もはや絶滅危惧種となった営業職
広告ビジネスの変革を呼び掛けるP&Gのマーケティング責任者、マーク・プリチャード氏は今週も「エージェンシーの人間の4分の3は、クリエイターとなるべき」と発言している。
ロンドンで開催された英広告主協会(ISBA)年次大会での講演後にCampaignの取材に応じたプリチャード氏は、クリエイティブ関連の費用は一般的に、全体の費用の半分にも満たないことへの不満をあらわにした。「クリエイティブ制作に関係のない費用はすべて除くように」とエージェンシーに求め、営業職のランクを下げれば可能だろうと述べた。
これは至極納得のいく話だ。エージェンシーに期待されているのはクリエイティブであり、クライアントはシンプルさを求めている。マーケターたちが仲介を飛ばし、クリエイターと直にやりとりすることは、エージェンシーであろうとなかろうと今後増えていくだろう。この流れに抵抗するエージェンシー自体が、外される可能性もある。ピボタルリサーチのデータによると、WPP、オムニコム、ピュブリシス、ハバス、IPGといったエージェンシーの収益成長率は、2016年は3%だったが昨年は1%にまで落ち込んでいる。クライアントが社内制作に移行していることも、その原因の一つであると考えられている。
JWT、WPPグループ内で最も大きな男女間格差が明らかに
WPPの発表によると、英ジェイ・ウォルター・トンプソン(同グループ)における男女間賃金格差は約45%(中央値の比較)であることが明らかになった。対照的にカンターメディア(同グループ)では、約13%の差で女性の方が高かった。14,000名を擁するWPPグループ全体では約15%の格差があり、これは英国の賃金格差(18.4%)と比べればまだ良い数値だ。ジェイ・ウォルター・トンプソンの広報担当者はこの結果を受けて「残念な数値だ」とコメントし、是正に努めていくとした。日本における男女間の格差はいかがだろうか。鍵を握るのは、業界全体での調査であろう。
香港のエージェンシーが週4日勤務を試験導入
香港の独立系デジタルエージェンシー「APV」では2月より、週4日勤務を試験的に導入した。当初は金曜日を休日とする予定だったが、15人チームの全員が月曜日に出社し、火曜日から金曜日の間に1日休みを取れるよう制度を変更。勤務している4日間の勤務時間が長くなるわけではなく、一週間フルに勤務したとみなして給与を支給していると、創業者マーク・エルダー氏は強調する。自分で時間を管理できる「成熟した大人」として社員を処遇することが目的だという。「居残る社員を見るとイライラします」とエルダー氏。「それはときに、時間をうまく管理しなかったために遅くまで残り、不必要に疲れてしまっていることの表れでもあるのです」
また、ニュージーランドに拠点を置くエージェンシー「メークコレクティブ」では、自転車で通勤する社員に一日あたり5ドルを支給している。この金額は営業利益から持ち出されるわけだが、それでも多くの恩恵があるという。特に、自動車や公共交通機関を使って通勤するよりも、自転車通勤の方が出社時にいきいきと元気であることが、大きなメリットなのだとか。
広告の性差別的表現を検知するツールが発表
動画アドテクノロジー企業「アンルーリー」は
国際女性デーを記念し、性差別的な表現が含まれていないかスクリーニングするシステムを発表した。差別的な表現としてとらえられる可能性がある動画を、公開前にマーケターに知らせるもので、英広告基準協議会(ASA)が定義した13種類の性別的ステレオタイプに基づいて分析。視聴者の反応の測定には、顔表情分析も用いる。結果は信号機のように色で示され、再考を要する動画には黄信号が表示される。広告表現には今もなお、ステレオタイプ的な描写が多く見られる。今回の取り組みのように、これまでの社会通念に疑問を投げかける施策への期待は大きい。
チューハイ市場、活況に沸く
日本コカ・コーラが酒類事業に参入すると、フィナンシャル・タイムズが3月8日に報じた。同紙は「日本でチューハイと呼ばれるカテゴリーの製品を試す」というホルヘ・ガルドゥニョ代表取締役社長のコメントを掲載。チューハイは日本国内のみでの展開となる予定だ。背景には、多国籍企業にとって日本はさまざまな商品を試験的に導入する市場であることや、清涼飲料ブランドにとって将来の成長が見込みづらいことが挙げられる。ここで大きな謎なのが、なぜキリンやサントリーといった酒類大手が海外でチューハイを売り出さないのかという点。チューハイは海外でも多くの消費者に受け入れられるだろう。
環境問題への姿勢がファッションブランドの評判にも影響
今年のパリファッションウィークでは、環境問題が注目を集めている。ラコステはトレードマークのワニではなく、絶滅危惧が危惧される10種類の動物をロゴにしたポロシャツを限定販売し、注目を集めた。ワニ以外のモチーフを用いたのは同ブランド史上初で、シャツの販売枚数はそれぞれの動物の現存する個体数のみ。1775枚のシャツの収益は国際自然保護連盟(IUCN)へと寄付される。もちろんシャツ単体で、これらの絶滅危惧種を救うわけではないが、保護活動の支援においても、ブランドにとってもプラスとなるだろう。シャツ自体もかっこいいデザインだ。
一方で、シャネルは森をイメージした会場を作るために樹齢100年を超える木を伐採したとして、環境活動家から非難されている。世の中の関心は過剰消費から別方向へと向かっており、ファッション業界も無関心ではいられない。感度の悪い企画は、確固たるブランドにとっても致命傷となり得るのだ。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)