コロナ禍によって我々の日常生活が根底から覆された2020年は、先行きが見通せない1年だった。
米国ではジョージ・フロイド氏の死亡事件をきっかけに抗議活動が多発、人種間の軋轢もピークに達した。
昨年、グーグルの検索ランキングでトップになった言葉は「なぜ(why)」。人々は世界の変化を目の当たりにし、それを受け入れ、理解しようと四苦八苦した。そして今年、最も検索された語句は「どのように傷を癒すか(how to heal)」。心の痛手から立ち直ろうとする人々の願望を象徴する。
グーグルはランキングに合わせて動画(上)を発表。心を癒し、前進しようとする様々な人々の姿を2分間の中に描く。
制作はグーグル・ブランドスタジオ。冒頭で紹介されるのは、ある女性の涙ながらの告白。「今年は、極めて困難な年でした……。私は打ちひしがれています。でも、その傷から立ち直りつつもあるのです」
コロナ禍で命を奪われた人々を追悼する場面で映し出されるのは、やはり検索数が高かった「大切な人にどう敬意を表すか(how to honor someone)」という語句。そこには、新たな変異株やロックダウンへの恐れの中、依然として不透明な時代を生きる我々の不安感が投影される。
人種間の軋轢はアジア人差別にも広がり、「ストップ・アジアン・ヘイト」運動が勃興した。フロイド氏を殺害した元警察官のデレク・ショービン被告に対する判決も下され、事件の影響を想起させる場面も登場する。
今年の最優先課題となった、メンタルヘルス。人々はそれを「いかに保つか」というテーマで検索を繰り返した。全米オープンテニスの後に休養を宣言した大坂なおみ選手と、東京五輪体操女子団体総合を途中棄権したシモーン・バイルス選手はその象徴だった。彼女たちの決断はこの問題に大きな光を当てた。
動画は、今年の明るい話題も取り上げる。ワクチンの供給や中小ビジネスの再開だ。劇場に足を運んだ観客を鼓舞する俳優のリン=マニュエル・ミランダ、コロナ禍以降初めてのコンサートを開いたビリー・アイリッシュやBTSの姿も映し出す。
スタジアムでのスポーツ観戦も再開。人々は、家族の再会やコミュニティーの絆に涙する。
そして最後を締めくくるのは、「より強くなろうと闘うすべての人々に −− 検索を続けて」という呼びかけだ。
グーグルは今年、ポップアップマガジン(カリフォルニアで生まれた『劇場で見せる』雑誌)との共同キャンペーンを延長。2021年の出来事を綴った64ページから成る紙の雑誌とデジタル雑誌を編纂、タイムカプセルに収納する予定だ。さらにニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、サンフランシスコ・クロニクル、シカゴ・トリビューンといった米国の主要紙30万部も収納する。
キャンペーンでは「デジタルハブ」も創設。ユーザーが今年のトレンドから自身の「アドベンチャー」を選んだり、ニューヨークのグーグルストアでショッピングを楽しんだりできるインタラクティブなエクスペリエンスを提供する。
(文:マライア・クーパー 翻訳・編集:水野龍哉)