数年にわたる破竹の快進撃を経て、動画ストリーミングサービスのNetflixは今、困難に直面し、その先駆的なビジネスモデルからの転換を図ろうとしている。過去10年で初めてユーザーが減少し、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるリード・ヘイスティングス氏は決算発表後の会見で、広告付きプランの導入によるテコ入れを検討しているとアナリストらに語った。
Netflixは2022年第1四半期に20万人の利用者を失った。同社は当初、ストリーミング業界の競争が激化するなかでも、250万人の新規ユーザーの獲得を想定していたが、この成長の鈍化がすぐに改善される見込みはなく、同社は、第2四半期には最大200万人ものユーザーを失うと予測している。Netflixは、昨年の第2四半期には400万人の新規利用者を獲得していた。
ヘイスティングス氏はアナリストらに対して「価格帯を拡げる方法のひとつは、ローエンドプランに広告モデルを導入し、広告によるさらに安価な価格帯を設定することだ」と語った。「低価格を希望していて、広告があっても構わないという消費者に、希望どおりのものを提供することは理にかなっている。そこで現在、我々はこれについて真剣に検討している」
「消費者のための選択肢」として、「Netflixは今後1~2年をかけて、広告付きの低価格サービスモデルを試行し、低料金プランを前提とした収益計画を作り上げていく」と、同氏は付け加えた。
Netflixは株主に宛てた書簡のなかで、アカウントの共用が「一般家庭に広く浸透」していることや、競合との競争が激化していることなどが、「収益拡大の逆風」になっていると説明している。付け加えるなら、パンデミックによる加入者の急増も、徐々に頭打ちとなってきており、Netflixは成長の停滞期に入ったのかもしれない。
Netflixは「2億2200万の正規の有料視聴世帯に加え、約1億世帯がアカウントの共有によってNetflixを視聴している」と推定している。同社は、すでにアカウント共有による売上ロスへの対策に動いており、2022年3月には、新たに2タイプの視聴共有機能が追加され、ユーザーは後から、視聴世帯を有料で追加できるようになった。このプランは現在、ラテンアメリカの3市場で利用が可能だ。
全体的な加入者の減少によって、Netflixのユーザー基盤は2021年第4四半期の2億2180万人から、2億2160万人へと落ち込んだ。ただし同社は、ロシアでのサービス停止によって、70万人の加入者が失われたとしており、これを差し引けば、結果的には、今四半期は50万人の加入者増だったとしている。
新たな成長の機会を模索する一方で、Netflixは、引き続きグローバル市場と多国籍のコンテンツこそが、同社の要であるとしている。例えば、Netflix史上もっとも高い人気を誇るドラマ6作品のうち、3作品(『イカゲーム』『ペーパー・ハウス シーズン4』『今、私たちの学校は...』)は非英語圏のものだ。また、日本、インド、フィリピン、タイ、台湾などのアジア太平洋地域(APAC)では、「順調な成長」が続いているとしている。
さらに、誤解のないよう付記しておくと、Netflixの第1四半期の売上は、前年比9.8%増の78億6800万ドル(約1兆9億円)で、営業利益は、0.6%増の19億7200万ドル(約2509億円)だった。地域別の売上で見ると、最大市場は米国およびカナダ(同社の区分ではUCAN)であり、同地域の売上も、前年同期の31億7100万ドル(約4034億円)から33億5000万ドル(約4262億円)へと増加している。
ただ、有料登録者数は、新規に100万人が加入したAPACを除くと、他の全ての地域で減少している。全体としては、APACがもっとも大きく成長しており、今期の売上は、前年同期の7億6200万ドル(約969億円)を20%以上も上回り、9億1700万ドル(約1167億円)を記録した。