テスラのCEOで、ツイッターのオーナーでもあるイーロン・マスク氏は、広告に対する考えを180度転換し、広告は「素晴らしいもので、誰もがやるべきだ」と思い直したようだ。自身の電気自動車ビジネスについても「少し広告を試して、様子を見てみよう」と発言している。
マスク氏は5月16日に実施されたテスラの年次株主総会のライブ動画配信で、2022年10月に約440億ドル(約6兆1000億円)で買収したツイッターが、「広告収入に大きく依存している」のは、皮肉なことだとコメントした。
「過去に一度も広告を利用したことがないこの私が、広告に大きく依存する会社を持つことになったのだから」と、壇上のマスク氏は投資家からの質問を受けてそう語った。
「提案を受け入れることになるだろう」と同氏は続けた。「少し広告を試して、様子を見てみよう」
世界経済の圧力と電気自動車市場での競争激化のため値下げを繰り返してきたマスク氏だが、過去には広告に批判的だったことでも知られており、広告が「嫌いだ」とツイートしたこともある。
だが、そんなマスク氏の豹変ぶりに対し、株主総会の出席者からは大きな歓声が上がり、その多くが立ち上がって拍手を送った。「あれほどの熱狂は予想外だった」とマスク氏は語り、皮肉交じりにこう付け加えた。「行間を読むなら、というとまるで一株主のようで微妙だが、テスラはおそらく広告を出稿するだろう、と言っておこう」
マスク氏は、テスラには「人々が知らない驚くべき特徴と機能性」があると指摘した上で、こう付け加えた。「ツイッターにはすでにテスラのアカウントや私のアカウントをフォローしてくれている人が大勢いる。だから、(広告は)ある意味、信者に布教するようなものだ。彼らはすでに十分理解しているのだから」
広告費の多くは、ツイッターに投入される可能性が高いとみられている。ツイッターは、ブランドセーフティの懸念により、アップルなどの広告主が撤退したことで、苦境に陥っている。マスク氏は、いわゆる「言論の自由」や、ドナルド・トランプ前大統領を含む、右派言論人のアカウント停止措置の解除について、社会の分断を招くような発言を行ってきた。
マスク氏は5月11日、ツイッターの新CEOを見つけたとツイートし、翌日には、それがNBCユニバーサルの広告部門責任者リンダ・ヤッカリーノ氏であることが明らかになった(この人事は業界の一部に感銘を与えた)。
マスク氏は株主総会の中で、ツイッターと新CEOについてこう語った。「一時的な混乱はあったが、それはツイッターの存続のために大手術をしなければならなかったからだ。だが今、ツイッターは安定した状態になったと思う。リンダ・ヤッカリーノを迎え入れることができたことに、とても興奮している」
「リンダはツイッターの経営でも素晴らしい手腕を発揮すると思う。私は技術開発のガイド役を務めるつもりだ」
「もちろん、これはツイッターの総会ではないのだが、大事なことは、私はもうツイッターに時間を割く必要がないと感じているということだ(中略)ツイッターは、過去6カ月と比べても、より短い時間で前進を始めるだろう」