わずか数年で世界を席巻したプラットフォーム、TikTok。調査会社カンターが行った「メディア・リアクション・レポート」2022年版では、TikTokはマーケターから「最もイノベーティブな広告主」、消費者から「最も楽しい、エンターテインメント性あふれる広告が掲載されるプラットフォーム」に選ばれた。だが、TikTok上の広告は本当に高い効果を発揮するのだろうか。またそうだとしても、その効果はどう把握できるのか。
TikTokの潜在力を活用することが、個人やブランドにとって大きなビジネスチャンスにつながることは疑いの余地がない。TikTokによって正真正銘のセレブリティになったクリエイターや、新たなオーディエンスを開拓したブランド。そして、ブランドのマーケティング戦略を一新した#BookTokや#TikTokMadeMeBuyItといったハッシュタグ −− この数年間、「TikTokカルチャー」が業界に及ぼした影響力の大きさは言うまでもない。
だが、洒落た動画やイメージを制作するだけでは成功に導く戦略とは言えない。コンテンツやキャンペーンの最適化に欠かせないのは、消費者インサイトを忠実に反映した、正確かつ実践的な広告効果測定だ。「test-and-learn(試行と学習)」的思考と精緻なデータがあってこそ、成功の可能性は無限大となる。
「エンターテインメント性」の効果
TikTokには膨大なユーザー基盤と、カルチャーの創出力がある。新たなビジネスチャンスを模索するマーケターがアッパーファネル(消費者の購買プロセスの最初の段階=認知)へのアプローチを慎重に試みたいのであれば、TikTokは最適のプラットフォームとなろう。「見つけやすさ」「買いやすさ」「エンターテインメント」という独自性が、購買ファネル全般を通して効果を発揮することはすでに実証済みだ。
カンターとTilTokの共同調査「TikTokでの充実した時間」では、ユーザーの92%がTikTokコンテンツを見た後にアクションを起こしていることがわかった。
自ブランド・製品情報の流布、コンバージョンへの促進は、TikTokの活用で独創的かつ効果的に実現することができる。また新規顧客の開拓、あるいはエンゲージメント率の高いコンテンツ広告(ハッシュタグチャレンジ<HTC>など)で事業拡大を目指すブランドにとっては、「新しいものを見つけたい」というユーザーのオープンな好奇心もプラスに働く。
さらにはコミュニティエンゲージメントやブランド認知度向上といった明らかなメリットもあり、TikTok上のコンテンツ広告は購買ファネルの各段階で効果を増幅する。カンターのメタ分析によれば、HTCはブランド想起率を9.1%高め、購入意欲を3.6%向上させることがわかった。後者の数値は世界基準の12倍という高さだ。また、普段ブランドに関心を持たないユーザーのブランド想起率を7.1%高める効果も確認された。これは新規顧客へのリーチが可能なことを表す。
TikTokのマーケティングミックスモデリング調査の一環を担ったニールセンによると、日本ではTikTok広告のROASは他のプラットフォームより平均1.6倍高い。さらに広告主が複数の広告フォーマットを同時に使用する場合、ROASが13%高くなることも判明した。ブランドの売上げを顕著に増やし、その効果は測定可能なのだ。
測定フレームワークの利点
キャンペーンのパフォーマンスやビジネス効果をマーケターが最適化できるよう、TikTokは重層的な効果測定を開発した。必要とされるソリューションとツールを全て揃えた測定フレームワークで、マーケターはファネルの各段階におけるデータと広範なKPI(重要業績評価指標)を把握できる。さらに、特定のニーズへのカスタマイズ化も可能にした。
このフレークワークには3つの主要目的がある。安全性と透明性の確保、パフォーマンスの向上、そして効果分析だ。そのためにTikTokは広告のプレイスメントを管理し、透明性を確保できる「インベントリフィルター」、アトリビューションを把握できる「TikTokピクセル」といったツールを実装、広告主に提供する。
TikTokピクセルを利用することで広告主はユーザー行動(あるいはその示唆)を特定でき、成功要因をより克明に把握できる。ウェブサイト上のどういう示唆が購買につながったか、についても然り。シンプルな設定を行うことでプライバシーの保護も実現し、カスタマージャーニーやドロップオフ率も掌握。さらに(特定のカスタマーの除外やリターゲティング、既存のオーディエンスと共通する潜在的オーディエンスの発掘などを目的とした)カスタムオーディエンスの作成も可能となり、キャンペーンのパフォーマンスをより正確に測定。結果的により多くのコンバージョン獲得を実現する。
