Shauna Lewis
2024年10月11日

マーケティング支出には誰もが「懐疑的」:ユニリーバ元CFO

「メディア環境の断片化とコスト構造の変化で、支出の正当性を証明することが難しくなっている」と元CFOは語る。

(左から)Campaign UK編集長のギデオン・スパニエ、キース・ウィード、グレアム・ピトケスリーの各氏
(左から)Campaign UK編集長のギデオン・スパニエ、キース・ウィード、グレアム・ピトケスリーの各氏

先週開催されたCampaign Liveで、ユニリーバ元CFO(最高財務責任者)のグレアム・ピトケスリー氏は、「マーケティング支出を投資家に納得させることが難しくなってきた」と語った。 

ユニリーバ元CMO(最高マーケティング責任者)のキース・ウィード氏と登壇したピトケスリー氏は、CMO と CFO との関係性について言及。ウィード氏は「相互尊重の精神が基本」と語り、「我々マーケティングチームが予算を賢明に使っていないと(ピスケトリー氏が)考えていたら、あのような活動はできなかったでしょう。我々はインハウスやメディアリレーションズで、大胆なアプローチを行ってきましたから」 

「彼が財務を賢明に仕切っている限り、我々は彼を批判することができない。同様に、我々が賢明なマーケティング活動をしていれば、両者は協力し合って良い関係を築くことができる」 

またピトケスリー氏は、10 年近いCFO在職期間中に、「マーケティング支出を正当化することが全ての当事者にとって難しくなった」と語った。 

「CFO やマーケティング担当者、誰にとっても難しい問題になった。それは誰もが、広告プロモーション費用やマーケティング支出を支出全体の割合で見ているからです」 

「投資家からすれば、メディアの断片化が進み、それに伴ってコスト構造が大きく変わったということになる」 

「残念なことに、それによる経済的課題は多く、じっくり時間をかけて理解しようとする人が減ってしまった」 

ピトケスリー氏はCFO在任中、マーケティング支出を皆に納得してもらうため、財務部門のスタッフにバイロン・シャープ氏(南オーストラリア大学教授、マーケティングサイエンスが専門)の著書『How Brands Grow(邦題:ブランディングの科学〜誰も知らないマーケティングの法則11、朝日新聞出版)』を読むよう指示したという。

ウィード、ピトケスリー両氏の在任中、ユニリーバは困難に直面した。同社はクラフト・ハインツからの1150億ポンドに上る買収提案を阻止。だが投資家のテリー・スミス氏は「計画性がない」と公言、ユニリーバはメディア戦略の再構築を迫られた。 

ウィード、ピトケスリー両氏はその際、自社が各ブランド向けのコンテンツを過剰に作っていて、しかも各コンテンツのキャンペーン期間が短く、十分な効果を生んでいないことに気付いたという。 

「十分に活用されていた広告が全体の何割だったか、明かすのは控えます。本当に恥ずかしい数字なので……」とピトケスリー氏。 

「広告はマンネリ化させたくない。でも、キャンペーン期間は十分とるべき。そうでないと、広告を見るのは結局あなたやあなたの両親、兄弟や友人だけになってしまう。不十分なメディア支出では一般の消費者に伝わらないのです」とウィード氏。 

ユニリーバの経営陣はその後、「変革を強いられた」という。ウィード氏はピケスリー氏を「真の天才」と称える。「支出を増やせば成長でき、成長して大規模化すれば企業は前進していく −− その信条を彼は体現してくれました」 

提供:
Campaign UK

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