Simon Gwynn
2021年10月29日

ブランドの未来はメタバースにある:フェイスブック幹部

フェイスブックの未来ビジョンの中核にあるのは、クリエイター、コマース、そして「次のコンピューティングプラットフォーム」だ。

IAB UK Digital Upfrontsで講演するニコラ・メンデルソーン氏
IAB UK Digital Upfrontsで講演するニコラ・メンデルソーン氏

ブランドやパートナー各社は、「手のひらに収まる発想を超えた未来」について考え始めなければならない。フェイスブックのグローバルビジネスグループのバイスプレジデントを務めるニコラ・メンデルソーン氏は、10月に開催されたIAB UK(英国インタラクティブ広告協議会)のDigital Upfrontsセッションでこう訴えかけた。

メンデルソーン氏はこう語る。「歴史を振り返ると、1950年代に近代的なコンピューティング技術が誕生して以来、およそ15年ごとに新しいコンピューティングプラットフォームが登場してきた」

「そして登場してきたのは、2007年に発売されたiPhoneが最後だ。つまり今後数年のうちには、また新しいコンピューティングプラットフォームが登場することになるだろう」

フェイスブックの創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグ氏は2021年夏、自社を「メタバース企業」に変えたいと語った。メンデルソーン氏は、そうしたコンセプトの中心にあるのが、オキュラスのVR(仮想現実)ヘッドセット、ニューラルリストバンド、最近公開されたARグラス「レイバン・ストーリーズ(Ray-Ban Stories)」などの開発だと説明した。

「当社のメタバースへのコミットメントを数字の規模感で示すなら、現在約1万人がVRに取り組んでいるということになる」とメンデルソーン氏は言う。

同氏は、講演で強調した他の2つの領域、クリエイターとコマースについて、こう補足した。「この2つは、より大きな目標であるメタバースの一部であり、デジタル空間で人々が一緒にいられる仮想環境であるメタバースの構築を補う存在だ」と。

ただし、メタバースは「フェイスブックが単独で構築するものではない」という。他にも多くのプラットフォーム、たとえばエピックゲームズの「フォートナイト」やゲーマー向けコミュニティから発展した「ロブロックス」、ブロックチェーンを基盤とする「ディセントラランド」などが、消費者の時間と関心を集めようと仮想空間で競っている。

「また、メタバースは一朝一夕に構築できるものではないが、ブランドは、今からこれに目を向けておくべきだと考えている」とメンデルソーン氏は言う。「なぜなら、メタバースの構築には、ブランドも一役買うことになるはずだからだ。そして、メタバースを理解するための最良の方法は、まずはその主要な要素技術を試してみることだ」

メンデルソーン氏はメタバースの話に入る前に、ブランドにとっての、クリエイターの重要性の高まりやソーシャルプラットフォームやバーチャルプラットフォームを使ったコマースの機会についても語っていた。

同氏は、ベンチャーキャピタル投資企業シグナルファイア(Signal Fire)の推計に言及し、自分をクリエイターだと考えている人が世界中に5000万人もいることや、VC各社が米国だけで、今年7月までにクリエイターに特化した新興企業に20億ドルを投資したというデータなどを紹介した。

メンデルソーン氏はこう指摘する。「この10年間で、そうしたクリエイターたちは、フォロワーたちとコミュニティを形成し、深いパーソナルな関係を築き、さらにはブランドとも興味深い関係を築くことに成功してきた」

「ロックダウンによって誰もが孤立しているなかでは、従来のように広告を制作することは驚くほど困難だった。しかし、一方でクリエイターたちは、その独自のコンテンツによって、ブランドがメッセージを発信するのを支援し、ごく短期間でこのギャップを埋めることを可能にした」

「それらの広告がうまく機能したのは、クリエイターが持つリーチではなく、彼らが持つオーディエンスとの深いつながりによるものだ」

そして、方程式の残りの部分は、ブランド側もそうしたクリエイターを活用して販売促進することを求めていたということだ、とメンデルソーン氏は指摘した。「この1年半のあいだに、クリエイターが提案したものを気に入って、それを買ったという人が何人いるだろうか?」

「私たちの5人に1人はショッピングのヒントを得るのにソーシャルメディアを利用している。欧州を除くと、これがさらに5人に2人に近い数字になる」

同氏によると、中国では、インターネットユーザーの3人に1人が、「フェイスブック・ライブ」などの動画配信を利用したライブショッピングを経験しているという。

メンデルソーン氏は、クリエイターの活用事例として、フィットネステックブランドのペロトンが、2月の米国黒人歴史月間に合わせて、モニカ・アハノヌ氏を含む黒人デザイナー4人と、共同で制作したカプセルコレクションを紹介した。

「ペロトンは、モニカを自社のインスタグラムに招待し、そのビデオ配信の中で、ペロトンのスタッフも交えて彼女の作品について語り合ったが、そのビデオはショッパブル仕様になっていた。つまりあなたは、ビデオでモニカの話を聞きながら、表示されているアイテムを選んでクリックするだけで、すべてを購入できるのだ」

ここ数週間、フェイスブックは厳しい批判にさらされている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に掲載された、内部告発者フランシス・ホーゲン氏がリークした文書に基づく一連の暴露記事がその理由だ。フェイスブックは今、存続に関わる試練に直面していると言えるかもしれない。

フェイスブックは、「安全よりも利益」を優先している、というホーゲン氏の指摘を否定し、インスタグラムが、10代の若者のウェルビーイング(心身の健康)に与える影響などの問題に複数の対策を講じていることを説明した

10月に現在のポジションに昇進したメンデルソーン氏は、講演のオープニングでこう語った。「フェイスブックの未来はどうなるのか、そして、広告主にとってはどうか、という質問をよく受けるが、その答えは多様にならざるを得ない」

「それはフェイスブックが、多様な人間の本性そのものを反映しているからだ。人々の本性が変化するのに合わせて、当社のプラットフォームもそのニーズに適応していかなければならないだろう」

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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