スウェーデンのストックホルムを拠点とする音楽ストリーミングのスポティファイが、長年にわたる各音楽レーベルとの交渉の末、10月に日本でのサービスを開始。課題は日本のアーティストの楽曲が十分に揃っていないことだが、広告モデルでユーザーに無料でサービスを提供、精彩を欠く多くの競合他社よりも明らかに優位に立っている。業界関係者は同社の将来を楽観視しており、電通はスポティファイが「デジタルオーディオ広告のパイオニア」になることを期待し、提携関係を結んでいる。
インターネット通販などを手がける大手テクノロジー企業の楽天。11月、競合するアリババやアマゾンを退けて、世界的人気を誇るスペインのプロサッカークラブ「FCバルセロナ」のメイン・グローバルパートナーの座を獲得した。これはナイキと並ぶもので、契約金は2億6,000万米ドル。同クラブ初のグローバルイノベーション・アンド・エンターテインメントパートナーも兼ねる。このスポンサーシップ契約は、楽天がグローバル・プレイヤーに躍り出ようという野望の表れと言える。しかし、どのスポンサーシップにも共通することだが、その価値を引き出せるか否かは今後ブランドがどのようにアクティベートするかのほぼ一点にかかっている。楽天はFCバルセロナのファンに、「これまでスポーツの世界では考えられなかったような革新的サービスやエンターテインメントを提供していく」と約束している。
2月、博報堂DYホールディングスの国際的戦略事業組織「kyu」が、世界的に知られる米国シリコンバレーのデザイン/イノベーション会社「IDEO(アイディオ)」に出資。ブランド構築の先進的手法をグローバルに開発していくためだ。この出資は業界の動向を如実に反映しており、ブランドにとってデザインの重要性がますます高まっていること、さらには広告代理店とデザイン会社、デザイン領域に積極的投資を行うマッキンゼーのようなコンサルティング会社との間で競争が激化していることを物語る。
東京を拠点とするAOI Pro.とティー・ワイ・オー(TYO)は、2017年1月に共同持ち株会社「AOI TYO Holdings」を設立する。両社とも海外での事業拡大に意欲的で、ブランドや広告代理店との直接的なインターアクティングをはじめ、動画や仮想現実(VR)、拡張現実(AR)などの新サービスの導入でアジア市場における互いの成長を支え合っていくという。加えて、AOI Pro.がVRコンテンツの商業化に向けてシリコンバレーに進出したことも注目すべきニュースだった。
原宿を拠点とする独立系クリエイティブエージェンシーのウルトラ・スーパー・ニュー(USN)が初めて国外に進出、5月にシンガポール・オフィスを開設した。同社は小規模ながら日本国内での評価は高く、レッドブル、ハイネケン、ナイキ、アシックス、ミニといったブランドを手がけている。今後は東南アジア市場における日本企業の支援を行っていく予定。小規模代理店が国外を目指すケースはほとんどなく、同社のシンガポール進出は野心的かつ明るい材料だ。シンガポール・オフィス開設にあたり、同社はその基本的精神に沿って、冒険的試みを受け入れてくれるクライアントの仕事だけをこなしていくと明言している。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:水野龍哉)