移住促進をPRする動画「ンダモシタン小林」や、地元高校生グループが制作した動画が話題となった宮崎県小林市が、「シムシティ」を活用した地方創生プロジェクトを実施中だ。
シムシティとは、プレーヤーが市長となって理想のまちを作っていくゲームで、1989年に初代が発表されて以降、多くのシリーズ作品が展開されてきた。小林市がコラボレートしたのは、そのモバイル向けのアプリ「シムシティ ビルドイット」だ。
宮崎県は高校生の県外就職率が全国ワースト2位(その前は2年連続で最下位)。人口約4万6千人の小林市も「消滅可能性都市」に指定されており、若者の人口流出は大きな課題となっている。また他自治体と同様、選挙における若手世代の投票率が低いことも課題だ。だが役所側から一方的に情報を発信したところで、地域への愛着を深めてもらったり、政治に当事者意識を持ってもらうことは困難だ。
このような状況を打開すべく、同市は市職員や県立小林秀峰高校の有志からなる「シムシティ課」を設立。高校の総合学習の時間を活用し、正規のプログラムとして約3カ月間、まちづくりを考えていく。そのための教材として小林市を再現したシムシティを活用して「理想の小林市」をつくり、それに伴って発生する課題の検証、解決方法の模索などの過程から、まちづくりに参加することの面白さや意義を学んでいく。
高校生たちは授業時間を中心にプランニングを行い、さまざまなアイデアについて議論を重ねていく。これまでに「東京に住む女子高生」「小林市に住む出産を控えた新婚夫婦」など8つの視点から、市に何を求めているか、安心するポイントや不満は何かなどを、班に分かれて検討。コンセプトを立ててゲーム内に反映し、その結果を中間報告会で発表した。市職員から具体的なフィードバックを得て、さらに議論を深め、その成果を12月中旬に行われるタウンミーティングにて、市長、市役所幹部、住民の前で発表する予定だ。ここで好評を得たアイデアは、具体的に実現するかもしれないのだとか。
「高校生を対象に、しかも長期にわたり世界中で愛されるゲームを通して、政治やまちづくりに興味を持ってもらうような機会を得られたことは、小林市にとっても、未来を担う若者にとっても非常に有意義な機会となることでしょう」と語るのは、宮原義久市長。「このワークショップを通して、若い世代に自分が住むまちをもう一度見直してもらい、まちづくりに興味を持ってもらい、次代の小林市を創造していく人材が育っていくことを期待しています」
(文:田崎亮子)