Ryoko Tasaki
2021年5月28日

世界マーケティング短信:コミュニケーション業界の多様性は進んだか?

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:コミュニケーション業界の多様性は進んだか?

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
 

クリエイティブ業界にニューロダイバーシティーを

近年、ダイバーシティー(多様性)に取り組む企業が増えているが、多様性とは人種や性別だけの問題ではない。学習障害や自閉症スペクトラム、ADHD(注意欠如多動性障害)など発達障害を抱えた人々を採用する「ニューロダイバーシティー(脳神経の多様性)」も、注目を集めている。

発達障害を持つ人たちの就業支援や、雇用側のサポートを行う米NPO「クリエイティブ・スピリット」はオムニコムやインターパブリック、MRMなどと提携し、広告界での雇用創出に励む。採用を考える企業にはコンサルティングも行う。同団体の共同設立者であるローレル・ロッシ氏は「企業はパートナーを探している」、そして「雇用主は助けを必要としている」と語る。

同団体の調査によると、知的障害や発達障害を抱える米国人のうち、実に85%が職に就いていないという。日本においても、民間企業で雇用されている障害者数は、身体障害者(2019年、35.4万人)に比べて知的障害者(12.8万人)や精神障害者(7.8万人)が少なく、賃金も「知的・精神・発達障害を有する就労者は、身体障害者と比べても低い水準となっている」と野村総合研究所は指摘する。

 

カンヌライオンズが公式に謝罪

カンヌライオンズの学生向けプログラム「ロジャー・ハチュエル・アカデミー」の学部長を務めていたアブラハム・アセファウ氏が職を解かれ、多様性への配慮を訴えたにもかかわらず後任には白人が選ばれたことなどについて、先週ソーシャルメディア上で批判が集まっていた。

このことを受け、カンヌライオンズは正式な謝罪をウェブサイト上に公開。2021年度はファシリテーターの他に、同アカデミーの修了生をケニアとエクアドルから招いて共同運営すること、2022年度は全プログラムの講師陣の採用方法を見直して多様性を担保することを明らかにした。

 

あらゆる肌のトーンに合わせたカメラ機能

スナップチャットは、肌の色が濃い人向けに調整された新しいカメラ機能「インクルーシブカメラ」をリリースした。同社によると、以前のカメラは明るい肌の色に合わせて設計されていたため、撮影後の画像が明るく調整されたり、薄暗い中で撮影するとカメラが認識しなかったりといった問題があった。

 

アマゾン、映画製作大手を買収

米アマゾン・ドット・コムは、米映画製作大手メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)を84.5億米ドルで買収すると発表した。MGM社は、「007」シリーズや「ロボコップ」などの製作で知られる。同社を傘下に収めたアマゾンは、MGM社の膨大なコンテンツをプライム会員にむけて配信していく。

 

ADKと国連人口基金、パートナーシップ契約を締結

ADKホールディングスが、国連人口基金(UNFPA)とパートナーシップ契約を締結した。広告会社ならではの知見を活かし、UNFPAの活動をコミュニケーション面で支援していく。UNFPAは女性や少女の命と人権を守る取り組みを実施する国連機関で、世界約150カ国以上で活動を展開している。2002年には東京事務所が開設した。

ADKはブランディングの戦略パートナーとして、UNFPAの活動への認知を日本国内で広める支援を無償で提供する。UNFPA東京事務所長の佐藤摩利子氏は「ADKと協力し、UNFPAの優先的なグローバル課題やSDGsについて、社会の意識を高める取り組みを加速させることができるのを、とても心強く思います」と期待を寄せる。

 

オムニコム、この夏からオフィス勤務に戻す計画

オムニコムグループのジョン・レンCEOは、世界各地でCOVID-19のワクチン接種が進んだことを受け、オフィス勤務を中心とした働き方に戻していく計画を社内宛てのメールで発表した。時期は地域ごとの感染者数やワクチン接種率によって異なるが、米国、英国や欧州の国々ではこの夏から少しずつオフィスに戻り始め、ほとんどが初秋までには戻れると考えているという。また、オフィス勤務と在宅勤務、そしてそのハイブリッドの勤務体系について今後数週間で具体的な計画を策定する予定だ。

 

暮らしの中でのエコ活動を、ロボット一家が実践

イケアは英国で、サステナビリティーをテーマにしたCMを公開した。ロボットがごみを拾い、汚染物質を放出する工場ではトラックに戦いを挑み、座礁したタンカーから流出した重油を吸い上げるなど、映画「ウォーリー(WALL-E)」を彷彿とさせる。疲れ果てたロボットが家に帰ると、家族(もちろん全員ロボット)はエコバッグから取り出した食材で一週間分の料理を作り置きしたり、イケア製のおもちゃ入れで野菜を栽培するなど、暮らしの中で自分たちにできることに取り組む。


(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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