アップルが、iPhoneユーザーが広告識別子(IDFA)を自ら管理できるように変更してから1年が過ぎた。そうした同社のプライバシー保護施策は、プラットフォーム各社の収益をじわじわと圧迫し始めている。データソリューション企業のLOTAMEは、当初この措置による損失を100億ドル(約1兆2900億円)と見積もっていた。しかし、同社が発表した最新レポートでは、メタ(Meta)をはじめとするSNS大手4社が、今後1年で被る損失は、160億ドル(約2兆700億円)規模に達すると推定している。
かつて、アップルデバイスでは、IDFAトラッキングがデフォルトで有効になっていた。しかし1年前、ユーザーはトラッキング制限機能(LAT)を有効にすることで、IDFAトラッキングをオプトアウトできるようになった。ユーザーがLATを有効にすると、IDFAの文字列は0になる。これによりユーザーIDはブランクとなり、プラットフォームや広告主がトラッキングを行うことが難しくなった。
プラットフォーム各社への打撃に拍車をかけているのは、IDFAの仕様変更だけではない。サードパーティCookieの廃止も迫っている上、グーグルも同社の広告IDソリューション「GAID(Google Advertising ID)」に制限をかけることを計画している。さらに、アップルとグーグルはいずれも、消費者のIPアドレスの特定を困難にする機能の開発にも取り組んでおり、今後トラッキングは一層困難になるだろう。
データブロッキングと、アップルが導入した「ATT(App Tracking Transparency)」のインパクトが、SNS大手4社が被る影響を予測する上で重要な役割を担うだろうと、LOTAMEのレポートは指摘する。LOTAMEは当初、80%のアクセスが全面的にブロックされると予測していたが、この数字を下方修正し、65%のオプトアウト率に落ち着きそうだとしている。
プライバシー保護施策が、プラットフォームビジネスに影響を及ぼすことは、決して予想外だったわけではない。Metaの最高財務責任者(CFO)を務めるデビッド・ウェーナー氏は、2022年2月に行われた2021年度第4四半期決算報告で、すでにこの影響の存在を認めていた。同氏は、「2022年に当社事業が直面するiOSによる全体的な影響は、100億ドルほどになると考えている。これはかなり強い逆風だ」とアナリストに語っている。「その影響は、さまざまな分野に及んでいるが、第4四半期に特に重大な陰りが見られたのは、eコマースだ」
また、LOTAMEの見立てでは、SNS大手各社は、こうした変化に対し、それぞれ異なる対応を見せているという。Metaは、自社のネットワーク内に、広告主向けの個別のウォールドガーデンを構築している。それに対し、スナップ、ツイッターなどは、この変化を乗り切るためにビジネス自体を変容させようとしている。
「Metaは、eコマース、リテール、オンラインストアに注力するため、新たなツールや機能、サポートを導入して、自社システム内で全てのサービスが完結することを目指している」とレポートは指摘する。また、広告配信から、キャンペーン実施、アトリビューション、効果測定までをすべて提供するには、「自前のマーケティングチーム」が必要だということも十分認識している。