James Gaubert
2018年1月31日

フェイスブック「新アルゴリズム騒動」を紐解く

フェイスブックのアルゴリズム変更は決して悪影響ばかりではない −− オグルヴィのデジタル・ストラテジストが、ブランドにとって有益でシンプルなアドバイスを語る。

フェイスブック「新アルゴリズム騒動」を紐解く

フェイスブックの新しいアルゴリズムが大きな混乱を引き起こしている。

一方、グーグルは毎年平均で550回のアルゴリズム変更を行うが、決して騒ぎにはならない。それはなぜなのか。グーグルが注力するのは顧客体験を総合的に向上させ、ユーザーが興味を持つコンテンツを提供することだ。今回のフェイスブックの決定理由と何ら変わりはない。

フェイスブックの新アルゴリズムがパブリッシャーやブランド、メディア企業にもたらす悪影響を述べた記事や投稿は、今年になって既に何百本も目にした。だが、私自身はそんなに悪いことではないと考えている。むしろ正反対だ。毎朝目を覚ましてニュースフィードをスクロールし、広告に次ぐ広告、そして自分や自分の日常生活に何ら関係のないスポンサーコンテンツばかりを見せられるのにはもううんざりだし、そう感じているのは明らかに私1人ではない。

米議会選やフェイクニュースといった最近のネガティブなパブリシティーを含め、フェイスブックにはアルゴリズムを変える多くの理由があった。中でも重要なのは、総合的なユーザー体験の改善だろう。利用者が伸び悩み、以前ほどフェイスブックへの目線が好意的でなくなっていることは驚くに値しない。様々な要因で、このソーシャルネットワークは「ソーシャル」的要素を失ったかのようにも映る。

では、今回の変更がブランドに与える影響はどのようなものだろう。

オーガニックリーチが重要だった時代は終わった。企業はオーディエンスにコンテンツを見てもらうため、今ではフェイスブックに広告料を支払わねばならない。だが広告枠を買える機会は減っていくだろうし、それに伴い代金も値上がりするだろう。だがその効果や見返りは、はるかに大きなものになると言っていい。今後重視されるのは「質」で、近年多くの広告主が取ってきた「とにかく至る所に情報を撒いて様子を見る」というアプローチは、もう良い結果を生まないだろう。

フェイスブックが広告にどのような価値を持つかという概念にも影響を与えるだろう。ペイドパブリシティにおいて重要かつ意義のあるインタラクションとは、ビジネス上の好結果をもたらすためのもので、(ブランドと消費者との間の)エンゲージメントのためのエンゲージメントではないという認識が増すのではないか。

更に私が唱えてきた、(エンゲージメントではなく)真の経営目標を達成するためのペイドメディアの利用法を肯定してくれることにもなりそうだ。場合によっては、増加するコンテンツのパフォーマンス評価にも影響を及ぼすかもしれない。

ペイドプレースメントに大きな影響を与えることはないだろう。オーガニックコンテンツを増やす広告主には、新たなコンテンツが以前よりも有意義なインタラクションを生み出せなかった場合にだけ多少の影響が生じるかもしれない。だがそうだとしても、最低限の範囲だろう。

では、私のブランドへのアドバイスを以下に列挙する。

  • フェイスブックページに出すコンテンツ数を減らす。その代わり、鍵となるブランドメッセージをより際立たせる有意義なコンテンツ作りに注力する
  • フェイスブックの広告を、認知やプロモーションの手段として使う
  • エンゲージメントを誘うような投稿はしない。「これが気に入ったら『いいね!』を、不満なら『ひどいね』をクリック」といった類の投稿は、もはや機能しないだろう
  • 自社のブログやホームページのリンクを貼ったコンテンツは投稿しない。アクセス数などのトラフィックでフェイスブックを頼るべきではない
  • 自社のコミュニティーに改めて焦点を当て、多数のフォロワーを対象に有意義なディスカッションを生むコンテンツを作成する。「古き良き時代」のように、フォロワーとの関係をより密にすることが重要
  • 録画映像ではなく、ライブ動画をより多く発信する。フェイスブックによると、ライブ動画のインタラクションは録画のものより6倍多いという
  • 適切なオーディエンスに適切なコンテンツを確実に届けるため、コミュニティー作りに注力する。これは有意義なインタラクション数を増やす確かな方法
  • 成長分野に目を配る。フェイスブック上のブランドページのほか、チャットボットやメッセージングサービスにも着目することが大切。そしてフォロワーとのマンツーマンのコミュニケーションの場を作り、持続させていく。ソーシャルCRMこそ、前進のための切り札

最後にもう1つ。今回の動きは一般の消費者だけでなく、インフルエンサーにとっても利となるだろう。オーディエンスをきちんと理解し、その数を増やしているインフルエンサーとつながりを持つことは大多数のマーケターにとって極めて重要だ。今後もソーシャルメディアやその先にあるメディアを通じて、消費者行動に影響を与える最も有効な手段と言えよう。

インフルエンサーにとって鍵となるのは、フォロワーと自らのブランド価値を深く理解しているかどうかだ。ここで、疑問が1つ浮かぶ。フェイスブックは企業に対するのと同様、将来的にインフルエンサーを規制してオーガニックコンテンツを扱うようになるのか? また同じく、記事であってもキャプションであってもブランド情報と思えるインフルエンサーの投稿数をチェックし、リーチを規制するのか? インフルエンサーも元は一般人と同じく、友人や家族とつながるためにアカウントを作ったのであり、ブランドと提携するためではなかった。それらの答えはいずれ、時間が経てば分かるだろう。

(文:ジェームズ・ゴーベール 編集:水野龍哉)

ジェームズ・ゴーベールはオグルヴィ・アンド・メイザー・マレーシアでデジタル及びソーシャル部門の責任者を務める。

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