IPA(Institute of Practitioners in Advertising)のポール・ベインズフェアー事務局長は、アクセンチュアの新事業は「メディア監査に関わる企業としてその役割に著しく矛盾する」と非難した。
「中立性を損なうだけでなく、顧客やエージェンシーの機密・財務情報にアクセスできる企業が、競合するメディアサービスを市場で提供することはあってはならない」と同氏。「透明性が重視される時代に、こうした明白な利益相反は容認できません」。
IPAはこの問題に関し、メディア監査を行う企業の倫理規定について英広告主協会(ISBA)と共同で検証中だという。
この動きに先立ち、メディア専門のコンサルティング企業やエージェンシーは、アクセンチュアのプログラマティックメディア事業への参入が「メディア監査サービスを提供する同社の役割に矛盾する」と批判していた。
メディアコム(MediaCom)でグローバル・チーフエグゼクティブを務めるスティーブン・アラン氏は、「アクセンチュアの計画は問題」とコメント。エビクイティー(Ebiquity)のアラン・ラザフォード会長は、「1つの企業が顧客やメディアエージェンシーの機密情報にアクセスを持つことに各エージェンシーは納得しない」と語った。
また、エージェンシーの契約履行を監視するファームディシジョンズ(FirmDecisions)のチーフエグゼクティブ、スティーブン・ブローデリック氏は、「IPAの動向でアクセンチュアは事業の見直しを迫られる」と言及。
だが、アクセンチュアは「利益相反にはならない」と主張、同一クライアントに「メディア監査とメディアサービスの両方を提供することはない」と反論する。
アクセンチュア・インタラクティブでプログラマティックサービスのグローバル責任者を務めるスコット・タイマン氏は、「メディア監査はアクセンチュア・オペレーションズの調達部門の専門チームが行う。他の事業部門と情報がシェアされないよう、機密情報や非公開情報の保護、ファイアウォールなどのセキュリティ対策はしっかり取られています」と語った。
新たなチーム「アクセンチュア・インタラクティブ・プログラマティックサービス」は、1)プログラマティックコンサルティングと社内プログラマティック 2)メディア戦略とメディアプランニング、メディアアクティベーション 3)アドテクノロジー導入とサポートという3分野の事業に取り組んでいく。
同社の欧州・アフリカ・中南米担当マネージングディレクター、アナトリー・ロイトマン氏は、「クライアントはメディアバイイングでもっと主導権を握りたいと考えている」と話す。その要因として、デジタルメディアにおけるサプライチェーンの信用問題や効率性の向上、そしてEU(欧州連合)が一般データ保護規制(GDPR)を導入したことで、より厳格なデータ管理が求められていることなどを挙げた。
同社は既にHP、ラディソン・ホテル・グループ、メリア・ホテルズといった多くの顧客にプログラマティックサービスを提供している。
クライアントとメディア監査という2つの異なる立場は、豪州でも議論を呼んでいる。アクセンチュアは同国でINGダイレクトのグローバルピッチを担当、ユニバーサルマッキャン(UM)が契約を獲得した。その3週間後、アクセンチュアの指定グローバル・メディアエージェンシーにUMが選ばれたと広告業界誌アドニュース(AdNews)が報道。アクセンチュアは「この選択はあくまでもクライアント側の判断」とする一方、INGダイレクトはコメントを発表していない。
(文:オマール・オークス 編集:水野龍哉)