シンガポール政府は先日、当局が「オンライン上の虚偽情報」とみなしたコンテンツを幅広く管理できるフェイクニュース禁止法を承認した。
2日間にわたって14時間以上に及ぶ討議がなされ、「オンライン改ざん・虚偽予防法」が5月8日(水)午後10時に承認された。
政治的利害が絡み、フェイクニュースの定義が不明瞭な昨今。そんな折に承認された同法は、幅広いコンテンツを取り締まり対象としており、これが表現の自由の侵害や、議会などによる権力濫用につながるのではないかと大きな懸念を呼んでいる。
政府は、新法は有害な虚偽情報から社会を守るものであって、意見や批判、風刺やパロディの取り締まりが目的ではないと強調している。
この法律によって政府は、公益に反する「故意の虚偽情報」を広めるとみなされるコンテンツの訂正や削除、あるいは同様のウェブサイトのブロックを幅広く求めることができる。命令に従わなかった場合には3万~100万シンガポールドル(約240万~8000万円)の罰金が科せられるという。さらには、罰金に加えて、もしくは別の罰として、最長で禁錮10年の罰に処せられる。
虚偽情報の削除や訂正といった命令はほとんどの場合、一般市民ではなくテック企業を対象としたものになると、政府は強調している。
テック企業は新法に激しく反発。フェイスブックでアジア太平洋地域の公共政策を担当するサイモン・ミルナー副社長は、同社は「新法の性格に懸念を抱いている」と語った。
「我々はシンガポールをはじめとした地域で、誤った情報が拡散しないよう全力で取り組んでいます。最近シンガポールで、事実検証のための第三者委員会を立ち上げたところで、組織的な虚偽情報拡散行為のさらなる防止、政治的な広告の透明性向上に役立っています」とミルナー氏は言う。
「新法により、シンガポールの行政機関に幅広い権限が与えられ、彼らが虚偽とみなした情報を削除するよう我々に求めたり、ユーザーに政府通達を届けるよう強いたりするのではないかと懸念を抱いています。安心できる内容の政府発表がなされ、適切で慎重な法の執行につながることを望みます」
グーグルの広報担当者は、同社は新法が「イノベーションやデジタル情報エコシステムの成長を阻むものになるのではないか」と懸念しているとか。
「虚偽情報は難しい問題で、我々はそれに対応すべく尽力しています。この数週間の議論の高まりは、包括的で透明性のある公の議論が必要なことを示しています。実際どのように法が執行されるのかが重要で、このプロセスについて当社は政治家たちと協議していく所存です」と広報担当者は語った。
ツイッターの広報担当者は、同社はシンガポール政府や関係者と協力し、「建設的な公の議論の実現と進展を図る」つもりだと語った。
「当社はまた、シンガポール政府が、我々の協議プロセスの中で浮かんできた大切なポイントを考慮し、そこで出てきた提言を、特に表現の自由への影響や過剰規制の可能性といった点で、判別基準に盛り込んでもらえることを望んでいます」
(文:ジェシカ・グッドフェロー 編集:田崎亮子)