10月中旬、ニューヨークの国連本部で開かれた国連総会第4委員会で「情報」が議題に取り上げられ、英国代表部スポークスパーソンのマンゴ・ウッディーフィールド氏が「デジタルプラットフォームが生む深刻な危機」と「偽情報・誤情報の拡散による脅威」を訴えた。
「偽情報や誤情報、意図的に情報を操作しようとする企ては、世界の何十億という人々に危害を及ぼす。我々の自由を脅かし、個人と社会を害し、危機の際には人々を誤った方向に導くことをこの数週間、我々は目撃してきた」
依然続くロシアのウクライナ侵攻、そしてイスラエルとイスラム組織ハマスとの軍事衝突の勃発。昨今、プロパガンダの応酬は世界でますます激化する。
「AIは偽情報・誤情報をいかにも真実であるかのようにでっち上げ、大規模に拡散する能力を持っている」
さらに同氏は、「ロシアは安全保障理事会を偽情報のプラットフォームとして利用し」ており、「ウクライナに関する虚偽情報を広めるため、何十人という偽の証人を国連の場に呼んだ。それらが明らかにでたらめであることは、国連の専門家によって何度も証明されている」と発言。
英政府高官は、「ロシアは自らが犯している恐ろしい罪を隠蔽するため、偽情報キャンペーンを展開し、安全保障理事会における議論を貶めている」と話す。
「英国は引き続き、偽情報を見つけ次第公開し、ロシアの説明責任を問いただしていく」
英国は国連グローバルコミュニケーション局が推し進める「デジタルプラットフォームにおける情報保全の行動規範(Code of Conduct for Information Integrity on Digital Platforms)」を支持する。「加盟国はプラットフォーム同様、急速なテクノロジーの進化に責任を持って対処する必要がある。最新のテクノロジーを理解し、適切に管理して、何十億という人々が安全に利用できる環境を構築しなければならない」とウッディーフィールド氏。
「偽情報や誤情報に対抗できる手段は、信頼できる情報へのアクセス。国連には、事実に基づいた正確かつ公正な報告書を作成するという極めて重要な役割がある。だがその役割を果たすことは、毎年困難になりつつある」
国連はコンゴ民主共和国や中央アフリカ、マリ、南スーダンといった国々で平和維持活動を展開する。だがその活動は、偽情報によって脅威に直面している。
「国連加盟国は、信頼できる情報源としての国連の完全性を守っていく責任がある」(ウッディーフィールド氏)
「残念ながらいくつかの加盟国は、国連の場で有害な偽情報を拡散したり、国連に関する偽情報を拡散したりしている。国連の平和維持活動に関する偽情報は、依然として大きな懸念事項だ。平和維持部隊は極めて困難な環境で、困難な任務を遂行する使命を課せられている。その任務に関する偽情報が拡散すれば、国連スタッフにとって脅威となり、任務遂行の妨げとなる」
国連グローバルコミュニケーション局は「国連の現場活動を支援し、偽情報をいち早く正す情報研究所の開設を進めている」。英国もこの計画を支援していくという。
(文:ジョナサン・オーウェン 翻訳・編集:水野龍哉)