Matthew Keegan
16 時間前

ARグラスは本当に未来の話なのか?

メタがホログラフィックARグラスのプロトタイプを披露し、ブランドとユーザーに変革をもたらすと期待されている。これはARにとって革命的な一歩となるのか、それとも単なる先進技術の一つに過ぎないのだろうか?

メタのARグラス「オリオン(Orion)」
メタのARグラス「オリオン(Orion)」
* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

10年前にグーグル(Google)が拡張現実(AR)のスマートグラスを発表した当時は、人々にまったく受け入れられず、笑い飛ばされた。そして翌年「グーグルグラス(Google Glass)」は市場から完全に撤退した。

それから10年が経ち、メタ(Meta)のマーク・ザッカーバーグCEOはホログラフィックARグラス「オリオン(Orion)」のプロトタイプを披露、これを「初となる、真のARグラス」「これまで作られた中で最も先進的なARグラス」と表現した。

これはARにとって革命的な一歩となるのだろうか? それとも、結局は失敗に終わってしまう先進技術の一つに過ぎないのだろうか?

「脚光を浴びる日が長年待ち望まれてきたARグラスですが、ユーザー体験と普及の面で限界にぶつかり続けています」と、Invnt グループの社長兼CEOであるスコット・カラザー氏は語る。「ですから、本当に問われるべきは、ARグラスがどれだけ先進的かではありません。問題を解決するのか、それとも私たちが驚嘆するような新しい問題を生み出しているだけなのかということです。ARがSFのような目新しさを感じさせるものとしてではなく、スマートフォンのように直感的に使えるようになるまで、私たちは新しい技術を追いかけているのです」。

メタは自社のホログラフィックARグラスであるオリオンを「初となる、真のARグラス」「これまで作られた中で最も先進的なARグラス」と表現する。
 

現段階ではまだプロトタイプに過ぎないオリオンだが、これも単なる先進技術の一つに過ぎないことを示す根拠が大半だ。もし市場に出回ることになったとしても、おそらく高額になるだろう。ザ・ヴァージ(The Verge によると1台あたりの製造コストは約1万米ドルで、その大半を炭化ケイ素レンズのコストが占める。テクノロジー愛好家を興奮させることにはなるかもしれないが、一般消費者からのARグラスに対する幅広い需要はない。

「一般の人々が想定するスマートグラスの利用シーンは、これまで限定的でした」と語るのは、キャンバス8(Canvas8 )のアジア太平洋担当行動分析シニアアナリストであるジョセリン・ヨン氏だ。「ほとんどの人にとって、スマートグラスは必要ありません。価格帯の高い、贅沢品なのです。価格がもっと大幅に下がれば、需要は増えるかもしれません」。

現在、価格に見合った説得力のある利用シーンが見当たらないため、需要はそれほど無い。さらに、ARヘッドセットの普及を阻む最大の障壁の一つが、スマートフォンだ。スマートフォンは私たちのニーズに見事に対応し、もはや欠かすことのできないキラーアプリも数多く揃っているからだ。ARアプリケーションの中には、既にスマートフォンで利用できるものもある。そのため、ARグラスやヘッドセットの必要性は薄れる。

「現在直面しているARの主な問題の一つは、主流となるために必要なハードウェア設計やソフトウェアがまだ発展途上であり、さらなる開発が必要だということです」と、ウィーアーソーシャル・シンガポール(We Are Social Singapore)でイノベーションディレクターを務めるマノリス・ペラキス氏は語る。

ペラキス氏は、メタのオリオンが現時点で最も先進的なARグラスであることに疑いの余地はないとしながらも、この製品が主流となるにはアプリの強固なエコシステムと、その有意義な利用シーンが必要だと述べる。

「メタは、70度という最高レベルの視野角を持つ最先端の光学技術と、手や腕の動きを感知するEMG(筋電位)リストバンドを装着して操作できるニューラルインターフェースを採用しています。しかし私は、広い視野と直観的なユーザーインターフェース、アプリの強固なエコシステム、ソーシャル機能を備えた、手ごろな価格のARグラスがすぐに登場することを待ち望んではいません」。

アップル(Apple)は今年初め、複合現実に対応したヘッドセット「ビジョンプロ(Vision Pro)」を発売した。しかし、アプリのエコシステムが無くてソーシャルメディア統合も限定的な第一世代の製品価格が3,500米ドルというのは、一般消費者に売るのは難しい。アップルはその後、ヘッドセットの生産を縮小している。

「ヘッドセットを顔に装着して生活することに対する、消費者の受容度を過大評価しているのかもしれません」とカラザー氏。「これらのデバイスが日常の体験を本当に向上させない限り、常にギミックと見なされるでしょう。市場の需要は単なる好奇心ではなく、ライフスタイルの統合によるものですが、まだそこまでには至っていません」。

