Ryoko Tasaki
4 時間前

世界マーケティング短信:グーグル裁判に事業分割を含む是正案

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

写真:Getty Images
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※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

米司法省、グーグルの検索事業分割も含む是正案を提出

米司法省はグーグル(Google)の検索サービス事業の一部切り離しを含む是正措置案を連邦裁判所に提出した。同社には今年8月、オンライン検索市場で反トラスト法(独占禁止法)に違反したとする判決が下されている。

司法省の是正案は、同社が検索エンジンで優位に立つためにクローム(ブラウザ)、プレイ(アプリストア)、アンドロイド(OS)など自社製品を利用していると指摘し、これらのサービスの分離に言及。また同社の検索エンジンがアップル(Apple)やサムスン(Samsung)などにプリインストールされるための、数十億米ドル規模の契約も禁止される可能性がある。ユーザーが他の検索エンジンを選ぶことができる「選択画面」の導入も提案された。

同社は今月初め、ニュージーランドでニュース記事にリンクした場合に対価支払いを義務づける「リンク税」の法案が成立すれば、同国で検索結果からニュース記事へのリンクを停止する意向を示した。同様の法律は豪州やオーストラリアで既に可決されている。

アップルのブランド価値が22年ぶりに低下 インターブランド

インターブランド(Interbrand)が毎年発表しているブランドランキング「ベストグローバルブランド」で、アップルのブランド価値が22年ぶりに低下した。依然として首位を維持しているが、5000億米ドルをわずかに下回り、前年比-3%に。2位のマイクロソフト(Microsoft)は3525億米ドル(同+11%)、3位はアマゾン(Amazon)で2981億米ドル(同+8%)、4位のグーグルは2913億米ドル(同+12%)だった。

アップルのブランド価値低下について、インターブランドのブランドエコノミクス担当グローバルディレクターのグレッグ・シルバーマン氏は「他社がAIへの参入を急ぐ中、アップルは自社の価値観に合致したAIをリリースするため、より慎重な道を歩んできています。スピードでは他社におよばないものの、より深いブランドの観点を持ったアップルのリーダーシップは、短期的な収益よりも長期的な信頼を優先しています」とコメント。同社の株価が年初以来20%上昇していることから、来年のランキングでは再び価値が上昇すると見込んでいる。

今回初めて上位100ブランドにランクインしたのは、エヌビディア(Nvidia、36位)、パンドラ(Pandora、91位)、レンジローバー(Range Rover、96位)、ナイキ傘下のジョーダン(Jordan、99位)など。ジョーダンについて、シルバーマン氏は「古典的なスポーツの価値観をグローバル化したブランド」であり、顧客とさまざまなレベルで情緒的なつながりを育むことができたと評価する。

Xがユニリーバと和解、「違法ボイコット」訴訟から除外

X(旧ツイッター)が今年8月に広告主団体や複数の企業を反トラスト法違反で訴えていた件で、ユニリーバ(Unilever)と和解に達し、同社を訴訟から除外した。新たな広告提携で合意したという。

この訴訟は、ブランドセーフティの基準から逸脱しているという理由で、世界広告主連盟(WFA)が設立したGARM(責任あるメディアに向けた世界同盟)や広告主企業がXへの広告出稿を取りやめ、数十億米ドルの損害が発生したというもの。Xによる提訴から数日後に、GARMは活動を中止している。

和解について、業界内では懸念の声も上がる。広告業界の監視団体チェック・マイ・アド(Check My Ads)のクレア・アトキンCEOはリンクトイン(LinkedIn)に「この訴訟の他の被告が、現在何を感じているかは想像もつきません。Xを避けた彼らは、何も悪いことをしていません。そして今ユニリーバが、あたかも悪いことをしたかのようにこのグループから離脱しようとしているのです」と投稿した。「本来は強い力を持つ企業が、彼らの戦術に屈するのを見るのは心配」とし、「ブランドが広告を出したい場所に出稿し、出したくない場所を避ける権利を常に支持しています」と述べた。

オムニコム、成長率+6.5%を記録し業績は好調

オムニコム(Omnicom)が第3四半期の業績を発表し、売上高は予想を上回る38.8億米ドル(前年同期比+9%)、純利益は3.86億米ドル(同+4%)だった。アマゾンやミシュランといった大型クライアントの獲得が奏功して+6.5%のオーガニック成長率を達成し、第1四半期(+4%)や第2四半期(+5.2%)から伸びた。

地域別にみると、第2四半期はアジア太平洋と北米(米国を除く)でマイナスの成長率だったが、第3四半期には全地域でプラス成長となった。また分野別のオーガニック成長率をみると、エクスペリエンス部門は+35.3%、PR部門は+4.3%、広告・メディア部門は+9.4%で、2024パリ五輪や米大統領選が好調な業績に貢献した。

同社は大幅な組織再編を行っており、8月には傘下のクリエイティブエージェンシーをオムニコム・アドバタイジング・グループ(OAG)に統合すると発表している。

メディア費のインフレは今後加速する見込み WFA調べ

世界広告主連盟(WFA)が発表したメディア費のインフレ予想によると、主要なメディア市場の上位10カ国のうち9カ国で2025年に費用が上昇し、2026年にはさらに加速する見込みだ。

アジア太平洋地域で特に急上昇が予想されるインドは8.2%(2024年)→9.0%(2025年)→9.6%(2026年)、中国は3.3%→3.6%→5.4%、日本は1.8%→1.8%→3.1%。豪州は4.2%→4.7%と来年は上昇するものの、2026年には3.0%に落ち着く見込み。全体では3.3%→3.7%→4.6%という予想だ。

メディア費のインフレの主な要因としては、デジタル広告やコネクテッドTVなどのプレミアム在庫に対する需要増や、リテールメディアの高成長が挙げられる。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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