Spikes Asia
1 日前

スパイクスアジア2025 : 味の素「フライパンチャレンジ」の舞台裏

昨年のスパイクスアジアで2つの金賞を獲得した、味の素のキャンペーン「冷凍餃子フライパンチャレンジ」。制作を担った味の素冷凍食品製品戦略部・駒木根理花氏と本田事務所の本田哲也氏に話を聞いた。

スパイクスアジア2025 : 味の素「フライパンチャレンジ」の舞台裏

スパイクスアジアは、アジア太平洋地域の優れたクリエイティビティーを称えるアワードだ。独立系PRエージェンシー本田事務所とそのクライアントの味の素冷凍食品は、昨年のスパイクスで大きな存在感を示した。

Campaignは味の素冷凍食品製品戦略部マーケティング担当の駒木根理花氏と、本田事務所の本田哲也CEOにインタビュー。冷凍餃子フライパンチャレンジでスパイクスに応募した理由、 日本の消費者からなぜ注目を集めたのか、顧客との関係性への影響、スパイクス受賞の意義などについて尋ねた。

2021年に初めて同様のキャンペーン(The Dumpling Debate)をカンヌライオンズに応募しましたね。その後、アワードに対する戦略やアプローチはどのように進化しましたか?

本田哲也: ブランドとエージェンシーの合意として、国内外のアワードに積極的にエントリーしていこうという機運になりました。取り組み自体が評価されニュースになることに意味を感じています。

スパイクスアジア2024に「フライパン・チャレンジ」を優先的に応募したのはなぜですか?

本田哲也: 餃子というブランドへの親和性やキャンペーンのユニークさが、アジアでは理解されやすいのではないかと思ったからです。

このキャンペーンのために、限られた時間の中で、くっつきにくい餃子を開発することはどれほど困難でしたか?

駒木根 理花: 私たちは、50年間餃子を作り続けています。その中で50回以上の改訂を繰り返し、日々餃子と向き合ってきました。 しかし、今回は餃子ではなくフライパンに張り付く課題でしたので、食品の開発だけではなくフライパンの状態を見るという事が初めての経験でもあり、また3520個も集まったことで膨大な数のフライパンを見ることがとても大変でした。

独立系エージェンシー/ブランドとして、スパイクを獲得することにどのような意味がありますか?

駒木根 理花: PRコミュニケーションの評価がなかなか定量的に捉えることが出来ない日本社会の中、権威あるアワードにおいて専門家の皆さまに評価いただくことで、活動が間違っていないことと、私たちの思いが専門家には伝わっていることを実感できました。

本田哲也: キャンペーンのコンテクストや文化背景がアジア全体でも評価されるということがわかり自信につながりました。エージェンシーとしての我々のレピュテーションにも大きく寄与するものです。

他のマーケットが日本のクリエイティビティから学べることは何ですか?

駒木根 理花: 日本でもこんなPRをやっているんだという事、日本人の繊細さと大胆さ。真摯な姿勢をぜひ感じていただきたいです。

本田哲也: 日本特有のカルチャーやクオリテイは世界的に人気があります。その背景にどのような創造的な考え方があるのか、を知ることは応用性があると思います。

フライパン・チャレンジ」が日本の消費者の注目を集めたのはなぜだと思いますか?

駒木根 理花: 最初は1生活者の声にそこまでするのか!という驚きによって注目を
集めた部分が大きかったと思います。その後は生活者の記憶が薄れな
いうちに、フライパンチャレンジとしてプロジェクトを立ち上げ、
プロジェクトの特設ページで研究の進捗などをご報告しつつ
1年以内に製品リニューアルへと繋げられたので、
「そこまでやるのか味の素!」という話題に対し、生活者の興味関心が
薄れないうちに定期的によいニュースをお届けできたことが大きいのかなと思います。

フライパン・チャレンジ」は、味の素の物語や消費者との関係にどのような変革をもたらしましたか?

駒木根 理花: 元々弊社には、製品をよりよいものにするにはどうしたら良いかを考え、改良を続ける、”永久改良”の意識が深く根付いています。今回の件に限らずお客様のお悩み・困りごとを解決し、より調理や食事の時間を楽しんでもらうためには何ができるのかを、会社全体で考えているのですが、中々そういった会社内の伝統や想いを伝える機会は限られているので、今回フライパンチャレンジという取組を通して、多くのお客様にそういった企業姿勢や製品改良の裏側にある熱い想いを知って頂けたことは純粋にうれしかったです。
また皆様から送って頂いたフライパンの多さや、一緒に送って頂いたお手紙を読ませて頂く中で、味の素冷凍食品を応援してくださっている方がたくさんいて、お客様との絆を実感できたことも非常にうれしかったとともに、よりよい製品を作り続ける志が高まりました。

オーディエンスに深く響くインパクトのあるキャンペーンを推進するエージェンシーとのパートナーシップを成功させるために不可欠な要素とは何でしょうか?

駒木根 理花: 隠すことなく本音で会話し、かっこつけずに実態をさらけ出すこと。背伸びをせずに企業として、PRチームとして出こることを丁寧に進めたことに尽きると思います。また、その気持ちを深く理解し表現したいただいたエージェンシーのセンスと努力によるものと感謝しています。

このような大胆なアイデアを売り込む際、他のクリエイターにどのようなアドバイスができますか?

本田哲也: アイデアのユニークさだけではなく、それを実行した際に人々がどのよう反応して、それがどのようにブランドに影響を与えるかまでの考察が必要だと思います。

スパイクスアジアへの参入を検討している他の独立系PRエージェンシーにアドバイスをお願いします。

本田哲也: 現在は、必ずしも大きなメディア予算がなくとも、秀逸なアイデアさえあれば影響力のあるキャンペーンが設計できます。このことは、独立系のPRエージェンシーには大きなチャンスでありアドバンテージだと思います。

エントリーの準備はできましたか?スパイクス・アジア・アワードへのエントリーは www.spikes.asia/awards からどうぞ。

関連する記事

併せて読みたい

1 日前

博報堂と博報堂DYメディアパートナーズが4月に統合

博報堂DYホールディングス傘下の博報堂と博報堂DYメディアパートナーズが、今年4月に統合する。これは広告業界にとって、どのような意味を持つのだろうか。

2025年1月10日

世界マーケティング短信:メタ、米国でファクトチェックを廃止

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2025年1月08日

プライバシー重視の時代のデジタル広告 「コンテキスト」の潜在力

データプライバシーへの消費者の意識はかつてなく高まっている。消費者を煩わすことなく、いかに効果的に広告を配信するか。その切り札とも言える、コンテキスト広告の可能性を探る。

2025年1月08日

AIの視点から見た、2024年のマーケティングの課題

プライバシー問題、経済の混乱、そして移り変わりの激しいデジタルの世界――。トリニティP3(Trinity P3)の創設者兼CEOであるダレン・ウーリー氏が、2024年のアジア太平洋地域におけるマーケティングの最重要課題をAIにランク付けさせた。