需要が予想を下回ったため、アップルは複合現実対応ヘッドセット「ビジョンプロ」の生産を縮小した。
 
しかしこれらのデバイスは、ハードウェアとソフトウェアが融合する未来の一部として考える必要がある。過去10年間で、グーグルグラス、ホロレンズ(Hololens)、マジックリープ(Magic Leap)、スナップ(Snap)のスペクタクルズ(Spectacles)といったAR技術が復活した。どれもユニークな技術で、ハードウェアやユーザーインターフェースの革新を通じて貢献してきた。

同様にメタのオリオンも、その背後にあるスマートテクノロジーが成熟するにつれて日常生活への統合が進み、消費者のブランドとの日常的な関わり方を一変させる可能性がある。

「ARによってブランドは、消費者を受動的な視聴者から能動的な参加者へと変える、非常に豊かで没入感のある体験を創出できるようになります」と語るのは、アセンブリー(Assembly)でアジア太平洋のクライアントリーダーシップ担当シニアバイスプレジデントを務めるヤンヤン・フロウド氏だ。「ARのハードウェアコンポーネントの進化に伴い、スマートフォンやスマートグラスなどのウェアラブルテクノロジーを通じてARが日常生活やルーティンにシームレスに溶け込む準備が整います。広告をただ見るだけでなく、衣服をバーチャルで試着したり、製品をリアルタイムでカスタマイズしたり、ブランドの仮想環境に足を踏み入れることもできるようになるでしょう」。

さらに「購入前のお試し」という機能は、ファッション、自動車、家具など、写真や動画では判断が難しい業界に、大きな影響を及ぼす可能性がある。

「この機能によって購入前に試着や確認をできるようになり、eコマースは障壁を一つ克服できるようになります」とヨン氏。「サイズが合う家具、似合うファッション、インテリアの選択肢など、ショッピングには多くの利便性がもたらされます。さらに、インテリジェンスを人間の感覚(音声や動画など)に重ね合わせることや、新しい種類の考え方(マッピング、ナビゲーション、翻訳、エンターテインメント、価格比較、コミュニケーション、その他ギミックを超えた基本的な拡張など)について理解することは、本当に心が躍ります」。

ARの採用はまだ初期段階ではあるものの、大きな変革をもたらす可能性がある。

「ARは“現実”の環境から私たちを切り離すことなく、マルチタスクやデジタルオーバーレイを可能にしてくれます」と、モンクス・チャイナ(Monks China)のグロース部門ヘッドであるロン・リー氏は語る。「AIとARを統合することで、より自然で文脈を認識したインタラクションが可能になるでしょう」。

そして、ARの進化は消費者とブランドの関わり方にディスラプションをもたらすだけでなく、インタラクションの概念そのものを再定義するだろうとカラザー氏は考えている。

「店舗の前を通りかかった際に、商品のおすすめがパーソナライズされて目の前に表示されたり、お気に入りのブランドアンバサダーからホログラムのメッセージを受け取ったりするところを想像してみてください」とカラザー氏。「ARはデジタルとフィジカルの境界線を曖昧にし、あらゆるサーフェス、あらゆる瞬間をエンゲージメントの機会に変えます」。
 
AR技術は、特にeコマース分野で「購入前のお試し」機能を大幅に向上させる可能性がある。
 
ARが進化するにつれ、ブランドはユーザーがARコンテンツにどのようにエンゲージし、どの体験が最も共感を呼ぶのかといった行動データの貴重なインサイトを手に入れることになる。しかし、ここで気をつけなくてはならないのは、ブランドは「素晴らしいコンテンツ」と「気味の悪いコンテンツ」の間の微妙な綱渡りを強いられるという点だ。結局のところ、消費者はテクノロジーに侵略されたと感じたくはない。テクノロジーによって力を得たいのだ。

「ARガジェットは膨大な量のデータを収集するため、プライバシーやセキュリティーに関する深刻な懸念が生じます」と、クラクソン(Claxon)の戦略ディレクターであるジェイク・ケイ・ローソン氏は述べる。「ARの没入感という性質は、過剰な使用や社会的孤立、依存につながる可能性があります。ARが社会に与える影響は、倫理的配慮によって方向付けられるべきで、不平等やデジタル格差を悪化させることなく、全ての消費者に役立つようにする必要があります」。

ARや複合現実は「いつか実現するかもしれない」技術ではなく、「いつ実現するのか」という次元の話だ。しかし、主流として採用されるまでの道のりは、控え目に言っても困難だろう。

「もし生成AIが文化に広がる山火事なのだとすれば、ARは氷河のようなもの。ゆっくりではありますが、時間をかけて地形を作り変えることができます」とカラザー氏は言う。「今日のスマートフォンやAIアシスタントと同じように、ARは最終的には日常生活に組み込まれるようになるでしょう。しかし、反発も起こるであろうことを直視せねばなりません。プライバシーの問題、デジタル眼精疲労、現実世界と融合させることの倫理的な意味合いなどに対処しなければなりません。メリットは、無限の創造性と新しい形式のストーリーテリングで、デメリットはこれまで以上に物理的な世界から切り離された社会になる可能性があることです。このパラドックスのバランスを取ることが、真の課題です」。
 

 

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