ブランドを革新することを恐れる必要はない。リブランディングは、リスクばかりではなく、大きなチャンスをもたらすものだ。
そもそも、ブランド戦略とは何だろうか。簡単に言えば、これはブランド構築のための計画だ。戦略を立てることで、誰が(who)対象で、何を(what)実施するか、そして最終的には消費者がそれを大切に思う理由(why)を定義することができる。その上で、どのように自社の価値と目的の整合性を管理するか、どのチャネルを通じて伝達するのが適切か定まってくる。
戦略は、ブランド目標の境界線を明確にする。具体的には、競争市場の中で自社ブランドが現在どの位置にいて、将来どこを目指すのかといったことだ。そうした境界線を明確にすることで、ブランドは目指す場所にまっすぐ向かっていける。
ブランド戦略はまた、ストラテジストとクリエイターによる真のコラボレーションの産物でなければならない。作家のマーティ・ノイマイヤー氏が言うように、「ブランドは、ロジックがマジックに出会う場所」だ。戦略立案なんてできないと思っているクリエイターもいれば、クリエイターは単に何かを魅力的に見せるだけだと考えているストラテジストもいる。しかし、実際には両者は相互に作用しており、どちらかが欠けてもブランド戦略は成り立たない。
2020年は大きな変革の年となった。大胆な方針転換やグローバルシフトが進んだ1年を経て、変化はもはや避けられないものとなり、ブランド戦略にも機敏さが求められるようになった。目標と境界線を迅速に定めることに加え、それらの要素を柔軟かつ流動的に捉えて、前進しながら適応し、進化できるようにしておく必要がある。
ニッチを見つける
重要なのはコアバリューであり、それを定義し、顧客に伝える必要がある。またブランド価値を明確にすることで、ターゲットオーディエンスやアピールしようとする相手が誰なのかがはっきりする。まずは、自社のブランドが誰のために存在し、何を信じ、なぜ存在しているのかを知ることだ。それによって自社ブランドの社会的目的を認識することができるだろう。
このような原則を完全に理解すれば、誰にリーチして何を訴求すべきなのかを判断することができる。それは、ターゲット層がそこにいるからという理由だけで、彼らに訴求すべきではない理由でもある。本当にあなたのブランドに共感し、一緒にコミュニティを築いてくれるようなオーディエンスにリーチすべきなのだ。
トーン・オブ・ボイスを設定する
トーン・オブ・ボイス(TOV)の設定は極めて重要だ。TOVは、ブランドを構成する要素でもあり、ブランドを取り巻くすべての要素でもある。ブランドアーキテクチャとコアバリューに根差し、どのように顧客に語りかけるのかを決定するものとなる。
TOVはまた、誰が(who)、何を(what)、なぜ(why)という3つのWのレファレンスポイントとしても機能する。ブランド戦略とTOVを一旦決定しても、常に見直すことを怠ったり、専門家やチームのメンバーがそれをどのように利用しているかを注視していなければ、大きく軌道を外れることにもなりかねない。TOVが、社内であれ社外であれ、人々に語りかける方法や行動のあり方も決めることになる。
ブランドの中心となるものを定めることは、ブランドの根幹を支えることに繋がりとても重要だ。これは小規模なブランドやスタートアップにとっていっそう重要だ。というのも、彼らは機敏さを重視するあまり、さまざまなマーケティング活動で十分に注意を払うことなく、矢継ぎ早にソーシャルメディアに投稿したりプロモーションを展開したりする傾向があるからだ。重要なのは、なぜそのブランドを立ち上げたのかという原点に立ち返ることだ。自らに忠実であり続けよう。
メッセージは重要だ。人は言葉の力を過小評価しがちだが、言葉はブランドイメージを左右するだけでなく、ブランドイメージを各プラットフォームでどう調整するかにも関わる。もちろん、メッセージには機敏さが求められるが、そこには一貫性と関連性が必要だ。
変化を受け入れる
勇気とリスクには大きな違いがある。ブランドの革新や全面的なリブランディングをすでに考えているのなら、その取り組みはリスクではない。もし「変化すべきか、適応すべきか」と自問し検討しているのなら、すでに自社ブランドに行き詰まりを感じているということだ。つまり、すでにブランドの見直しのタイミングであり、ブランドをさらに前進させるために何かをしなければならないことに気付いているということだ。
適切な考えやブランド戦略がある場合は、進化することをリスクと見なしてはいけない。勇気ある一歩は、ブランドを差別化して期待以上のレベルに引き上げる。そして、それには適切なスペシャリストチームとの協力が必要だ。リブランディングをリスクと見なすべきではない。動かないことの方がリスクなのだ。他のブランドが消えていくなかで、あなたのブランドを際立たせよう。勇敢なブランディングを受け入れ、自分が何者なのか、自社のビジネスやサービスで訴えるものは何かをしっかりと認識しよう。
リサ・M・ヘイスティングス氏は、SGKシドニー支社のグローバルクリエイティブディレクター。