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今年も指摘された多様性の問題
カンヌライオンズの審査員は、人種の多様性をきちんと反映していない――このように問題提起したのは、ブラジルのクリエイティブ団体だ。同国の人口の半分はアフリカ系や混血であるにも関わらず、2022年の審査員として同国から選ばれた24名は、1名を除いて全員白人だという。
カンヌライオンズCEOのサイモン・クック氏に宛てられた公開書簡には、審査員の選出が簡単でないことに理解を示しつつも、このように記されている。「ブラジルのクリエイティブ業界や広告業界は、黒人のクリエイティブのプロフェッショナルに対する包括性やエンパワーメントに関して、ここ数年で大きな進歩を遂げてきました。この進歩に、カンヌライオンズのような国際組織が審査員の選出において相応していないのは残念なことです」。
カンヌライオンズをめぐっては昨年も、ロジャー・ハチュエル・アカデミーで多様性を欠く不透明な人事に批判が集まった。
自己肯定感の低下から子どもたちを守る
若者の自己肯定感を高めるプロジェクトを2004年から展開しているユニリーバの「ダヴ(Dove)」が、このたび「#DetoxYourFeed」を公開した。ソーシャルメディアにあふれる有害な美容情報の数々が、少女たちに与える悪影響を指摘する。制作はオグルヴィ。
動画に登場する少女の一人は「これまでに見たインフルエンサーのほとんどは、私にとても良い影響を与えてくれました」と発言。しかし彼女のフィードをスクロールしていくと、細いウエストや真っ平なおなかを強調したり、完璧な肌の実現方法などを紹介する動画が次々と現れ、隣に座る母親は言葉を失う。
すると、その母親の映像に音声を合成したディープフェイク動画が、ボトックスの有用性や空腹感を抑える粉末、歯の形をやすりで整えるなどといった美容ハックを語り出す。「私はこんなことを言わない」と母親は即座に否定。しかし少女たちは実際にこのような情報に日々さらされ、自己肯定感が低下しているのだ。「見せないようにはできないけれど、このことについて話し合うことはできる」というコメントに続き、「少女たちに最も大きな影響を与えるのは保護者だ」というフレーズと、保護者向けの資料が特設サイトからアクセス可能であることが記される。
同ブランドは1年前にも、一人の少女がフィルターを駆使してゴージャスな自撮り写真を作り上げる「リバース・セルフィー(Reverse Selfie)」を公開し、ソーシャルメディアが自尊心を傷つけることについて問題提起している。
グーグル、広告のより詳細なカスタマイズが可能に
グーグルは開発者向けに毎年行うイベントで、表示される広告をユーザー自身がより詳細に管理できるようになると発表した。今年内にローンチ予定の「マイ・アド・センター(My Ad Center)」では、従来の広告カスタマイズよりもさらに詳細に、見たい広告のテーマやブランドを選ぶことが可能になるという。
スナップ、ARショッピング機能を拡張
スナップチャット(写真投稿SNS)を手掛けるスナップ社(Snap)は4月末、AR(拡張現実)を使ったショッピング機能を拡張すると発表した。ブランドはカタログで既に使っている製品写真から3次元のARモデルを作成でき、ユーザーは自撮り写真を送ると、画面上で多くの衣服を簡単に試すことが可能になる。そして、さまざまなクリエイターやリテーラー、ファッションブランドの試着体験を一カ所にまとめたのが、このたび発表された「ドレスアップ(Dress Up)」だ。同社は以前からAR試着に力を入れており、グッチやディオールなどの商品をレンズ(フィルター)で試せる機能を提供していた。
同社の英国担当ゼネラルマネージャー、エド・カウチマン氏はCampaignに対し、このようにコメントする。「人々が無意識のうちにフィードをスクロールし、集中力が欠如しているといわれる中、人々の関心を引くことは非常に困難です。このような状況を埋め合わせる格好の技術がARだと思います」。
(文:田崎亮子)