WPPは第3四半期の売上高が0.5%増となり、「確かな成長」(同社)に転じたことを発表した。第1四半期は2.8%減、第2四半期は1.4%減で、4四半期連続の売上減少には終止符を打った。
傘下の調査会社カンターの売却益(株式60%をベインキャピタルに売却)を含めれば、今期の総売上高は0.7%増となる。
更なる明るい兆しは、グループ内でクリエイティブやメディア事業を担う主要グローバルエージェンシーの売上高が全て増加したことだ。
同社スポークスパーソン曰く、「この業績改善の要因は主として北米と、英国を含む欧州にあります。ワンダーマン・トンプソンやVMLY&R、グレイといったエージェンシーが今年上半期と比べて意義ある成長を果たしたことが大きい。VMLY&Rは統合を経て、第3四半期では米国を含めた世界市場で成長を遂げました」。
この結果を受けてWPPの株価は4%上がり、約9.5ポンド(1330円)に。だが、過去半年間の取引でほぼ維持されていた10ポンドは下回り、2017年のピーク時に記録した19ポンドから比べれば半値になる。
WPPは2017年から売上高が落ち込んでおり、今年の売上予測は発表していない。
昨年9月にマーティン・ソレル卿からCEOを引き継いだマーク・リード氏は、「再び成長を達成したことは心強い結果だが、持続的な回復を果たすまでにはまだ紆余曲折があるでしょう」と楽観はしない。
昨年10月、WPPはフォードの米国でのクリエイティブ事業を失った。こうした大口クライアントの損失の影響は、まだこれから出てくると思われる。
今期、北米での売上高は3.5%減。率は和らいだものの、依然減少であることは変わらない。英国は3.1%増、西欧は今年初めて成長を記録して1.7%増だった。
他の世界市場ではインドの15%増など、全体で4%増。だが中国では減少、豪州とニュージーランドは「標準以下」という結果で、アジア太平洋地域は「厳しい状況」だった。
今月10日、ピュブリシスグループは同期売上高が2.7%減だったことを発表し、投資家を動揺させた。WPPの業績回復は広告業界にとって明るいニュースとなろう。
ピュブリシスの決算発表後、オムニコムとインターパブリックは売上高の増加を発表、WPPも両社に続いた形だ。
「過去1年、WPPは断固とした行動を取ってきた」とリード氏。「少数精鋭となったエージェンシー、多くのブランドで誕生した新たなリーダーシップ、各エージェンシーの核となるチームの強化、そしてテクノロジーに裏付けされたクリエイティビティーの深化……様々な分野で意義ある進歩を遂げたのです」。
(文:ギデオン・スパニエ 翻訳・編集:水野龍哉)