Ryoko Tasaki
4 日前

世界マーケティング短信:グーグル広告事業の独占禁止訴訟

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:グーグル広告事業の独占禁止訴訟

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

グーグルの広告事業は「3つの独占」 訴訟始まる

グーグルのデジタル広告事業が反トラスト法(独占禁止法)に違反しているとして、米司法省ならびに複数州の連合が同社を訴えた訴訟が9日に始まった。同社には8月にも、検索市場で反トラスト法に違法したとする判決が下っている。

今回の訴訟で焦点になっているのが、広告ネットワーク、パブリッシャーの広告サーバー、アドエクスチェンジの「3つの独占」だ。ダブルクリック(Double Click)やアドメルド(Admeld)などの買収を通じて独占的地位を築き、イノベーションではなく買収によって成功を収めたと、司法省の弁護士ジュリア・ウッド氏は指摘。「独占は1つだけでも十分悪辣ですが、グーグルの場合は3つもあります」と述べた。

グーグル側の弁護士カレン・ダン氏は、同社のツールは既に競合他社との相互運用が可能であり、この訴訟は古い歴史に基づくものだと反論した。「この件はブラックベリー(携帯電話)やiPod、ブロックバスター(Blockbuster、かつての米ビデオレンタル大手)の会員証が入っているタイムカプセルのようなものです」。成長中の市場をコントロールしようとする誤ったアプローチであり、訴訟によってアマゾンやマイクロソフトなどの競合に意図せず利益をもたらす可能性があると主張した。

アップルの新OS、マーケターが注目すべき点

アップル(Apple)がイベントで、新しいiPhoneとオペレーティングシステム「iOS18」を発表した。iPhoneに新しく搭載されるアクションボタンなどが話題になっている。

だが、マーケターにとって特に大きな意味を持つのは、ユーザーが邪魔だと感じた要素を非表示にできる「さまたげ低減」機能だろう。今年初めには広告を非表示にできる機能と言われていたが、画像、メニュー、ニュースレターへの登録を促すポップアップ、自動再生動画など、さまざまな要素を隠すことができるというもので、広告に大きな影響を与えそうだ。

また、音声アシスタント機能「Siri」が大幅に進化し、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)をシームレスに体験できるようになるという。Siriはコンテクスト(文脈)を理解してユーザーに合わせた支援を提供でき、例えば優先度の高いメッセージを上部に表示したり、自然言語での指示を理解して実行することが可能になる。さらに、カメラコントロールを導入して、周囲の対象物や場所について学べる機能を搭載する他、オープンAI(Open AI)のChatGPTに簡単にアクセスすることができる。

「今回のアップデートで最も重要な点の一つは、iPhoneのAIにおけるプライバシー保護機能でしょう。アップルは長年、消費者のプライバシー保護を誇ってきました。顧客のデータを完全にデバイス上で処理するAIモデルだと、同社は主張しています」と語るのは、メリーランド大学ロバートH.スミス・スクール・オブ・ビジネスのP.K.カナン教授だ。

「これは、大規模なAI実装に注力するグーグル(Google)やアマゾン(Amazon)、マイクロソフト(Microsoft)などの競合とは異なります。アップルのAIへの取り組みは、消費者の共感を呼ぶパーソナルで日常的な使用に重点を置いたもの。ユーザーとパーソナルな方法で直接つながることができ、成功や市場拡大の大きなチャンスといえるでしょう」。

トランプ前大統領の白いガーゼが、銃暴力防止のシンボルに

「誰もがあれほど幸運なわけではない」――。トランプ米前大統領が演説中に銃撃されて右耳を負傷し、事件後に白いガーゼをあてていた姿を彷彿とさせるこのキャンペーン画像は、アーティスト・フォー・アクション(AFA)が公開したものだ。

AFAは銃暴力をなくすために立ち上がるアーティストの団体で、1年前に発足した。当初は活動に賛同するミュージシャンを募ることに主眼を置いていたが、今年7月の前大統領暗殺未遂事件にショックを受けたネオン(Neon)のクリエイティブスタッフが、その数日後に企画コンセプトをAFAに提案したことから始まった。

「これを見れば、何のことであるかがすぐに分かります」と語るのは、AFA共同設立者のマシュー・ライヒ氏。「たとえ米大統領であろうと、学校に通う子どもであろうと、銃による暴力から逃れられる人はいません」。


身近な人に定期的な声掛けを 豪団体

自殺防止を呼び掛ける豪州の非営利団体「R U OK?(アー・ユー・オーケー?)」が、家族や友人と定期的に連絡を取り合うことの重要性を訴求するキャンペーンを開始した。

60秒の動画では、2人の友人がお互いの様子を確認する様子を追う。赤ちゃんの夜泣き、転職活動、引越し、誕生日など、幸せなときも辛いときも二人は意図的に、あるいは無意識のうちに互いを支え合う。企画・制作はホガース(Hogarth)。

R U OK?のCEOを務めるキャサリン・ニュートン氏は「1年、1カ月、1週間で多くのことが起こります。友人、家族、同僚、パートナー、チームメイトなど、あなたの大切な人たちは毎日、人生の浮き沈みを経験しています。身近な人たちと定期的に連絡を取り合うことで、小さなことが大きな問題に発展するのを防ぐことができます」と語る。

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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