Ryoko Tasaki
2 日前

世界マーケティング短信:ピュブリシス、通期見通しを上方修正

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:ピュブリシス、通期見通しを上方修正

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

ピュブリシス、新規事業が追い風に

ピュブリシス・グループ(Publicis Groupe)が第3四半期の決算を発表し、純収益は37億米ドル、オーガニック成長率は+5.8%だった。2024年通期のオーガニック成長率は+5.5%と予想しており、上半期終了時点の+5%という見通しを上方修正した。

CEOのアーサー・サドゥーン氏によると、上方修正の理由は「新規事業への追い風が勢いを維持していること」にあるという。オーガニック成長率を地域別にみると、欧州が+4.9%、北米が+4.7%、アジア太平洋が+6.4%、中東・アフリカが+13.6%、南米が+30.3%だった。

同社はこの夏にインフルエンサーマーケティング大手のインフルエンシャル(Influential)を、そして9月にはコマースマーケティングに特化したマーズ・ユナイテッド・コマース(Mars United Commerce)を買収している。10億米ドルを投資した買収について、サドゥーン氏は「クライアントにとって重要なアドレサブルメディア、クリエイター、コマースの3つの専門分野において、私たちは明らかにリードしています」と述べた。

IPGの業績は横ばい 傘下エージェンシーの売却を交渉中

インターパブリック・グループ(IPG)も第3四半期の決算を発表し、総売上高は26.3億米ドルで前年同期(28.8億米ドル)からわずかに減少した。通期のオーガニック成長率は+1%を見込む。

地域別では、総売上高の変化が米州は+0.0%と横ばい、欧州大陸は+0.6%。英国(-0.7%)とアジア太平洋(-7.4%)での減少分を、中南米(+9.8%)が相殺した。その他地域は+1.5%だった。

IPGは傘下のR/GAとヒュージ(Huge)の売却を予定している。売却先については明らかにしていないが、R/GAの売却についてインドのタタ・コンサルタンシー・サービシズ(Tata Consultancy Services)と交渉を進めているとウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)が6月に報じた。

また同グループは最近、傘下の全てのエージェンシーとクライアントのデータ、メディア、クリエイティブ、プロダクションを統合したプラットフォーム「インタラクト(Interact)」を発表している。アクシオム(Acxiom)のデータを基盤としたもので、最高ソリューション責任者のジェイナ・コタリー氏は「一般的に、マスパーソナライゼーションという考えは現実というよりも願望に近いものでしたが、インタラクトがこれを現実にしてくれます」と説明する。

オンライン動画が日本の映像産業の成長を牽引 MPA調べ

メディア・パートナーズ・アジア(MPA)のレポートによると、日本のオンライン動画が映像産業(地上波テレビ、有料放送、映画など)全体の収益の35%を占めており、2029年までに45%を占めるようになりそうだ。2024年の映像産業全体の収益は318億米ドルで、2029年には341億米ドルに成長すると予測する。

ユーチューブなどUGC(ユーザー生成コンテンツ)やソーシャル動画が引き続き市場を主導し、ネットフリックスなどSVOD(サブスクリプション型の動画配信サービス)、TVerなどAVOD(広告掲載型の動画配信)がこれに続く。アニメーションも依然として活況で、2023年の映像産業の収益の8%以上を占めると推定される。

「受け入れられることこそがプライスレス」 マスターカード他

マスターカード(Mastercard)が、目に見えない障害の認知度向上を目指すキャンペーン「#AcceptanceMatters」を展開している。自閉症に焦点を当てた背景には、同社のDEI(多様性、公平性、包摂性)へのコミットメントがあるのだと、アジア太平洋地域のマーケティング&コミュニケーション担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるジュリー・ネスター氏は語る。

「アジア太平洋地域で包摂性に大きなインパクトを与える方法について分析した際に、世界の6人に1人が障害を持って暮らしており、そのうち最大8割が自閉症や失読症、認知症など目に見えない障害を抱えているというデータに衝撃を受けました。目に見えにくい障害を持つ人を支援する取り組みの一環として、このキャンペーンを実施しています」。

シンガポールのセント・アンドリュース自閉症センター(SAAC)、ひまわり支援ストラップの普及団体「Hidden Disabilities Sunflower」、金融大手のHSBC、不動産大手のフレーザーズ・プロパティー(Frasers Property)と連携したこのプロジェクトは動画や特設サイト、社内向けのイベントや支援といった取り組みを展開。ストーリーテリングやビジュアルを担当したのは、マスターカードの「プライスレス」キャンペーンを手掛けたマッキャン・ワールドグループ(McCann Worldgroup)だ。

「自閉症など目に見えにくい障害を持つ人々にとって、受け入れられることこそが最もプライスレスであるという考えが、最も重要な要素」と語るのは、マッキャン・ワールドグループでアジア太平洋地域担当の最高クリエイティブ責任者を務めるヴァレリー・マドン氏だ。「彼らをありのままに受け入れ、介護者と日々体験していることを理解することで、彼らの人生は本当に変わります」。


 

【お知らせ】

今年で5回目となるCampaign主催「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー・グローバル・アワード」のエントリーが始まりました。詳しくはこちら(英語)

 

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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