Ori Gold
12 時間前

グーグルのアドテク独占禁止法裁判からCMOが学べること

米司法省がグーグルを、広告市場の独占で提訴した。マーケターやCMOがこの裁判を注視すべき理由を、ベンチ・メディアのオリ・ゴールド氏が説明する。

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* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

デジタル広告の業界は目覚ましい勢いで栄えた。そしてグーグル(Google)のような巨大企業と規制当局との対決ほど、ドラマチックなものは無いだろう。 

米司法省と9つの州がグーグルのアドテク事業を訴えた裁判が終了したが、この裁判の根底にあるのは、同社がデジタル広告をほぼ独占している状態がインターネットの将来に永続的な影響を及ぼすのではないかという懸念だ。 

法廷闘争自体も人々の注意を引き付けるものだったが、CMOは「自分たちにとって何を意味するのか?」という重要な問いを自身に投げかけるべきだろう。この注目度の高い裁判からは、貴重な洞察を得ることができる。デジタル広告キャンペーンの管理に、グーグルのツールを多用している場合はなおさらだ。この裁判とグーグルの対応は、広告業界における権力、優位性、透明性という、CMOとしては最新の注意を払うべき問題を理解する糸口となる。 

デジタル広告でグーグルが優位に立っていることは周知の事実で、同社は以前にも法的トラブルに直面した。2020年に米連邦地裁は、グーグルが検索エンジンをブラウザに初期設定してもらうためアップル(Apple)などの企業に対価を支払ったことが違法な独占状態を作り出し、検索広告に対する優位性をさらに高めたと判断した。欧州では、グーグルは16億米ドル(15億ユーロ)という巨額の制裁金の支払いを辛うじて免れた。そして今注目されているのが、同社のアドテクノロジーの商慣習だ。 

もしもグーグルが勝訴すれば、同社のデジタル広告における優位性は強化される可能性がある。もしも敗訴すれば、デジタル広告の状況は劇的に変化するかもしれない。このことにCMOは留意すべきだ。 

グーグルの優位性は、デジタル広告の領域の広大な部分に及ぶ。同社はアドテク市場のバイサイド(広告枠の購入側)とセルサイド(広告枠の提供側)の両方を支配しており、マーケターが広告を入札するために使うツールから、広告が表示されるプラットフォームまで、全てを管理している。その結果、価格を決定するのはグーグルとなり、パフォーマンスのレポートにもGoogle Analyticsのようなツールを使うことになる。これではまるで、宿題の丸付けを自分でしているようなもので、同社のスタックを使用しているブランドにとって大問題だ。広告費用を請求してくる会社と、広告効果のレポートを作成する会社が同じだと、自分たちが本当に費用に見合った価値を得ているのかを把握するのが難しくなるからだ。 

この優位性により、グーグルは着実に価格を引き上げることができた。そして広告購入プロセスと多くのメディアアセットの両方を支配することで、コストはますます膨らんでいる。さらに、大量購入に対してエージェンシーに提供されるインセンティブ・リベートによって、ブランドはグーグルのエコシステム内に一層組み込まれていく。その結果、CMOはより少ない選択肢に対して、より多くの費用を支払うことになり、グーグルのプラットフォームを使う利便性には大きな制限が伴うようになる。それは金銭的な問題だけでなく、キャンペーンのコントロールと柔軟性を失うことにもつながる。 

グーグルの支配で最も苛立たしい側面の一つは、広告配信とパフォーマンス・レポートにおける透明性の欠如で、これはしばしばアドテクノロジーの「ブラックボックス」と呼ばれる。P-MAXなどのツールは広告配信を最適化すると謳われているが、広告がどのような場所に表示され、入札がどのように行われるかといった洞察はほとんど提供されない。この不透明性が、キャンペーンを効果的に最適化することをほぼ不可能にしている。グーグルのプラットフォームには透明性がほとんどなく、システムはよく自社の利益を優先する。 

同社の優位性は、たとえ優れた技術スタックや膨大なオーディエンスデータがあろうとも、イノベーションを阻害する。グーグルがルールを定め、ブランドはそのウォールドガーデン(エコシステム内で閉じられた環境)の中でプレーすることを余儀なくされる。そのため、キャンペーンの有意義なテスト&ラーン(試しながら学ぶこと)にも制限がかかり、新しいブランディングソリューションやクリエイティブ戦略を試したいと考えるCMOはたいてい壁にぶつかることとなる。グーグルが重視している戦術はダイレクトレスポンスであるため、クリエイティビティーや長期的なブランド構築が入り込む余地はほとんどない。一方で広告のパフォーマンスが見えにくく、イノベーションを推進するために必要な洞察が得られない。 

CMOにとっての教訓は明らかで、メディアミックスの多様化を図ることだ。グーグルの広告技術スタックに依存しすぎると、ブランドは危険にさらされる。グーグルのシステムは、ブランドではなくグーグル自身に利益をもたらすよう設計されている。ツールの利便性は否定できないが、価格の上昇、透明性の制限、イノベーションの機会の減少といった代償を伴う。 

米司法省がグーグルを精査している今、マーケターが代替案を模索することはこれまで以上に重要になった。グーグルが消えることは無いだろうが、一歩先を行きたいCMOは、慣れ親しんだ楽な選択肢の先を考える必要がある。 

この訴訟は単なる反トラスト法(独占禁止法)の問題ではなく、マーケターに対する警鐘だ。グーグルが勝訴しようと敗訴しようと、これはブランドがデジタル広告戦略の主導権を取り戻すチャンスなのだ。 


オリ·ゴールド氏は、ベンチ·メディア(Bench Media)のCEO。 

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