ブランドのメモラビリティ(想起力)を高めるためには、Cookieデータを利用したオーディエンスベースの広告よりも、ウェブページのコンテンツ内容をベースとしたコンテクスチュアルターゲティング広告の方が効果的であることが、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science:IAS)とニューロ・インサイト(Neuro-Insight)の調査で明らかになった。
両社が、7月に18歳~60歳の60人の対象者からニューロメトリックデータを収集して実施した調査によると、「コンテンツにマッチした広告」(ウェブページのコンテンツと関連性が高い広告)の方が、マッチしていない広告(コンテンツ内容に合っていない広告)と比べて、ユーザが記憶している確率が高かったという。
たとえば、コンテンツにマッチした広告は、マッチしていない広告に比べて、詳細情報、行動を促すメッセージ、ブランディング要素などの記憶率が23%高かった。また、より幅広いテーマや全体的なブランドストーリーなどの「包括的な記憶」も27%向上するとの結果が出ている。
ただし、コンテクスチュアル広告のタイプによっては、その効果も異なってくる。特定の領域に合致した広告、たとえば記事に書かれた特定の問題に対する直接的な解決策を提示する広告は、マッチしていない広告と比べて、広告のディテールを覚えてもらう効果が36%、感情を昂揚させる効果が43%高くなった。公開直前の映画チケット販売の広告を、映画の公開情報に関する記事に掲載するなどが、このような広告展開の一例だ。
これに対し、テーマにマッチした広告、つまり夏のアクティビティについての記事に掲載されたサマーカクテルの広告など、同載されたコンテンツと同種のテーマを扱った広告は、包括的記憶の形成において最も高いパフォーマンスを発揮するなど(40%以上)、広告の全体的イメージに関する記憶力を高める結果を残した。
今回のデータは、コンテクスチュアル広告が単に効果的であるだけでなく、サードパーティCookieデータを利用したオーディエンスターゲティング広告よりも効果的である可能性を示唆していると、IASの最高マーケティング責任者を務めるトム・マーロー氏は言う。
マーロー氏は、「我々は、消費者がリードするプライバシーファーストの世界に向かっている。ほとんどの人は、何か見返りがない限り追跡されることを望んではいない」と指摘して、「オーディエンスをターゲットにすれば、適切な人にリーチできるかもしれないが、そのタイミングは適切でない場合もある。だが、コンテクスチュアル広告は、その人とより意味のある関係性を築くのに適した機会を(マーケターに)提供してくれる」と述べた。
また、アドブロックの利用が増えているとは言え、消費者は、広告との価値交換によってコンテンツが無料で利用できることを理解しており、広告をおおむね受け入れていると、マーロー氏は付け加えた。
今、グーグルのChromeブラウザで2023年に廃止されるサードパーティCookieに代わる手段として、コンテクスチュアル広告に注目が集まっている。Cookie以外のソリューションを探し求めているマーケターらは、コンテクスチュアルターゲティングをプライバシーに配慮した代替手段のひとつとみなしはじめているのだ。
機械学習の導入によって、コンテクスチュアル広告はますますインテリジェントになっている。今では、単純なキーワード指定から、包含リスト、除外リストを用いたターゲティングまで、あらゆる手法に対応してきている。