Staff Reporters
2022年3月18日

エージェンシー・レポートカード2021:APAC主要エージェンシーの評価表

今年で19回目となるCampaign Asia-Pacificの「エージェンシー・レポートカード」。2021年、アジア太平洋地域(APAC)の主要エージェンシーはどのような実績を上げたのか。ビジネスやイノベーション、クリエイティブといった観点から総合的に査定する。

エージェンシー・レポートカード2021:APAC主要エージェンシーの評価表

今年の審査の特徴は、データをより重視したアプローチを導入したことだ。さらに対象とするカテゴリーをより細分化し、新たにサステナビリティーを項目に加えた。

こうしてお届けする2021年度のエージェンシー・レポートカードは、これまでで最も綿密かつ総合的な評価表になったと確信する。対象となったのはAPACで事業を展開する41のエージェンシー。日本からは電通、Dentsu X、博報堂、ADKの4社を選んだ。(全エージェンシーのリストはこちらから

電通 

Dentsu X

博報堂

ADK

新たな評価基準について

この数年、多くのエージェンシーがその「作り」を変えた。ビジネスモデルを再定義し、未来志向のマネジメントやブランドとの関係性強化を図って組織再編を行ったからだ。今年の審査で新たに焦点を当てたのは、ビジネスモデルのサステナビリティーとその実行性。さらに1)「大退職時代」への対応 2) クライアントへのサポートと新規事業のピッチとの両立性 3) 制作とイノベーションへの継続的な支出 4) DEI(多様性、公平性、包摂性)の進捗度、といった面の戦略性も考慮した。

また、評価のカテゴリーでは「エフェクティブネス(有効性)」を追加。コロナ禍を経てブランドは予算の使い方により一層慎重になり、エージェンシーにはこれまで以上にクリエイティビティーの有効性が求められているからだ。

初めて評価の対象とした「サステナビリティー」は、今やあらゆるエージェンシーにとって欠かせない要素だろう。だが、各社の取り組みが始まってまだ日が浅いことを鑑み、DEIとともに1つのカテゴリーとした。

昨年まで掲げていた「人材」 −− 有能な人材の維持及び育成、福利厚生 −− は「マネジメント」の項目に統一。他の全ての分野の実績もここに反映させた。

これまでのレポートカード同様、分析と評価はまずカテゴリー別に行った。5つのカテゴリーは以下の通り。1) ビジネス成長 2) イノベーション 3) DEIとサステナビリティー 4) クリエイティビティーとエフェクティブネス 5) マネジメント。評価基準や評価のプロセスについては下に明記した。さらに事業概要や主要クライアント、得意分野といった主だった情報も掲載し、各エージェンシーによる自社評価も付記した。

総合評価ではAからFまでのアルファベットによるランク付けに加え、初めて点数表を公開。より明快で透明性のある査定を心がけた。

その結果、昨年と同じ評価を得たエージェンシーは半数以上にのぼり、41社中24社。評価を上げたのは5社、下げたのは9社だった(今年はADA、アイプロスペクト、ウィーアーソーシャルの3社を新たに対象として追加)。

2021年はコロナ禍によるダメージから多くのエージェンシーが業績を回復させ、ビジネス成長で評価を上げたのは15社に及んだ。残念だったのは、DEIとサステナビリティーの面で改善したエージェンシーが少なかったこと。評価を下げたのは13社で、上げたのは7社だった。人材面での取り組みも手薄で、マネジメントで評価を下げたのは13社。特に従業員の福利厚生面での努力が求められる。逆に評価を上げたのは8社。最も評価を下げたエージェンシーが多かった分野はイノベーションで、16社。各社がかつてない複雑な課題に直面し、革新的な発想が求められたにもかかわらず、こうした結果に終わったことは驚きを禁じ得ない。


評価方法


評価基準

以下のカテゴリーで査定:

1.     ビジネス成長:総収入、新規事業からの収益(各社公表額とコンサルティング会社R3の報告書『ニュービジネスリーグ』を参照)、オーガニック成長率、収益性、新たなクライアントの獲得数と失ったクライアントの数、収益の多様性などを総合的に査定。

2.     イノベーション:自社を初め従業員やクライアント、業界に好影響を与えた取り組みやイノベーションを定性評価。

3.     DEI&サステナビリティー:DEI及びサステナビリティーにおける貢献度、誓約の実行性を定性評価。

4.     クリエイティビティー&エフェクティブネス:手がけたキャンペーンの影響力と有効性を定性評価。地域及び世界レベルの広告賞における受賞を考慮、特に主要広告賞は重視した。また、クライアントにもたらした効果・影響も勘案。

5.     マネジメント:上記4つのカテゴリーに加え、経営方針、経営の安定性、業界への貢献度、社員教育・能力向上の実践、社員の年間所得といった視点から経営陣のパフォーマンスを定性評価。

評価決定までのプロセス

対象となったエージェンシーのほとんどは、様々な分野に関する質問状に丁寧な回答を寄せてくれた。これをもとに弊社は独自の調査を実施。多くの各エージェンシーAPAC責任者とも約1時間にわたる面談を行った。こうして複数の弊社シニアエディターが各エージェンシーのパフォーマンスをカテゴリー別に点数化、ランク付けを決定。点数とアルファベットによる評価基準は以下に記した。

5つのカテゴリーで評価が決まると、全エディターが参加する会議を開催。全カテゴリーの平均値を出し、最終的なランク付けを決定した。今年は初めて点数表も表示、各エージェンシーのパフォーマンスをより細かく評価・提示することを心がけた。

アルファベットによるランク 評価 点数 点数幅
A 比類のない素晴らしさ 10 9.6以上
A- 傑出している 9 8.6 - 9.5
B+ 非常に優れている 8 7.6 - 8.5
B とても良い 7 6.6 - 7.5
B- 良い 6 5.6 - 6.5
C+ 平均的 5 4.6 - 5.5
C まあまあ 4 3.6 - 4.5
C- 努力が必要 3 2.6 - 3.5
D+ 劣っている 2 1.6 - 2.5
D 非常に劣っている 1 0.6 - 1.5
F 落第 0 0.0 - 0.5

過去のエージェンシー・レポートカードはこちらからどうぞ:

2020  | 2019 | 2018 | 2017 

(日本版は2016年5月に刊行)

 

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