Paul Mottram
2025年2月13日

業界が取り組むべき、気候変動対策とは

依然として環境アクティビストの対応に苦慮する大手エージェンシー。「最も有効な対策は、カーボンプライシングの重要性を訴えること」と気候問題の専門家は訴える。

写真:Getty Images
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* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

国連のグテーレス事務総長が発した公式声明、広告業界の有志団体「クリーン・クリエイティブス」が毎年発行するFリスト……気候変動対策では、この業界の全てのエージェンシーが常に標的となり、叱咤を受ける。それに対し、我々コミュニケーションのプロたちができるのはせいぜい「公正な公聴会の開催」を訴える程度で、有効な対応策はほとんど打ち出せていない。

もちろん、この難問に単純な答えはない。気候変動はシステム的な問題であり、解決策もシステム的でなければならない。単に石油会社をボイコットしても、便利で手頃な価格のエネルギーを求める世界の需要を変えることはできない。だが確かなのは、我々マーケティング業界がより良い施策を実行しなければならないということだ。

そのためのアプローチの1つは、我々が日常の行動により責任を持つことだろう。現在、少なくとも3つの団体が様々な形でそれを実践しようとしている。

 

米国ではNGO「Potential Energy Coalitionがデータに基づく画期的手法で、気候変動に対する人々の考えと行動を変えるコミュニケーションに取り組んでいる。また「Conscious Advertising Networkは、マーケターとメディアプラットフォーム双方に気候変動への対応基準を設定した。さらに英国のNGO「Purpose Disruptorsは、広告業界がどうすればより責任のある行動が取れるか、再定義する野心的な試みを行っている。

こうした取り組みは、広告・PR業界の人々により良い仕事をさせる、あるいはより良いクライアントと仕事をさせることを目的とする。もちろん、それは良いことに違いない。しかし現実を見据えてみよう。マーケティングがより責任を担っても、気候問題は解決できない。できるのはせいぜい、業界が生み出す弊害を最小限に抑えることくらいだ。

それよりも我々が本来なすべきこと −− 一般市民に考えてもらい、肌で感じさせ、行動を起こさせる −− で問題の根源に働きかければ、もっと直接的な変化を起こせるのではないか。

気候変動の優れた解決策としてすでに実証されているにもかかわらず、表舞台でほとんど話題に上らないものがある。それはカーボンプライシングだ。この取り組みをもっと普及させれば、多くのブランドが掲げる全てのネットゼロ公約よりも多大な影響を生み出せるはずだ。

カーボンプライシングの大きな利点

炭素排出のコストを税金や排出量取引制度で高く設定し、もっと直接的に反映させれば、消費者や企業が毎日行う何十億という意思決定に膨大な影響を及ぼす。人々はみな、炭素を含まない、あるいは排出量の低い手段を自然と選ぶだろう。それによって得られる何十億ドルもの資金を消費者に再分配し、自ら意思決定できる自由を与えたり、低所得国のエネルギー転換資金に充てたりすることができる。

また、再生可能エネルギーや二酸化炭素の除去、それ以外の新たな技術に向けて民間投資を促進することもできるだろう。ある気候ジャーナリストが述べたように、「気候危機の解決策として、カーボンプライシングはあらゆる要素を促進できる」のだ。

この素晴らしい解決策に唯一欠けているのは、市民の認識と理解にほかならない。ではなぜ、まだ広く普及しないのか。理由はいくつか挙げられる。1つは、構図が複雑であること。2つめは、市場全体の価格を上昇させること(ただしそのコストは市民への手当で補うことができる)。そして3つめは、再生可能エネルギーや炭素市場のように、積極的に取り組む企業がほとんどないこと。利益を上げにくい取り組みのため、推進派はどうしても経済学者やNGOに偏ってしまうのだ。

しかし、だからこそ我々の出番がある。我々の業界はアイデアを簡素化し、価値を伝え、人々の話題にすることを得意とする。世界が今最も必要としている手法の1つが、この業界が最も得意としていることなのは驚くべきことだろう。

だからと言って、我々が世界規模で公共政策を転換させることはできない。だが、それでいい。業界が協力し合ってカーボンプライシングへの市民の関心を高め、喧伝されている効果の低い他の解決策と同じレベルの話題にできれば、結果的にポジティブな進化への貢献となるだろう。

確かに、クリーンであることは容易ではない。気候変動や顧客ポートフォリオについてのエージェンシーの声明は、すでに厳格な監視下にある。たとえワシントンで風向きが変わったとしても、エージェンシーの従業員たちはそう簡単に経営幹部の責任を見逃さないだろう。

率直に言って、これまで我々の業界の対応は十分ではなかった。しかし問題は、一部のエージェンシーが化石燃料企業と仕事をしていることではない。有意義で影響力の強い取り組み(一部の小さな取り組みを除いて)を、我々は何もしてこなかったことなのだ。

市民の間でカーボンプライシングへの意識を高めることは、極めて大きな役割を果たす。そのために人材や資金を活用することは、「化石燃料の利用をやめよう」と虚しい主張をする人々から議論の主導権を取り戻すチャンスとなる。そして、我々が気候変動対策で有意義な役割を果たしていることを、自社の従業員やステークホルダー(利害関係者)、そして自分の家族に対して明確に示せるのだ。


ポール・モットラム氏はフリーのコミュニケーションコンサルタント。前職はコミュニケーションエージェンシー「ゼノ・グループ(Zeno Group)」のアジア太平洋地域担当プレジデント。

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