これは、英クリエイティブスタジオ、ムービング・ピクチャー・カンパニー(MPC)による、「キャラクターを使った広告の効果に関する調査結果」をまとめたホワイトペーパーで明らかにされたものだ。
同調査では、マスコットやキャラクターを使わないキャンペーンは、市場シェアを拡大できる可能性が29.7%にとどまることも示された。
MPCと言えば、「ジャングル・ブック」をはじめとした映画のキャラクター制作でアカデミー賞を獲得したほか、カンヌライオンズの受賞歴(英百貨店ジョン・ルイスの「The boy and the piano」や、ヘネシーの「The seven worlds」)などでも知られている。そのMPCが、学者やアナリスト、市場調査会社、広告エージェンシー、同業他社などから収集した情報をもとに、キャンペーンで用いられたキャラクターがブランドの利益やSOV(シェアオブボイス)、エンゲージメントに与える影響について調査した。
調査では、ここ10年間で、きわめて高い効果を発揮したキャラクターをいくつか取り上げ、分析の対象としている。たとえば、ジョン・ルイスの「Monty the Penguin(ペンギンのモンティ)」や、自動車保険ガイコのゲッコー(やもり)、独ディスカウントストア大手アルディの「Kevin the Carrot(ニンジンのケビン)」、サムスン電子のダチョウ(「Do What You Can’t:“できない”ことに挑戦しよう」キャンペーンに登場)、英携帯電話会社O2の「Bubl」などだ。
この調査により、キャラクターを起用した長期的なキャンペーンでは、収益が34.1%増加するのに対し、キャラクターを起用しないキャンペーンでは増加率が26.2%にとどまることが明らかになった。また、新規顧客の獲得については、キャラクターを用いた場合は平均40.9%増加したが、キャラクターを用いなかった場合は32%増にとどまった。
興味深いことに、キャラクターを保有するブランドが、実際にキャラクターを使用した比率は、テレビCMでもわずか63%で、フェイスブックでは25%、ツイッターでは21%にとどまることもわかった。
また、感情に訴えかけるキャンペーンは、そうではないキャンペーンに比べ、3年間でほぼ2倍の収益を生みだす。
なお、1992年にはキャラクターやアニメを用いたキャンペーンの比率が全体の41%を占めていたが、現在ではわずか12%にまで急落している。英国では、キャラクターが登場する広告は7%にすぎず、米国に至ってはたったの4%だ。
MPCの最高経営責任者(CEO)マーク・ベンソン氏は、次のように述べている。「キャラクターや空想の生き物は、エンターテインメントにおいてだけではなく、広告においても見る人の心を強く動かすはずだと、私たちは信じてきました」
「そして今回の調査は、そうした仮説を検証するために行われたものです。メディアは現在、かつてないほど混沌とした状況であり、ブランドは広告を通して、何とかそこに割って入ろうと苦心しています。2020年、世界中が新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われるなか、マーケターも前代未聞の大きな困難に直面しました。そこで私たちは、ブランドが次のキャンペーンの意思決定をする際に役に立つ、実践的な情報を提供したいと考えたのです」