第4四半期(10−12月)は予想を上回る好決算で、国内及び海外3地域(米州、欧州・中東・アフリカ、アジア太平洋)全てで業績が伸長。
第4四半期のオーガニック成長率は電通ジャパンネットワークが17.3%、電通インターナショナルが12.1%。既存のクライアントが再び広告支出を増やしたことで好業績を生んだ。最も大きな成長を果たした領域はクラウドソリューションとeコマース、カスタマートランスフォーメーション。国内では電通デジタル、海外ではマークルが牽引する。
2021年度連結業績も力強く回復し、オーガニック成長率は13.1%、調整後営業利益は前年比44.4%増。オペレーティングマージン(調整後営業利益÷売上総利益)は18.3%だった。売上総利益(為替影響排除ベース)は9765億円、前年比16.9%増。2019年の水準を上回り、調整後営業利益も2019年度比で27%増となった。コロナ禍以前の業績を上回ったことは明るい兆候だが、2019年決算が電通にとって過去最高でなかったことも付記しておくべきだろう。
また、400億円を上限に自社株買いの実施も発表。2024年度を最終年度とする中期経営計画では、オーガニック成長率を3〜4%から4〜5%へと上方修正した。
今後3年間はM&A(合併・買収)に再び注力し、2500〜3000億円の原資を確保する。カスタマートランスフォーメーションとテクノロジーに集中した投資を行い、最終的にはこれらの領域で売上総利益の50%を確保したいとする。
「成長分野であるカスタマートランスフォーメーションとテクノロジーに長期的投資を行っていきます。今、弊社のクライアントはこれまで以上に顧客のことをよく理解したいと考えている。コロナ不況からの回復戦略に注力するブランドにとって、カスタマーエクスペリエンストランスフォーメーションこそが最大の機会」(電通グループ・五十嵐博社長)
地域別の業績
2021年度の業績を地域別に見ると、日本の売上総利益は全体の43%を占め、オーガニック成長率も最大の17.9%。メディア全体への広告支出増加が好結果をもたらした。米州は25%を占め、成長率は10.6%。ブラジルはマイナス8.9%だったが、米国は9.9%、カナダは22.9%のプラスだった。
欧州・中東・アフリカは全体の22%で、成長率は11.1%。フランス、ドイツ、イタリアなど7カ国が2桁成長となり、英国も8.2%だった。サービスライン別ではカスタマーエクスペリエンスマネジメント(マークル)が12.1%、メディアが10.5%、クリエイティブが6.2%の成長だった。
日本を除くアジア太平洋は成長率が最も低く、4.7%。中国がマイナス2%だったほか、インドやタイもマイナスだった。第4四半期に唯一高い成長を遂げたのは、経営陣が一新されたオーストラリア。成長率は20%以上で、2021年度累計では12.1%となった。またシンガポール(24%)やインドネシア(20.8%)も累計で高い成長を示した。
電通インターナショナルのグローバルCEO、ウェンディ・クラーク氏は「全ての地域とサービスラインで業績を上げ、成長への回復力を示した2021年は弊社にとって特別な年になった」とコメント。「オペレーティングマージンを15%にするという長年の目標も1年前倒しで実現できた」
「この結果は従業員が業務に傾注し、その才能と潜在力を示した証です。新規事業の獲得は4000件以上に及び、有力クライアントとの事業も拡大、売上増につながった。今ではトップクライアント100社のうち、83社が弊社と2つ以上のサービスラインで協働しています。また、事業変革とコストの見直しも進み、調整後営業利益は前年比で30%増になった」
「我々は『謙虚な自信』を持って未来を見据えています。成功の基盤である従業員とクライアントには、深い感謝の念を抱いています。しかし、まだ実現しなければならないことがたくさんある。今年はこのポジティブな勢いを支えに前進していきます。引き続き従業員やクライアントのケア、そして業務に注力し、コストも抑えていく。全て順調に行けば、2022年がベストの年になると確信しています」
(文:ロバート・サワツキー 翻訳・編集:水野龍哉)