3月の企業の広告費は大幅に減少したが、FBは「都市封鎖による経済への影響は一段落し、今月の広告収入は横ばいが予想される」と発表した。
FBの第1四半期における広告収入は17%(現在のレートでは19%)増で、174億4000万ポンド(約2兆3000億円)の増収。
新型コロナのパンデミックで広告業界が大きな損害を受けるなか、FBがこのような数字を上げることをアナリストは予想できなかった。同社の前年同期の広告収入は26%増。今年第1四半期の発表を受け、同社株は5月1日の時間外取引で10%上昇した。
FBは、「今年第1四半期の最後の3週間は広告需要が大幅に減少し、それに伴い広告料金の値下げを行った」と決算報告書の中で説明。
さらに、「広告収入の減少は4月に下げ止まった感がある。3月に大きく落ち込んだあと、4月初めの3週間は前年同期と比べ概ね横ばい状態。第1四半期の17%という数字は下回っている」。
また、「FBユーザーが多い国のほとんどで事実上の屋内退避勧告が出されており、4月の見通しは世界各地で弱含み」とも。
同社によれば、ユーザー数は依然ふた桁の伸び率を示している。3月のアクティブユーザー数は3月末時点で1日17億3000万人(前年同期比11%増)、月間26億人(同10%増)。FB、インスタグラム、ワッツアップそれぞれのユーザー数は公表していない。
しかし市場調査会社eマーケターのチーフアナリスト、デボラ・ウィリアムソン氏は「4月の広告収入が横ばい状態なのは、第2四半期に困難に直面することを示唆している」という。
「いくつかの国は他国に先んじて経済活動を再開し、広告費も増えていくでしょう。しかし多くの国々は5月いっぱい、あるいはそれ以降も『封鎖』を続けていく可能性がある。一つの国でも米国のように州によって再開の時期が変わってくるので、FBのような企業にとって広告セールスの勢いを取り戻すのは極めて難しい」
FBは近年、中小企業からの広告収入を増やす努力を続けてきた。こうした中小企業の広告主は「ロングテール広告コミュニティー」とも言われ、オーディエンスのターゲティングをより正確に行えるセルフサービス式の広告フォーマットから大きな恩恵を受ける。FBのこうした広告主は現在、全世界で1億4000万社に及ぶ。
新型コロナは特に中小企業に大きな打撃を与えた感が強いが、FBのシェリル・サンドバーグCOO(チーフ・オペレーティング・オフィサー、最高執行責任者)は「旅行や自動車業界の広告が激減した反面、ゲームやeコマース業界では明るい動きが見られる」と話す。
「ゲーム業界からの広告収入は好調で、我々にとって大きな収入源であるテクノロジーやeコマース業界からの広告も安定している。その要因として挙げられるのは、まず、人々の在宅時間が長くなったことで、こうしたプロダクトやプラットフォームの需要が高まったこと。また、これら広告主は測定可能な目標を掲げて広告を最適化する。広告需要の全体的な減少に伴い、我々は安い広告料金を設定して売上げを維持しました」
「対照的に、大きな打撃を受けている旅行・自動車業界からの広告は大きく落ち込んでいる。今は、あらゆる企業が新しい消費社会に対応しようとしています。それは人々が実際の店舗に足を運んだり、ブランドが自社名をビルボードに掲げたりしない、新たな消費社会なのです」
一方で、創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグ氏は既存の広告プラットフォームから収入を得るやり方を改める方針を決定した。最近は、「ワッツアップをeコマースのプラットフォームとして構築する」という発言を繰り返す。
「今注力しているのは、より幅広くワッツアップでeコマースを展開していくこと。そうすれば中小企業はFBやインスタグラム、ワッツアップ、メッセンジャーといったすべてのアプリ上で存在感が発揮できるようになる。消費者とも有機的なコミュニケーションが取れ、取引を活性化させる戦略を打てるようになるのです」とザッカーバーグ氏。
「今はワッツアップの中で、カタログ的なものを公開しています。取引が完結できる支払い方法にも取り組んでおり、新しいフォーマットとして『クリック・トゥ・メッセージング』広告もスタートさせた。ここにあるメッセージスレッドを使えば、自社サイトなどで宣伝するよりも売上げが増えることを多くの中小企業や異業種企業が理解するはず。基本的にはフェイスブックやインスタグラムの中で広告を買い、チャットのスレッドを通して消費者に送るやり方です」
(文:オマール・オークス 翻訳・編集:水野龍哉)