南米ペルーと聞いて、多くの日本人がイメージする観光名所といえば、マチュピチュやクスコの街、ナスカの地上絵といった世界遺産や、世界最高地にあるチチカカ湖だろう。だがネット検索で出てくる情報といえば、日本からの遠さや、高山病への対策の数々。旅の難易度がとても高そうで、「いつかは行ってみたい」から一歩踏み込めない。
このようなイメージを払拭すべく、ペルー政府観光庁がブランディングを開始した。メッセージは「一生に一度は行きたい一週間」で、一週間で堪能できる旅程がコンセプトだ。
ブランドサイトを訪れてみると、政府機関の対外向け観光メディアらしくないデザインが目を引く。旅に役立つ膨大な情報を読み込むというよりは、パッと見てインスピレーションを得ることができる構成になっている。
まず、日本とペルーの意外な関係性を伝える豆知識が、赤と白で迫ってくるように配置されている。距離の遠さが強調されるペルーだが、「ペルー料理にタコを持ち込んだのは日本人」「マチュピチュ村の初代村長は日本人」など、心理的な距離感をグッと縮めるような話題ばかりだ。
そして名所をめぐる2本の動画には、SNSで人気を誇るモデルとフォトグラファーを起用。両者のインスタグラムのストーリーズでは、宿から見える路地や、移動中の車窓など、旅行中の身近でリアルな風景を垣間見ることもできる。
動画内で訪れた15カ所は、写真でも一覧することが可能で、その彩りはまさにインスタ映え。都市部から壮大な自然まで幅広いが、写真に添えられた拠点名はリマ(5カ所)とクスコ(8カ所)に集中しているため、具体的な旅行プランを想定しやすい。
企画制作を担当した猿人のクリエイティブディレクター、佐藤光仁氏はリリース内で「想像もつかないような凄まじいまでの絶景や魅力が数多くあるにも関わらず、日本ではまだあまり知られていません。そして意外と短期間で、高額でなくとも旅行できることも知られていません」とコメント。フィクションではない、リアルなペルー旅行を映像化することを追求したという。
Campaignの視点:
いくつもモデルコースを載せ、見どころをあますところなく紹介する観光誘致サイトは数多く存在するが、このサイトは「意外性」と「一週間」を軸に、潔く情報を絞り込んでいる。動画やストーリーズに登場するのは20~30代の男女2名のみで、ファミリー層もグループ旅行もと欲張った見せ方をしていない。だが、難易度が高そうというペルー旅行のイメージを覆しながら、普遍的な魅力を幅広い層に訴求する内容になっている。アクセスの良い都市部だけでも満喫できそうな見どころの数々、そして一週間という現実感のある休暇日数も、「いつか行ってみたい」から「自分も行ってみよう」と検討を促してくれる。
(文:田崎亮子)