新会社「電通マクギャリーボウエン」は24カ国に33のオフィスを保有し、従業員は3000人以上。大規模なオフィスが置かれるのは米国、英国、イタリア、オランダ。クライアントも多国籍で、トヨタ自動車やアメリカン・エキスプレス、サブウェイ、資生堂など。日本国内の電通のクリエイティブチームはこれまで通り別個に機能するが、共通のクライアントに関しては電通マクギャリーボウエンと協働する。
フィリピンに拠点を置く「電通ハイミー・サイフー」のCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)、マーリー・ハイミー氏と、現在マクギャリーボウエンのグローバルプレジデントを務めるジョン・デュプイ氏が共同のプレジデントに就任。DANのクリエイティブ担当グローバル・チーフ・エグゼクティブ、ジーン・リン氏の直轄となる。
グローバルチェアマンに就任するのはマクギャリーボウエンの共同創設者でDANのCCOを務めるゴードン・ボウエン氏と、マクギャリーボウエンのグローバルCCOを務めるネッド・クロウリー氏。
「この戦略プランは新型コロナウイルスの影響が出るずっと以前から綿密に練ってきました。コロナ禍で、今ほど信用が重視されている時はないのです」とリン氏。「電通マクギャリーボウエンは戦略・クリエイティブ面における西洋の強みと電通の東洋的哲学を併せ持った、クライアント中心の組織になる。重点を置くのはイノベーションと技術、人間性です」。
「我々にとっては非常に重要なステップ。クライアントは今、かつてないほど地域のエコシステムに配慮するようになった。地域ブランドが国境を越えて連携できるよう、我々に求められるのは一貫したグローバルなプラットフォーム思考です」
リン氏はアイソバー中国を管轄するため、2004年にイージスメディアに入社。2014年にはアイソバーのグローバルチーフエグゼクティブとなり、現在は新体制「One Dentsu」のグローバルクリエイティブカウンシルの議長も兼任、業務プロセスやサービスの一貫した評価基準の導入を図る。「共通のクライアントに関し、日本国外のクリエイティブエージェンシーが国内の電通チームとシームレスに対応できるようにしていきたい」。
現時点で「ネットワークを新たな地域に拡張するプランはない」とも。「世界中に同じようなオフィスを何百と構えることは意味がありません。『ニューノーマル』が生まれ、テクノロジーによってコンテンツが価値の高いブランドエクスペリエンスを創出するようになれば、クライアントは必ずしもそうした体制を望まないでしょう」。
「よって我々が目指すのは、ハブアンドスポーク方式のアプローチ。世界レベルではハブ(中心拠点)、地域レベルではスポーク(拠点)を通して緻密な『ブランドプラットフォーム思考』を実現します」
機能の多様化や地域性という点で注力していくのは、「欧州、中東、アフリカのEMEA」。
各地域のエージェンシーは引き続き、同地域のDANが管轄する。「どの市場でも地域の統合ソリューションを目指しているので、こうしたシステムは重要です」。今後は世界レベルにおいて電通マクギャリーボウエンの管轄にもなる。ハイミー氏はシンガポールに移ってアジア太平洋地域を、デュプイ氏はニューヨークに残って北米とEMEAを担当する。
電通マクギャリーボウエンはDANのクリエイティブビジネスを担う組織として、ミッチェル・コミュニケーション・グループをはじめとする電通のPRエージェンシーやアイソバー、ジョン・ブラウンなどと同じ位置付けになる。クリエイティブはDANの総収益の約25%で、残りの75%はCRM(顧客関係管理)やメディアビジネスが占める。
(文:クレア・ビール 翻訳・編集:水野龍哉)