買う決断を今すぐにしないと、高級なハンドバッグや靴がとんでもないことに……。イタリア発祥のオンラインショップ「ユークス(YOOX)」がユーチューブで配信する新しいプレロール広告が、買い物客の購買意欲をかきたてる。
「この広告をスキップしたらチャンスも逃げちゃう!」というキャッチフレーズの25秒の動画は「ショッパブル広告」となっており、動画から即購入できる。動画内で商品はレーザーで焼かれたり、プレス機でつぶされたり、溶岩に焼かれて灰になるなど、まわりくどくも愉快な方法で破壊されてしまう運命にある。だが視聴者が15秒以内に購入を決断してクリックすれば、難を逃れられる。
滑稽で狂騒的な広告だが、ユーザーに素早い行動を促す姿勢は本物だ。一度商品が消えてしまうと、そのユーザーは同じ広告をYOOXのサイトで見つけることも、ユーチューブ上で見ることもできないとYOOXは強調する。
悲劇的な結末の直前に映像が終了するので、高級な商品は実際には破壊されてはいないのだろう。また、視聴者がクリックしなかったとしても、次の誰かがその商品を救うチャンスを得られるのだとYOOXは説明する。
この動画広告はYOOXがグーグル、スティンクスタジオズ(英国の制作会社)と共同で制作したもので、米国、イタリア、日本、韓国で12月半ばまで配信される予定。ルーブ・ゴールドバーグ(簡単にできることを、手の込んだからくりで実行する手法で知られる米国の漫画家)を彷彿とさせるアニメーションの制作のため、スティンクスタジオズは独自のリアルタイム・クラウド・レンダリングという技術を用いて、画像と文字情報を統合した。
「Webサイトのパフォーマンスツールを、ブランドキャンペーンに応用できることを、この広告は証明しました。商品認知度向上と購買意欲促進の双方を目指し、購買ファネルの上流から下流までを統合したキャンペーンとなっています」。イタリアのグーグルでファッションと小売部門のリーダーを務めるシモーネ・ズッカ氏はこのように話す。「そして、とても素晴らしい成果を上げています」
Campaignの視点:
広告主やエージェンシーがツールを駆使して、その創造性を進化させていくのを、目の当たりにできるのは嬉しいことだ。テレビ用のCMをプレロール広告に再利用するだけのブランドは依然として多く、真に革新的なものは驚くほど希少だ。その意味で、この広告の機知に富む仕掛けは、他社の手本となるだろう。
とは言うものの、時間内に素早く反応できず、二度と同じ広告を見ることもできないユーザーにとって、逆効果を生じないかという不安もある。希少性をあおる仕掛けがどのような結果をもたらすか、興味のあるところである。
(文:マシュー・ミラー 翻訳:岡田藤郎 編集:田崎亮子)