CMOの取り組み:ダイナミックなAPACのマーケティングリーダーへの9の質問、その考え方やパーソナリティを明らかにする。 あなたも参加してみませんか? |
ブランドの評判を築くには長い年月を要するが、壊れるときは一瞬だ。そして、マーケターはみなその重さを十分理解している。したがって、日本を代表する愛すべきビールであり、アジアのバーやレストランの定番となっているアサヒビールが、1987年のスーパードライ登場以来の刷新を決意したとき、それは高いリスクを伴うものだったはずだ。この刷新はグローバルに展開され、リブランディングはロゴの変更にとどまらず、フラッグシップビール「スーパードライ」の製法の変更にまで及んでいる。
激しい競争と市場シェア減少の中、アサヒはこの取り組みを通じて、売上の向上や国際展開の拡大を目論んでいる。アジアでこの施策をリードしているのは、マーケティングディレクターであるロレッタ・リー氏だ。Campaignのインタビューで、彼女はアサヒブランドの未来や、ダイナミックな変革、ビール文化の健康志向へのシフトについて語った。またリー氏は、停滞するビール市場で窮地に立つアサヒブランドの課題や機会についても率直に語っている。競争の激化と市場シェアの減少に直面する中でも、アサヒビールは来年、売上を16%以上増加させ、失った地盤を取り戻す飛躍的な成果を見込んでいる。
インタビュー全文は以下の通り。
1. 今現在、アサヒビールにとって最大のマーケティング課題は何ですか?3つ挙げてください。
1つ目は、停滞しているビール市場において、二桁の成長を維持していくことです。つまり、プレミアムビール市場で競合他社との差別化を図り、既存市場でもシェアを拡大するための、革新的かつ有意義な方法を見つけ出す必要があるということです。
2つ目は、世界を舞台にブランドを展開していくことです。日本国内でアサヒスーパードライのトップブランドの地位を維持しながら、そのプレゼンスと認知度をグローバルにも拡大していくことが私たちの課題です。これには、私たちが国際的なマーケティング活動(例えば、シティ・フットボール・グループとのグローバルパートナー契約など)に継続的に投資し続け、それによって国際的な認知度を高め、各国の多様なオーディエンスとエンゲージメントを深める必要があります。
そして3つ目は、新たな飲酒の機会を開拓し、新たな消費者層を獲得するためのイノベーションです。私たちのブランドは、新たな消費者を引きつけ、新しい飲酒機会を創造するために、革新し続ける必要があります。これには、飲料業界全般における、新たな消費トレンドや、嗜好、行動の変化などを発見することが含まれます。
2.アサヒブランドにとって最大のチャンスは何ですか?3つ挙げてください。
1つ目は、プレミアムビールへの興味関心が高まっていることです。独特で高品質な飲料体験が求められているためで、消費者の間ではプレミアムビールとクラフトビールへの関心が急速に高まっています。私たちもそれに呼応して、アサヒの職人技、品質の良い原材料、そして独自フレーバーの創出に焦点を当てています。
2つ目は、世界的な注目を浴びるパートナーシップの存在です。パートナーと戦略的に協業することで、ブランド認知を大幅に向上させ、市場の範囲を拡大することができます。我々は既に、エティハド・スタジアムや世界中の他の競技場で、バーを設置するなど、ファンの体験をプレミア化することに投資しています。
3つ目は、アジアのビール市場が大きく成長していることで、私たちもワクワクしています。2022年には、中国本土がアジアのビール事業の半分を占めていました。中国の人々の可処分所得の増加、都市化の進展、消費者の好みの変化などを考え合わせると、まだまだ収益を高める機会があります。
3.どの分野の投資を増やしていますか?もしくは削減していますか?
イノベーションに費やす予算を増やしています。他では体験できないユニークな商品を消費者に提供したいという思いがあるからです。アサヒスーパードライのシンガポールでのリブランドでは、「工場見学ツアー」での写真撮影やアサヒスーパードライと料理を組み合わせた試食会、ライブで音楽が楽しめるビアガーデン、テイスティングマスタークラスでの試飲会など、さまざまなポップアップイベントを行いました。
そしてイノベーションと言えば、最近、最も成功した新商品は、当社独自の発明で、賞を受賞した「生ジョッキ缶」でしょう(以下、参照)。この新商品は韓国で大ヒットし、現在は香港、シンガポール、台湾でも展開中です。この缶には、開封すると自然に微細な泡が生み出される、特別な内部コーティングが施されています。消費者はこの缶ビールで、バーやレストランで提供されるグラスの生ビールと同じ味わいを楽しむことができます。
4.アサヒビールが標榜している持続可能な事業のうち、読者にもわかりやすい一例を挙げてください。
私たちは、世界中で賞賛され、最も人気のあるビールブランドのいくつかを保有しており、誇りを持って商品を生産しています。グループのサステナビリティ目標に合わせて採用した主要なステップの1つは、醸造所での廃棄物をゼロにすることです。日本のすべての生産施設では、製造時の副産物と廃棄物を100%リサイクルしており、将来も引き続き副産物と廃棄物を100%リサイクルすることを目指しています。また、日本のすべての生産施設では、電力の100%に再生可能エネルギーを使用しています。
5.職場文化において、ビール業界が変わらなければならないことは何ですか?
持続可能性にもっと目を向けるということでしょうか。私たちは持続可能な健全な地球の維持にもっと貢献すべきだし、変わりつつある健康志向にも、もっと対応していくべきでしょう。
6.メタバースのトレンドを追いかけることは、アサヒブランドに相応しいと思いますか?
私たちは、新しいトレンドを受け入れることに賛同しています。メタバースには、私たちも注目しており、すでにいくつかの実験も行っています。
提携チームであるマンチェスターシティの公式トレーニングキットの発表を記念して、スター選手たちが独自のARフィルターを使用して新しいトレーニングキットを紹介するという、ソーシャルメディアキャンペーンも行いました。
また最近では、今年3月に迎えたアサヒスーパードライの36周年を祝して、アサヒスーパードライのNFTカードコレクションを全世界に向けてローンチしました。これはアサヒグループがNFTマーケットに世界規模で進出した初めてのケースでしょう。
メタバースは進化し続けています。アサヒスーパードライが消費者とのエンゲージメントをさらに深められるよう、現代の日本の没入型体験を生み出す機会を今後も模索していくつもりです。
7.「現代のCMOは必ず・・・」の文を完成させてください。
「社内起業家であるべき」です。私たちはクリエイティブなアイデアを表現するだけでなく、商業的な成功も収めなければなりません。共通のビジョンに向かって努力し、メンバーを鼓舞し続ける力が必要なのです。
8.ご自身はどのようなマーケターですか?3つの形容詞を使って回答してください。
誠実であり、未来志向で、共感的なマーケター、です。
最近行われた、現代の日本を紹介するブランドツアーに参加したリー氏
9.何か悩み事がありますか?
成果を向上させるために、これまでとは違う他のどんな手法があるだろうか、ということです。私は、業績向上のために、マーケティング戦略、手法、キャンペーンを改善する方法を常に探し続けています。そのためには、学びつつけること、イノベーションを推進する文化を受け入れることが重要です。私にできることは、オープンかつ機敏に動き続けることだけなのです