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フジテレビから広告主が相次いで撤退、公共広告だらけに
元SMAPメンバーの中居正広氏による女性とのトラブルに、フジテレビ社員が関与していたと報じられたことがきっかけで、フジテレビでのCMを見合わせる企業が50社を超えた。
昨年12月に一部週刊誌が、中居氏と女性との間に2023年6月頃にトラブルがあり、9000万円の示談金で解決したと報じた。年が明けて、中居氏が出演する番組が続々と休止。9日には中居氏が「トラブルがあったことは事実」「手をあげる等の暴力は一切ございません」「示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」というコメントを発表した。
そして17日にフジテレビ社長の港浩一氏が記者会見を開いた後、事態が急激に悪化した。会見に出席できるメディアが制限され、動画撮影は認められず、記者からの質問にも回答を控える場面が目立った。また週刊誌が報じた6カ月ほど前から事案について認識していたことを認めた。第三者による調査委員会を立ち上げるとも発表したが、日本弁護士連合会が定めるガイドラインに沿ったものではないことも明らかに。
事態を受けてトヨタや花王など50社を超える広告主がCMを差し止め、ACジャパンの公共広告が繰り返し放送されている。
フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスの株式を7%超保有するダルトン・インベストメンツ(Dalton Investments)は15日、関連会社のライジング・サン・マネジメント(Rising Sun Management)を通じて「報道姿勢における一貫性の欠如、そして重要なのは透明性の欠如であり、その後の対応における許容しがたい欠点は、視聴者からの信頼を大きく損なうだけでなく、株主価値の毀損に直結する重大な問題です」と記した書簡を送付。21日には「隠蔽体質を露呈しているとしか思えません」と批判し、外部有識者のみで構成される第三者委員会の早急な設置と、信頼回復に向けた取り組みを再度求める書簡を送付した。
23日には、中居氏が芸能界の引退を発表した。同日にフジ・メディア・ホールディングスが臨時取締役会で、日本弁護士連合会のガイドラインに沿った第三者委員会を設置することを決定。4時間半に及ぶ社員説明会では、湊社長が「会見は失敗だった」と述べた。27日にはオープンな形式での記者会見が改めて開かれる予定。
米国でのTikTok禁止に猶予
就任したばかりのトランプ米大統領が、ティックトック(TikTok)のサービス禁止に75日の猶予を与えた。
バイデン前政権は、ティックトックが米国での事業を売却しなければ米国での利用を禁止する法案を可決していた。ティックトック側は言論の自由を侵害するとして米連邦最高裁判所に訴えたが棄却され、18日夜にサービスを停止していたが、一日足らずで再開している。
トランプ大統領は「私が承認しなければ、ティックトックには価値が無い。承認すれば何兆米ドルもの価値がある」と語り、米資本が50%を出資する合弁事業の形を希望している。
「ティックトック難民」、中国のソーシャルメディアに乗り換え
ティックトックの米国でのサービス停止を前に、中国のソーシャルメディア「レッドノート(小紅書)」が注目を集めた。自らを「ティックトック難民」と称するユーザーがレッドノートに乗り換えたことで、アプリのダウンロード数が急増。両国のユーザーが交流を図る場面もみられるようになった。米国のユーザーが大量に流入したことを受け、レッドノートは翻訳機能をリリースした他、英語コンテンツのモデレーターを募集している。
ティックトック難民のレッドノートへの流入にはチャンスとリスクがあるというのが、専門家の見方だ。ウィー・レッド・ブリッジ(WE Red Bridge)のニッキー・ワンCEOは「諸刃の剣」だと表現し、エコシステムの混乱がユーザー体験に影響を及ぼす可能性を指摘する。また米国のユーザーが政府に対する不満を表明していることを受け、中国当局による監視が強化される可能性もあるという。さらに「レッドにクリエイターの収益化機能が無いことが、国際的なインフルエンサーの長期的な維持において支障をきたす可能性があります」。
トーテム(Totem)創設者のクリス・ベイカー氏はレッドを「中国で最も秘密が守られているソーシャルメディアアプリ」と表現する。現在の規模は比較的小さいため、直ちに脅威となることはないものの「この傾向が続けば、米国議会が警戒する可能性があります。中国の規制当局も、何百万人もの米国人がレッド上で中国のユーザーと自由に交流することに、神経質になるかもしれません」と語った。
中国のマーケティングやテクノロジーについて語るポッドキャスト「上海站」で共同ホストを務めるブライス・ウィットワム氏は「まずレッドノートとティックトックでは目的が異なるため、既存のソーシャルメディアのエコシステムにレッドノートがどのように適合するか、米国のユーザーは理解に時間を要するでしょう」と語る。また、一部の米国ユーザーは既にコンテンツ違反によってアカウントを削除されており、「レッドノートにとってモデレーションの課題の幕開けに過ぎないのかもしれません」。
世界の広告費、2025年に1兆800億米ドルに達する見込み
世界広告研究センター(WARC)によると、世界の広告費は2024年に初めて1兆米ドルを超え、2025年には1兆800億米ドル(前年度比+10.7%)に達する見込みだ。メディアチャネルの複雑化と多様化を反映し、過去10年で広告費は2倍以上に増えている。
ブランドが従来型のプラットフォームから、ソーシャルメディアやリテールメディアなどに移行していることが、最新のレポート「メディアの未来2025(The Future of Media 2025)」で明らかになった。主要な3つのトレンドとして「メディアの選択肢の多様化による新たな機会」「検索広告の課題と機会」「リテールの成長が促進するコマースメディアの拡大」を挙げている。
WARCの調査およびインサイト担当マネージングエディターであるポール・ストリンガー氏は「広告主は広告を出稿するメディア環境を選ぶうえで、コストよりも品質を重視するようになりました。AIを活用したメディアソリューションの成長と、リテールメディアやコマースメディアネットワークの参入によって、シグナルの精度が向上しています」とコメントしている。
【お知らせ】
来週は「世界マーケティング短信」の配信をお休みさせていただきます。
(文:田崎亮子)