TikTokピクセルには、カスタマージャーニーにおけるウェブサイトをスキャンし、メールアドレスや電話番号からデータを収集する「アドバンスドマッチング」という機能もある。これによって広告主はウェブサイトカスタムオーディエンスやコンバージョンに至るアトリビューションの改善、そしてパフォーマンスの最適化が実現できる。アドバンスドマッチングとピクセルを併用することで、特にウェブサイトのコンバージョン率を向上させるキャンペーンなどでは「1+1=2」以上の効果を発揮、広告主にとって最適のソリューションとなる。
成功事例その1:ココ&イヴ
ヴィーガンヘアケア製品のブランド「ココ&イヴ(Coco&Eve)」は、ウェブサイトコンバージョンのキャンペーンにこの手法を活用した。同社はメッセージの最適化を図った後、サイトのあらゆるページでファネルの全段階をトラッキング。メッセージとアトリビューションを向上させるため、アドバンズドマッチングはマニュアルと自動を併用した。その結果、顧客獲得単価(CPA)は16.4%減少し、コンバージョン率は11.4%増加。リーチしたオーディエンスは40万6000人超に上った。
さらにTikTokは、ブランドが広告支出の効果をより正確に把握できるよう、ブランドリフトと売上高の調査も行う。提供するのはマーケティングミックスモデリング(ニールセン社と協働)で、プラットフォーム上の広告効果を可視化する。
成功事例その2:メイベリン ニューヨーク
世界最大手化粧品メーカー、ロレアルは若者に人気のブランド「メイベリン ニューヨーク」の効果測定にTikTokの測定法を導入。豪州で行ったマスカラの新製品のブランド認知キャンペーンでは4.9%の売上増を記録した。これは豪州における消費財の基準値(ニールセン調べ)の175%で、動向が速い消費財でも異例の高さだ。また製品の認知度も12%上昇し、基準値の9倍を記録。動画の視聴回数は2800万回に達した。
さらにメイベリン ニューヨークは、ミレニアル世代前半層やZ世代にリーチするため、TikTokをプラットフォームとして「Fit Me Idol」キャンペーンを展開。主力製品であるファンデーションのプロモーションとブランドアドボカシー強化に努めた。ロレアルの南アジア・中東・北アフリカ(SAPMENA)担当チーフデジタルマーケティングオフィサー、シェリー・チャン氏は「若年層オーディエンスの気持ちを強く捉え、遺憾なく個性を発揮させる点がTikTokのプラットフォームとしての大きな魅力」と話す。
「SAPMENA地域の若年層はデジタルに精通し、情報とエンターテインメントに飢えている。『発見と創造の場』という独自のポジショニングを持つTikTokは、メイベリン ニューヨークのニーズと完璧に合致しました」と同氏。新しいアイドルを発掘するFit Me Idolキャンペーンで鍵となるのは、参加者が存分に才能と個性を発揮できるプラットフォームの存在だ。まさしくそれこそが、TikTokの特性と言える。
キャンペーンは大きな成果を上げ、メイベリン ニューヨークの描くブランドイメージを普及させ、製品を「購買」「比較・検討」する層を大幅に増やした。「極めて戦略的に、TikTok主導で行われたキャンペーン。そのパフォーマンスを評価する上で、TikTokの精緻な効果測定は極めて重要でした。戦略を決定し、効果的に実行する上で大きなサポートになった」(同氏)
最大限の成果を求めるマーケターにとって欠かせないのは、やはりカスタマイズ可能で精緻な効果測定だ。TikTokの活用は、パフォーマンスの確実な向上につながる。つまり、単に視聴回数やフォロワーを増やすだけでなく、製品の購入やニュースレターの購読、アプリのダウンロードといったあらゆる実質的行動にオーディエンスを導くことができるのだ。
TikTokが提供する体験の中核にあるのは、クリエイティビティと信頼性。そこから紡ぎ出されるデータ主導のインサイトで、ブランドはキャンペーンの正確な分析と最適化が可能となる。それによって、常に前回のキャンペーンを上回る成果が得られるのだ。
(文:Campaign Asia-Pacific編集部 翻訳・編集:水野龍哉)