Nicola Davies
2023年7月13日

「キダルト」トレンドとは何か?

それを大人になりきれない子供と呼ぼうと、あるいは過去の趣味に過ぎないと言おうと、人々がみな若い頃に戻っているのは間違いない。

「キダルト」トレンドとは何か?

今年最大のイベントが、まだ始まってもいないことに気づいているだろうか?

バービーがいよいよ7月後半(日本は8月11日)スクリーンに登場する。バービーファンは今年いっぱい熱狂に包まれることだろう。自撮り用AIアプリの助けを借りてバービーになりきったり、ヴォーグの表紙を飾ったバービー(主演女優マーゴット・ロビー)の写真をうっとり眺めたりしながら。そして今、「ワールド・オブ・バービー」展が開催され、この象徴的な着せ替え人形を現実世界にもたらそうとしている。これは、キダルト(KIDとADULTの合成語、子供の趣向を持つ大人)のトレンドを示す確かな証拠であり、あきらかに、私たちがみな待ち望んでいたものだ。

それを大人になりきれない子供と呼ぼうと、あるいは過去の趣味に過ぎないと言おうと、人々がみな若い頃に戻っているのは間違いない。この偏愛は、単なるトレンド以上に深く人々の心を捉えている。この不確かな世界にあって、子供の頃のような安心感と幸福感に包まれたいという想いがあるからだ。

それも無理はない。大人になるのは本当につらいことだ。口を開けば、金利やインフレ、住宅ローンのタイムボム(時限爆弾)の話ばかり。

インディペンデント紙によれば、マクドナルドの大人向けハッピーセットのおもちゃが6桁の値段で取引されているのも、Lystがムイムイのバレエシューズを「プロダクト・オブ・ザ・イヤー」に選んだのも、ドラマ「ウエンズデー」が、ネットフリックスの最高視聴者数を更新したのも、そのためなのだという。

肝心なのは、私たちにはちょっとした逃避が必要だということだ。だから、現代カルチャーでキダルトたちと共鳴し、つながりを築けるブランドが、この市場を支配することになるだろう。

しかし、どうやってつながりを築けばいいのか?

自分の中の子供の感覚に目を向ける

批判はいったん脇に置いて、自身の心に潜む子供心に目を向けてみよう。

おままごとをしてみる。馬鹿げた質問をしてみる。新しい世界を夢見る。それは子供っぽいことではなく、子供のような好奇心で世界を見るということだ。

MCHFの極小ハンドバッグも、ジャレッド・レトがメットガラで着用した巨大なキャットスーツも、ファッション誌ハイスノバイエティがキュレーションしたコカ・コーラ×ディズニーランド・パリのコレクションも、ファッションは子供時代の魔法を思い起こさせてくれる。そして、大人のルールに縛られなければ、より創造性がふくらむことを証明している。

ノスタルジーから「ニュースタルジー」へ(懐かしさの中に新しさを)

大人になるということは、絞り染めのTシャツからシュシュの髪飾りに至るまで、幼い頃の恥ずかしいものがなぜか懐かしくなるということだ。

ノスタルジーは、世界がもう少しシンプルで、もっと楽しそうだった頃に私たちをタイムスリップさせてくれる。しかし、退屈な映画の再放送や、昔流行ったブランドものなど、ノスタルジーにはつまらないものも多い。

ノスタルジーは、決して無難な選択肢ではない。ノスタルジーをうまく取り入れているブランドは、古いものと新しいものをうまく融合させ、子供の頃の思い出に敬意を払いながら、今の文化に共鳴する現代的なアップデートを提供している。言うなれば、ニュースタルジーだ。

Netflixのドラマ「ウエンズデー」は、ティーン向けの名作を大人向けに再構成したものだ。ムイムイはバレエシューズをハイファッションにアレンジしている。バーバリーは@sylviandramaと提携し、TikTok世代向けのローラバッグを発表した。

単なるノスタルジーにはオリジナリティがない。ニュースタルジーは、ブランドの視点をシフトさせ、未来へとつなげる。

遊び心を忘れない

ゲームはもはや、地下室にこもる10代の少年たちだけのものではない。今やゲームは、映画と音楽を合わせたよりも大きな産業だ。ゲーマーの平均年齢は35歳に達する。ゲームをすることで、子どもたちはおもちゃを片付けた後でも、遊びの楽しさを再発見することができる。

ゲームには境界がないから、子供たちにとってより自然な環境となる。誰にでもなれる。不可能が可能になる。子どもの想像力と同様、ゲームにおけるクリエイティブの可能性も無限だ。

RobloxからFortniteまで、ゲームプラットフォームは、ブランドが独自の顧客体験を創造できるように、プラットフォームを開放している。しかし、ただそこに露出するだけでは不十分だ。ブランドはこのスペースで何かエンターテインメントを提供する必要がある。

キダルトの時代に、真面目に考えすぎるブランドほどつまらないものはない。カンターの調査によると、広告業界は年々面白くなくなっているという(しかし広告効果は低下してきている)。

今こそ、子供時代と大人時代、過去と現在、URLとIRL(現実世界)の境界線を歩きながら、キダルトのトレンドに真剣に取り組み、成長を遂げるべき時ではないだろうか。


ニコラ・デイヴィスは、英国の独立系クリエイティブ・エージェンシー、エクスポージャーの戦略責任者

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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