James Halliwell
2022年2月25日

「グリーンウォッシングPR」、改めて槍玉に

大手化石燃料企業は美辞麗句を並べるだけで、脱炭素に向けた行動をほとんど取っていない −− 最新の調査結果が発表され、グリーンウォッシングに加担するエージェンシーに再び厳しい目が向けられている。

写真:クリスチャン・ストルト・フォトグラファ(Getty Images)
写真:クリスチャン・ストルト・フォトグラファ(Getty Images)

この調査報告書は査読付き科学雑誌『プロスワン(Plos One)』に掲載された。それによると、大手化石燃料企業は「エコフレンドリーな言葉を使う頻度が急激に増えた」が、「クリーンエネルギーへの転換に使うコストはごくわずか」だという。

「これら企業はクリーンエネルギーによるビジネスモデル確立に向け『多額のコストを費やし、様々な行動を取る』ときれいごとを言っているが、実際は行動が伴っていない」

報告書のタイトルは、「BP(旧ブリティッシュ・ペトロリアム)、シェブロン、エクソンモービル、シェルの『クリーンエネルギー宣言』:言葉と行動、支出の不一致」。特定のPRエージェンシーや広告会社には言及していないが、こうした企業のキャンペーンを請け負うことでグリーンウォッシング推進の共犯者だとしている。

さらに、「言行不一致という点で米大手(化石燃料企業)は欧州大手に急速に近づいている。行動が伴わないことでは、特にエクソンモービルが目に余る」とも指摘。

「特にBPとシェルは気候やCO2削減、エネルギー転換に関連する言葉を急激に多く使用するようになった。同じく脱炭素化・クリーンエネルギー戦略に関する言及も増えている。だが実際は語るのみで、具体的行動が伴っていない」

「ゆえに我々は、クリーンエネルギーへのビジネスモデルの転換はいまだ成されていないと結論づける。『多額のコストの支出』も『様々な行動』も言葉通りには実現していない。行動が伴うようになるまで、これら企業はグリーンウォッシングという十分な根拠に基づく非難から逃れられない」

この報告書を受け、シェルとエクソンをクライアントに持つ世界最大のPR会社エデルマンのスポークスパーソンはPRWeekに対し、以下のように語った。「気候・環境問題は我々を含め、全ての人々に共通する課題です。解決のためには業界や地域、世代を超えた前例のないコラボレーションが求められる」

「今後目指すべき道のりには多くの異なる意見がありますが、我々は今後もクライアントに寄り添ってエネルギー転換を促進させ、この重要な課題に取り組んでいきたい」

1月、エデルマンは2カ月にわたったクライアントのレビュー(見直し)の結果を発表、今後取引していく企業の基準を明確化した。

昨年11月にはリチャード・エデルマンCEOが自身のブログに以下のように投稿。「気候変動への影響を熟慮し、『エデルマン・インパクト』を作り上げました。これはESGやパーパス(会社の存在意義)、サステナビリティに関する既存の提言に専門知識を活用していくための、新しいグローバルな取り組みです」

そして、気候変動対策のグローバルヘッドとしてロバート・カサメント氏を指名。

レビュー後、同社は以下のコメントを発表した。「今後いくつかのクライアントと袂を分かつことになるかもしれない。個別のクライアントとの関係や業務に関しては守秘義務の関係上、コメントを差し控える」

傘下のエージェンシーがBPとシェブロンをクライアントに持つWPPは、この報告書に関するコメントを出していない。

ESGとパーパスのコンサルティング会社ブラード(Blurred)の共同創業者で、チーフストラテジーオフィサーのスチュアート・ランバート氏は、「PR会社にとっては選択肢がシンプルで限られているゆえに、この問題は複雑」と話す。「確かなのは気候変動を否定したり、それに関する誤情報を流したりする企業とは取引をすべきでないということです」

「率直に言うと、クライアントに対し少しでも疑念を抱くようなことがあればそれは警告のサイン。具体的なプランもなくネットゼロを掲げるのであれば、私にとっては危険信号です」

「こうした規範はすでにIPRA(国際パブリックリレーションズ協会)やCIPR(英国王立広報協会)の倫理規定にある程度組み込まれている。だがメンバー企業の多くは何の罰則も受けることなく、化石燃料企業との取引を続けています。この業界に必要なのは、気候変動に関する実効性ある規定なのです」

フェアトレード・インターナショナルと協働するコミュニケーションエージェンシー、グリーンハウスの共同ディレクターを務めるジェニー・ブリッグス氏はこう述べる。「気候や環境、生物多様性を脅かす活動を続ける大手化石燃料企業は、一貫してグリーンウォッシングに関わってきた。これは誰もが長年知る事実です。この報告書は改めてそれを証明した。大きな失望を感じます」

「(報告書が)自然環境を破壊する企業をサポートし続ける業界人への、最後の警鐘であってほしい」

「我々は現在も将来も、化石燃料企業や汚染を生む企業との取引はしません。注力するのは、脱炭素経済に向けたポジティブな変革を生み出し、それを推進する企業・組織とのパートナーシップです」

ソーシャル・ネット・ゼロ(デジタルエージェンシー『ソーシャル』のスペシャリストコミュニケーション部門)のディレクター、アンドリュー・キャメロン・スミス氏は、「今が転換期であることを忘れてはならない」と指摘する。

「ソリューションは一夜では成し遂げられません。変革が進めば、テクノロジーのさらなる活用とともに、いかに消費者を納得させられる企業活動を行うかということに主眼が移っていくはず」

「ネットゼロを実現するにはスケールの大きな変革が必要です。オープンで誠実なコミュニケーションを行って、消費者から信頼を得なければならない」

PR・広告界の有志によるプロジェクト「クリーン・クリエイティブス」をクライアントとともに推進するマーケティングエージェンシー、キボキフト(Kibbo Kift)の創業者でCEOのサム・ナール氏は、「この報告書が証明しているのは、どんなに善意のあるコンサルティング会社でも環境破壊を進める化石燃料企業のエネルギー転換はサポートできないということ。もはや白か黒かの問題なのです。時代に逆行しているか、否かという」

「BP、シェル、シェブロン、エクソン……こうした企業と契約することには吐き気を覚える。しかし業界の主要エージェンシーはそれを行い、社会的責任も一切問われない。今こそ業界は誠実に振る舞い、化石燃料企業からの仕事を拒否して、利益よりも倫理観を優先すべきです」

「PR会社はこの報告書を機に、もう二度とグリーンウォッシングを推進したり、間違っても生み出したりしないような方針を定めるべき」というのはアンビシャスPR社のディレクター、サラ・ウッドハウス氏。

「この問題を否定するのではなく、我々は事実の完全な解明を進め、適切なアドバイスを受け入れなければならない。クライアントが言行不一致であれば、関係を断つ覚悟が必要です」

「我々の業界に衆目が集まっている今こそ、我々自身が問題の一部になるのではなく、ソリューションの一部を担うべきなのです」

(文:ジェームス・ハリウェル 翻訳・編集 水野龍哉)

提供:PRWeek

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