広告におけるジェンダーのステレオタイプな表現を撤廃するため、2016年に取り組みを開始したユニリーバ。同社は6月15日、イニシアチブの第2段階である「Act 2 Unstereotype(アクト2アンステレオタイプ)」を立ち上げた際、自社の広告の98%が「アンステレオタイプ」になったと発表した。
しかし、最高ブランド責任者兼最高エクイティ・ダイバーシティ・インクルージョン責任者のアライン・サントス氏によれば、マーケティングの世界全体を広く見渡せば、ステレオタイプからの脱却にはまだ程遠い状況なのだという。
サントス氏はCampaignの取材に対し、こう説明した。「私が言うアンステレオタイプとは、まず第一に、それが社内の判断ではなく、消費者が我々の広告に対して下した外部からの判断だということだ。それはすべての広告に対し当社が行った事前調査に基づいている。事前調査では、広告の登場人物が、現実社会と一致しているか、先進的に見えるか、感性を刺激されるかなどを消費者に質問する。消費者はイエスと答えることもあれば、ノーと言うこともある」
この問題に関してユニリーバは高い目標達成率を実現しているにもかかわらず、サントス氏は次のように指摘する。「当社は、400ものブランドを持つ巨大企業ではあるが、当社が広告市場全体ではない。あらゆる人々を表現するという点において、広告市場はまだ大きく出遅れているので、これは時間のかかる活動になると思う」
サントス氏はCampaignの取材を受ける前、カンヌライオンズのライブ配信で、最高デジタルマーケティング責任者のコニー・ブラームズ氏とともに、日用消費財(FMCG)大手であるユニリーバが計画している3つの新しいマーケティングアプローチを概説した。
「現実に目を向けると、大半の人はブランドや広告のことなど気にしていない」と、サントス氏はセッションの中で指摘した。「多くの人は広告の登場人物に自分を重ね合わせることさえない」
サントス氏によれば、マーケターは、消費者から効果的にエンゲージメントを獲得するために、「3つのことを正しく行う」必要があるという。
「第1に、現実に目を向けること。データと共感を組み合わせ、私たちの世界の核心に迫り、現実の人々のために現実の問題を解決しなければならない」
「第2に、善い行いをすること。私たちは世界に善い影響を与える存在になるべきだ。ブランドの力を用い、社会や環境にリアルでポジティブな変化をもたらさなければならない」
「第3に、見逃せない存在になること。自社のブランドが真っ先に頭に浮かび、真っ先に見つけられるようにしなければならない。つまり、クリエイティビティとアクセスのしやすさを重視する必要があるということだ」
第2の「善い行いをすること」について、サントス氏は、ユニリーバが社会問題にポジティブなインパクトを与える企業になることを望んでいると説明する。
サントス氏はCampaignにこう語る。「私たちが今直面している問題を見渡たせば、経済危機、健康危機、あらゆる平等の危機の只中にある。政府やNGOが問題を解決するのを期待していたら、一生待っても何も起こらないだろう。だからこそ、民間セクターが介入するのだ。当社は本物の変化をもたらす力があるブランドを擁している。広告を出すことで、文化を形成し、美しい未来像を描くことができる」
「想像してみてほしい。社会問題を解決し、進歩的でポジティブな未来像を描くため、ユニリーバが400のブランドと当社製品を毎日使用している25億もの人々の力を結集したらどうなるだろう。私たちは「善い行いをする」ということをフィロソフィーとし、これまで以上に消費者を重視するだけでなく、生活全体の中で人々を尊重するということに回帰していく」
サントス氏によれば、ユニリーバは、制作会社、代理店を含む広告サプライチェーン全体の中で、同社の価値観に合うパートナーを選ぶことを重視しているという。
「当社はより良い社会、より良い世界のために尽力しているチャネルを選ぶようにしている」とサントス氏は言う。「ビジネスを善のために使うという点で、当社と同じ考えを持つパートナーを選択することは極めて重要だ」
サントス氏は「見逃せない存在」になるということについても言及し、「創造性を最大限に発揮し、テレビであれ、デジタルであれ、店頭であれ、人々が絶対に見逃さない」方法でマーケティングを行うことが大切だ、と言い添えた。