Ryoko Tasaki
3 時間前

世界マーケティング短信:化石燃料企業との取引がリスクに

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

ハヴァス・メディア・ネットワークは昨年、シェルのメディアアカウントを獲得した
ハヴァス・メディア・ネットワークは昨年、シェルのメディアアカウントを獲得した

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

ハヴァス、化石燃料企業案件のリスクを目論見書に記載

ヴィヴェンディ(Vivendi)傘下のハヴァス(Havas)は投資家などに向けた目論見書の中で、化石燃料企業をクライアントとして獲得したことにより「否定的な評判」に直面しており、今後も続く可能性があると説明した。「倫理、環境、社会、ガバナンスに関する考慮事項についてステークホルダーの期待に応えられず」、事業や業務などに重大な悪影響を及ぼす可能性があるという。

目論見書によると、同社の顧客基盤は幅広く、「化石燃料、防衛、たばこ、アルコール部門」なども含む。そして「一般の人々(あるいはその一部)から環境に有害であると見なされている、またはその他の理由で否定的に認識されている特定の業界やセクター」の事業を行うことにはレピュテーション低下のリスクがあり、さらには「圧力を受ける可能性もある」としている。

傘下のエージェンシーであるハヴァスメディア(Havas Media)は昨年、シェル(Shell)をクライアントとして獲得。目論見書の中ではクライアント名を挙げていないが、このことが原因で、米非営利団体から環境や社会に配慮した企業に与えられる「Bコープ認証」を今年7月に失ったと報告。「この喪失が業績に重大な悪影響を及ぼしたことはない」ものの、「著しい悪評やレピュテーション低下を経験した」と記されている。レピュテーション低下は「顧客、従業員、サプライヤー、その他パートナーを引き付け、維持する能力に悪影響を及ぼす可能性がある」とも説明する。

Bコープ認証の資格喪失には、クリーン・クリエイティブス(Clean Creatives)など環境保護団体が関与している。シェル獲得への批判を受け、Bコープ認証の運営団体はハヴァス傘下の4つのエージェンシーの認証を取り消す決定をした。

ピンタレスト、年末商戦は売上低迷が続く見通し

ピンタレスト(Pinterest)が第3四半期の業績を発表し、売上高は8.98億米ドルで前年同期比+17.7%だった。月間アクティブユーザー数は5.37億人で、前年比で11%増加。純利益は前年同期比+354%と驚異的な伸びを示した。

だが年末商戦の売上は低迷する見通しだ。同社のジュリア・ドネリーCFOがアナリスト向けの電話会議で語ったところによると、食品・飲料業界の広告主からの需要が引き続き低迷しており、この傾向は年末まで続くと予想している。

総経費は9.04億米ドル(同+17.7%)と増え、その多くはAI開発と統合にかかる追加コストによるものだ。同社は今年10月、AIと自動化機能で広告の効果向上と効率化を実現する「Performance+スイート」の提供を開始。ターゲティングや予算管理、入札価格決定の最適化を自動化できるものだが、「まだ導入の初期段階にあり、多くの広告主がホリデーシーズンのピーク期間の予算シフトや、新機能の導入を制限しています」とドネリー氏は語った。

X、対話型AIの無料版を一部市場でテスト

Xが昨年11月から有料会員向けに公開したGrok(グロック)を、一部の地域で無料版のテストしているようだ。複数のアプリ研究者やユーザーによるソーシャルメディア上への投稿で明らかになった。

Grokはイーロン・マスク氏が設立したxAI(エックスエーアイ)が開発した対話型AI。今年8月にはリアルタイム情報の統合や画像生成、推論などの能力を備えた「Grok-2」と「Grok-2 mini」をリリースしている。

投稿によると無料版Grokの利用には、開設から7日以上経過し、電話番号が紐づけされているアカウントが必要だ。また無料版では、質問の回数や画像分析に制限が設けられている。

全てのユーザーが無料版を利用できるようになると、ChatGPT(オープンAI社)やGemini(グーグル)といった競合のAIに対抗することになりそうだ。

 ガムガム、IDに依存しない広告の新プラットフォームを発表

コンテクスチュアル広告(文脈に基づく広告)を提供するガムガム(GumGum)が、コンテキスト、アテンション、クリエイティブのプロダクトラインを「ガムガムプラットフォーム」に統合した。プライバシーを尊重しながら、より関連性の高い広告体験を提供していく。併せて、AIを搭載した独自の予測データエンジン「マインドセット・グラフ」も発表。ブランドに合ったコンテキスト、トピック、キーワードをリアルタイムで特定し、消費者のその瞬間の興味や関心に合った広告をマッチングする。

「従来のIDベースのターゲティングは、データに依存するばかりでインサイトが不足しています」と、CEOのフィル・シュレーダー氏は指摘する。IDベースの広告に対する信頼が薄れ、消費者は過度なターゲティングや関連性の低い広告に疲弊。こうした広告はブランドイメージを高めるどころか悪影響を与え、広告ブロッカー利用の一因にもなっている。「我々は、ユーザーのオフラインでの行動履歴を追跡することなく、デジタル空間で消費者と広告との『真のつながり』を築けることを証明しています」。

【お知らせ】

アジア最大級の広告の祭典「スパイクスアジア2025」の、各部門の審査委員長12名が発表されました。なお、エントリーの最終締切は2025年1月28日です。詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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