今から5年以内に世界の“ビッグ6”のうち1社、ないしは数社が大手コンサルティングかIT企業によって買収される – M&Aに関する一流のプロが、このような見解を述べた。
大規模買収の可能性を示唆したのは、M&A仲介企業「クラリティー」の共同経営者、ベン・トーリー氏。英国出身で現在は豪州に拠を構え、先週(5月7日)発表されたアクセンチュア インタラクティブによる豪州のクリエイティブエージェンシー「ザ・モンキーズ」と関連のデザイン会社「モード」の買収に関わった(この件に関するコメントを同氏は控えている)。
「買収の可能性の有無ではなく、今やそれがいつ起きるか、という段階にきているのです。世界的なシステムインテグレーターやIT企業の規模は、ビッグ6のそれをはるかに上回っていますので」
因みにアクセンチュアは世界最大の広告代理店であるWPPの2倍の従業員を抱え、株式資本も2倍以上だ。
WPP に次ぐ代理店は売上総利益の順に、オムニコム、ピュブリシス、インターパブリックの各グループ、そして電通、ハバス。
「コンサルティングやシステムインテグレーター、ソフトウェア関連の企業とクリエイティブに携わる企業との間には文化的な隔たりがある、という希望的観測をマーケティングエージェンシーは持っています。しかし実際は、コンサルティングやIT企業も既にクリエイティブな企業と似通ったマーケティングサービスを提供している。サービスデザインなどは本質的にクリエイティブな領域ですから」。
この数年、アクセンチュアやデロイト、EYなどのコンサルティング企業、あるいはIBM、セールスフォースといったIT企業による比較的小規模なマーケティングエージェンシーの買収が世界中で活発だ。
「マーケティングエージェンシーもこうした動きが加速化し、欧米や豪州だけにとどまらないと気づき始めています。もはやのんびりと構えているわけにはいかないでしょう。買収の危機はすぐ目前に迫っているのですから」
コンサルタントやIT企業にとってマーケティングエージェンシーの行っている事業は「いつでも容易に手に入れられるもの」で、メディアバイイングだけがこれまで買収の対象になっていなかっただけ、とも。
グーグルやフェイスブックの支配力が高まるにつれ、テレビや屋外広告、出版物といった分野で「これまで広告代理店が担ってきた仲介者としての役割が減り、メディアのあり方が変わるかもしれない」とトーリー氏は予測している。
(文:ギデオン・スパニア 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉)