「Driven by intuition(=直感)」と題されたこの60秒の動画は、来年市場に投入される新型レクサスES(日本では既に発売)のプロモーションだ。ヒトとコンピューターが協働してドライビングエクスペリエンスを向上できる、というメッセージを表すもの。
更にレクサスESの直感的ドライビングエクスペリエンスを広告で表現するため、ヒトとコンピューターが協働 −− AIによるアプローチにはそんな発想がある。
ストーリーを具現化したのは映画「ラストキング・オブ・スコットランド」「ホイットニー」で知られ、米英でアカデミー賞を獲得したケヴィン・マクドナルド監督。
この動画は11月18日、ロンドンのソーシャルメディアウィークで初上映された。翌19日からデジタルやソーシャルメディア、欧州各地の映画館などで公開されている。
動画は、研究所に鎮座する完成したESのシーンで始まる。これから衝突安全テストに送られるESを思い、涙を浮かべるエンジニア。
心臓の鼓動を思わせるBGMが緊張感を高め、最後のシーンではESが無事に衝突テストを乗り切る。
「このストーリーにはスタッフ一同、本当に驚きました。ある種の完璧なロジックが表現されている」とマクドナルド氏。
ストーリーはプログラミングされたAIが作成。プログラミングを手がけたのはテック会社ビジュアルボイス(Visual Voice)で、IBM「ワトソン」のツールやアプリケーションのサポートを受け、ロンドンのザ・アンド・パートナーシップ(The & Partnership)社と協働した。動画制作はカーニッジ・フィルムス(Carnage Films)。
AIには過去15年間で広告賞を受けた高級品のCFや、視聴者の心を最も捉える感情的知性、人間の直感に関するデータなどをインプット。こうした「トレーニング」でプロジェクト専用のAIを開発した。
レクサスのゼネラルマネジャー、マイケル・トリップ氏は今後のテクノロジーの活用について、「情報に基づいた判断を下す上で重要な鍵になる」と話す。
「これは我々にとって試験的な取り組みです。今回、これまで学んだことを進歩のために活用できたのが大きなメリット」
「我々はエクスペリエンスのパーソナラズ化を強く望んでいます。AIの潜在性は、まさにそこにある。クリエイティブに何が必要か、どうメディアで活用するべきかといった決断をサポートしてくれます。ゆえにコミュニケーションの上で、非常に有意義だと考えています」
レクサスがイノベーティブなテクノロジーを活用するのはこれがはじめてではない。2015年には「Amazing in motion」のシリーズでスケートボーダーのロス・マクゴランをフィーチュア、彼がホバーボードでレクサスの上をジャンプするオンライン広告を公開している。
マッキャン日本法人のクリエイティブプランナーである松坂俊氏も、2015年にAIクリエイティブディレクターを開発。だがこの際は、クライアントがアルゴリズムデザインの初期段階から関与している。
(文:マグダ・イブラヒム 翻訳・編集:水野龍哉)