日本コカ・コーラは28日から、アルコール飲料「檸檬堂」を九州限定で発売した。檸檬堂にはアルコール度数(3~7%)や味の異なる、3種類の商品ラインナップがある。
この新しい缶チューハイブランドは、世界的な飲料大手であるコカ・コーラ社が現在扱う唯一のアルコール飲料だ。同社は日本市場でのチューハイ販売に大きな可能性を見出しているが、他地域での販売は現在のところ予定していないと報じられている。
同社は新商品のプロモーションとして、阿部寛を起用したCMの放送を開始。職人気質の店主に扮した阿部寛が、客の目の前でレモンを皮ごとすりおろして酒に漬け込み、ていねいに作る様子はまるで実際に居酒屋にいるかのようだ。最初はレモンサワーにそれほど期待していない様子だった女性客は、すりおろされたレモンが焼酎に漬け込まれていく様子に感嘆の声を上げる。また、缶には「こだわりレモンサワー」と表記されており、舌の肥えた人に向けてていねいに作られたお酒であることを強調している。
チューハイの有名ブランドには、キリン「氷結」(焼酎ではなくウオッカで割っているのだが)、サントリー「ストロングゼロ」、宝酒造「タカラcanチューハイ」などがある。
日本コカ・コーラのアルコール飲料への参入を、今年3月に英フィナンシャル・タイムズが報じた際、参入の背景には炭酸飲料の販売量が世界的に減少傾向にあるためとしていた。これが今回のケースに当てはまるのかは不明だ。なぜなら同社は日本市場でお茶やミネラルウォーターなど幅広い商品を展開しており、社名の由来となった旗艦商品「コカ・コーラ」の売上は全体の25%に満たないのだ。日本は、コカ・コーラグループが最も利益を上げている市場である。
Campaignの視点:
同社マーケティング担当EVPのカリル・ヨウンス氏は先日、「ローカルブランドには世界的な有名人を、グローバルブランドにはローカルな有名人を起用する」と話していたが、今回のCMでは阿部寛を起用しており、この「ルール」には沿っていない。そうは言っても、ルールは破るためにあるもの。状況に合わせてキャスティングを考えることが大切だ。
CMのコンセプトは必ずしも真新しいものではないかもしれないが、細部までよく作り込まれている。競合商品の多くが高級感や、製法や材料へのこだわりをあまり力強く訴求していない中で、檸檬堂はポジショニングが明確で差別化につながっている。訴求内容を果たして信用できるかどうかは、また別の話だ。
チューハイはアジア市場でも、多くの消費者に受け入れられそうだ。同社が(そして競合他社も)日本以外での展開を視野に入れていないことが、我々には不思議である。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)