短期旅行者に宿泊先を提供できる住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月に施行され、エアビーがはじめての大々的な広告キャンペーンを開始した。
「いろんなわが家に旅しよう」とうたったこのキャンペーンは、エアビーの知名度と民泊のイメージ向上を図るもの。
媒体はテレビやオンライン、ソーシャルメディア、印刷物、そしてアウトドアメディアなど。東京・六本木ヒルズのような人通りの多い場所にはポスターが掲げられる。そこで描かれるのは、家族やカップル、友人同士など様々な旅行者が宿泊施設を楽しむ様子。テレビ広告ではプール付きの豪邸から囲炉裏のある日本の伝統的家屋まで、幅広い宿泊先が選べることをアピールする。更に、「#じつはエアビー」というハッシュタグのフィーチュアも。
エアビーは世界市場でワイデンアンドケネディ(W+K)と協働するが、日本では電通とも契約。このキャンペーンのクリエイティブはW+Kが担当した。
日本での民泊への理解は、同レベルの先進国に比べるとまだ進んでいない。都会で生活する若者層には受け入れられても、一部の層は依然否定的なイメージを持つ。楽天のような日本企業が民泊事業に参入しているにもかかわらず、その浸透は容易ではない。
民泊新法の施行に伴い、エアビーは早々に挫折を味わった。政府は無資格の宿泊施設が自治体に許可申請している間の営業を認めなかったため、膨大な宿泊予約をキャンセルせねばならなかったからだ。同社の登録物件は大きく減ったが、「時間をかければその数は回復できる」と見込む。
日本はホテル不足だが、空き物件が多い。そのため政府も民泊を渋々承認したかたちだ。エアビーの強力なライバルには楽天のほか、ブッキングドットコムが挙げられる。同社はホテルに加え、民泊事業でのブランド確立も目指している。
Campaignの視点:
ブランドが日本で信用を築くためには、テレビなど従来型のメディアが極めて重要だ。こうした大規模なキャンペーンは、エアビーが「新し物好きのためのニッチ・ブランド」からメジャーな旅行会社へと変貌を遂げるために効果的だろう。
このキャンペーンでは、様々な旅の選択肢が魅力的に描かれる。旅先でホストと時間を共有することは比較的知られているが、快適な一軒家も丸ごと借りられる −− そうしたメッセージも十分に伝わる。
この業界最大の課題は、登録物件を増やすことだ。そのためには認知度を高めることが必須。将来ホストとなり得る地方に住む多くの人々は、自分たちの持つ物件をオンラインで登録して活用できることをまだ知らないように思える。こうした注目度の高い作品は、彼らへの訴求という意味で有用だろう。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)