ブランドが各ステップで適切な消費者にリーチするのに役立ちます。広告主は、OTT広告に接触した特定のオーディエンスがモバイル端末でリターゲティングされ、商品を購入する可能性が高いということに気付くかもしれません」。
さらに小売データによって、広告主は誰をターゲットにするかを非常に意図的に設定することができるという。何年も(あるいは何十年も)蓄積されたデータと、豊富なeコマースのシグナルによって、小売業者は顧客のライフステージや購買傾向など、関連性の高いオーディエンスセグメントを作成することができる。
「例えば、ベビーグッズをギフトとして購入した顧客と、出産を控えている顧客を区別することができ、広告主はその情報を使って広告メッセージをカスタマイズできます」。
リテールメディア・キャンペーンの成果の評価
インタラクティブ広告協会(IAB)がデータに関してまとめた2024年の調査によると、オンラインで買い物をする人は既に購買の意向があるため、オンラインのリテールメディアへの広告出稿は非常に効果的だ。
消費者のほぼ10人に9人(89%)が、少なくとも1種類のリテールメディア広告に注目し、eコマースで買い物をする人の86%が過去1年間にリテールメディアの広告から商品を購入したと回答している。
しかしインテグラル アド サイエンス(IAS)の調査によると、専門家はRMNの広告が他のチャネルに比べてROIが低いと認識している。ビューアビリティ測定などメディア品質のソリューションは、RMNキャンペーンのROIを高めることができる。
キャンペーンの成功は、広告費売上高比率やROAS(広告の費用対効果)など、全体的な広告のコストと収益を比較することで測ることができる。
IASは、ビューアビリティ測定が業績に与える真の影響を明らかにするため、ある消費者向けパッケージ商品(CPG)の小売業者の観察調査を実施した。
視認可能な範囲に表示されたビューアブルな広告と、視認性があると見なされないノンビューアブルな広告のコンバージョンを比較したところ、前者は後者に比べてコンバージョンが200%増加することが明らかになったと、同社でアジア太平洋地域のセールス担当シニアバイスプレジデントを務めるローラ・クイグリー氏は語る。
「次にROIを調査しました。大手CPGブランドのインプレッションデータを分析したところ、ビューアブルなインプレッションに費やした1米ドルごとに2.25米ドルの利益が得られ、ROIが大幅に向上していることが分かりました」とクイグリー氏。
「リテールメディアのビューアビリティを正確かつ戦略的に追跡することも適切でしょう。広告のビューアビリティを観察することで、マーケターはRMNキャンペーンを最適化して広告のインパクトを最大化し、投資に対する価値を確実に得ることができます」。
したがって、RMNを選択する際にブランドはROASからブランドの健全性に至るまで、関連する全ての指標を評価しなければならない。総合的に測定するアプローチによって、キャンペーンのパフォーマンスを包括的に把握でき、改善すべき点を特定することができるためだ。