Ryoko Tasaki
2019年12月20日

世界マーケティング短信:しなやかに困難と向き合う

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする

焦げた木の枝や自転車などで作られたクリスマスツリー
焦げた木の枝や自転車などで作られたクリスマスツリー

森林火災の残骸でつくられたクリスマスツリー

豪州では、高い気温や強風、乾燥によって大規模な火災が猛威を振るった。この火災で焼け焦げた木の枝や自転車、家財道具などで作られたクリスマスツリーが、シドニーのウィンヤード公園に出現。ツリーの下にはプレゼントの箱が積まれており、そこに取り付けられたQRコードから、豪州赤十字社に寄付することができるというもの。企画はDDBオーストラリア。


苦境に立たされる香港の広告・メディア業界

長引く抗議活動によって、香港の消費者の購買意欲が低下し、香港経済は縮小傾向だ。香港のメディア業界もこの影響を大きく受け、メディア会社では人員削減や業界再編が進行中だ。複数の情報筋によると、TVB(香港最大の民放テレビ局)が最大350名を解雇したという(800~1000名と主張する者もいる)。

また、社会的不安から広告主がプロモーション活動を延期しており、広告費の減少につながっているとも報じられている。今年前半は比較的安定していたが、ここ5~6カ月は苦戦しており、特に化粧品や家庭用品、エンターテインメントなどの分野で広告費が減少している。


年末に退職する方々

ツイッタージャパンの上級執行役員である味澤将宏氏が、今月末で退職する。同氏が自身のツイッターアカウントで明らかにした。同社にとって日本が米国に次ぐ2番目の市場に成長し、「組織としても今後のリーダーシップが揃ったため、少し休みを取り家族との時間を過ごすことにしました」と記されている。

アクセンチュア インタラクティブで企業買収を積極的に行ってきた
アナトリー・ロイトマン氏が同社を去る。コンサルティング大手アクセンチュアがマーケティング事業に力を入れ、2009年に米国でアクセンチュア インタラクティブの立ち上げを牽引した人物で、フィヨルドやカーマラマの買収にも尽力した。

2月にUBSから電通イージス・ネットワークに移ってきたフォルカー・ドベランツキー氏が退職した。同氏は145の市場において業務運営を指揮していた。なお同社は今週実施された取締役会で、豪州、中国、シンガポール(地域統括オフィスを含む)、英国(海外事業統括オフィスを含む)、フランス、ドイツ、ブラジルの7市場で不振が続いており、対象市場全体の約11%(海外事業を支える全従業員の約3%に相当)の人員削減を行うことを決定している。


創業者名とは関連性のない社名が増えている理由は?

かつて欧米の広告会社は、「レオ・バーネット」「オグルヴィ」「ワンダーマン」などといったように、創業者の名前を社名に入れたものだった。だが、M&Cサーチの共同創業者モーリス・サーチ氏が急遽辞任したことを先週お伝えしたように、創業者をめぐるスキャンダルが起こると、会社にとってリスクとなることも否めない。近年創業したエージェンシーのほとんどが、創業者とは無関係の社名をつけている。その理由を聞いてみたところ――。

「今日、私たちは創業者のカリスマ性に依存しないブランドを作りたいと思っています」(ラッキージェネラルズ共同創業者 ヘレン・カルクラフト氏)

「流行の周期のようなものであり、苗字を冠した社名が再び流行することもあるでしょう。英国の上位の広告会社の多くが創業者にちなんで命名されており、永続的な社名の典礼であることを示唆しています」(VCCP創業者 チャールズ・ヴァランズ氏)

「行いたい事業を反映した社名であることの重要性を、これまで以上に感じています。会社を作るという野心は、あなたの名前よりも大きいはずです」(ワンダーフッドスタジオ創業者兼COO アレックス・ベスト氏)

その他のコメントの数々はこちらから。


今号が、2019年最後の「世界マーケティング短信」となります。皆さまには日ごろよりご愛読いただき、大変感謝しております。
どうか良いお年をお迎えください。2020年も皆さまのさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。

(文:田崎亮子)

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

提供:
Campaign Japan

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